第4話
「あれ、結崎君?」
分室を出て目的地に向かって歩いていたらところ、成美さんに遭遇する。
「ヤッホー成美!」
「わ! ルナもいるのねー!?」
出会った側から背後に回り込んでルナが成美さんを抱きしめる。相変わらず成美さんに対するルナの扱い方は愛猫を愛でる様な光景になる。
「ちょうどよかった。今新聞部に行くところだったんだ。案内してくれ」
「なんでうちに?」
「さぁな。室長曰く『シンデレラ探し』だそうだ」
なんとかルナから解放された成美さんは乱れた制服を直す。
「あーなるほどね。じゃあ部長から連絡がいったんだわ。いいよ、私が案内するよ」
成美さんの先導でたどり着いた先は、部室というには御幣がありすぎる場所で、どこからどう見ての普通の賃貸ビルだった。
五階建てで、最上階の窓ガラスには『新聞部』という文字が張られているため、なるほど確かに間違いではないらしい。
一階は総合情報案内や、学外との連絡を担当して、そこから上に行くにつれて1年、2年、3年と続き、最上階には部長室、副部長室が存在しているそうだ。
自動ドアの玄関を入ると、何やら人が慌ただしく動いていた。その中で、異質な服装を見つける。
紺色を基調にしたユニフォーム。深くキャップを被り、左肩に無線が引っかかっている。
明らかに学生ではない、警官が2人。険しい顔で中央カウンターの受付で話し込んでいる。
それを横目に、俺たちは玄関脇のエレベーターに乗り込む。
「警察に情報提供もしてるのか?」
「うちの生徒が事件に関わっている時は、だいたいウチに確認が入るの。照会ってヤツ?」
そんな作業を学生に任せていいのだろうか。と言う疑問はもう聞き飽きた。自治の最終系。あらゆる責任を学生自身に取らせるこの学園のスタイルは、警察もわかっている。
「先週は校外の本屋での万引きかな。現行犯で捕まりそうになったけど、掴まれた腕を振り解いで逃げたんだって」
「二流の犯行だな」
「そうだね、捕まったら三流だね」
ソウデスネ。
「……ファントムなんたらの件は大丈夫なのか?」
「うん、なんだんだでケリがつきそうだよ」
「ほう、それはめでたいな」
室長の言葉からすると、なかなか厄介な話になると予想したのだが、そうでもなかったのか?
「なんだって私が犯人を突き止めたからね!」
一気に胡散臭くなったな。
「あーやはどうした?」
「あややとはさっき別れたよ。私の推理に面食らってた!」
それは荒唐無稽な話に対応しそびれただけじゃないのだろうか。
とは言ったものの、俺自身がそこまで些細を把握しているわけではないため、口を挟むのはやめておこう。
何より、室長がわざわざあーやに任せた案件。俺が出る幕ではない。
そうこうしているうちに扉が開く。左右に副部長室が存在する廊下を通り過ぎた突き当たり。
そこに、部長室という達筆な字で書かれた年季のある看板が立てかけてある扉があった。扉の上部には監視カメラがついている。
「一応確認だけど、うちの部長かなりクセ強、、、って、ここにいる人みんなクセ強いじゃん!」
ドアノブに手をかけるところで成美さんが騒ぎ出す。
「このスーパーナチュラルノーマルスチューデントを目の前にしてクセ強いとは何事だ!」
「もう言葉選びの時点で普通じゃないよ!」
「まぁ、僕は誰もが認める超美人だからクセ強いのは当たり前だよ?」
「こっちは、こっちでなんで自信満々なの!?」
捕まった大怪盗。
ギルドの大幹部。
国際犯罪組織の後継者。
まぁ確かにここにメンツは普通のカテゴリには収めてはいけない。
「言っとくけど、部長はこの学園でもかなりの影響力の持ち主なんだよ。格で言ったら影宮室長と同等くらい」
「バカ言え。あんなのがゴロゴロ転がっていてたまるか」
あれもあれで本人は認めないだろうが、国際犯罪組織の後継者だ。
「そう、だから特別なんだよ」
含みのある言い方をして、成美さんが扉を開ける。
「どうもー周防成美戻りました!」
陽気な声で扉を開ける成美に、俺たちも続けて入室する。十八畳ほどの長方形の部長室には、扉の正面に大きな執務机が鎮座していた。
積み重なった書類の数々、その中に埋もれるようにしてボブヘアーの女子生徒が座っている。
その横には3人組のカラフルな髪の色をした男たちが立っていた。
ボブヘアーの女子生徒は口に白く細長い物を咥えながら重厚な椅子にもたれかかり、
「新聞部にようこそ、結崎流斗。私は栗栖メル。新聞部の部長さ」
へにゃっとした笑顔を俺に向けてきた。




