密談
「昨日の夜、剣道部の部員がやられたらしいぞ」
「これで七人目か。いよいよ冗談じゃなくなってきたぞ」
「今年はなんて言うか、例年とは様子が違くない?」
「名前を語る偽物って可能性もある。というかかなり高い」
「でもいったい誰が? なんのために?」
「そんなの私は知らないよ。でも、これで終わるようには思えないよね」
「そうは言っても、色々なところから不満が出ているのは確かだ。不信、って言った方がいいのかな」
「例年とは違うっていうけど、そもそもその存在自体が怪しいんだからさ」
「だからこそ、ここで手を打たなければ。明日は我が身だぞ」
「そうは言ってもどうするの? 次に誰が狙われるかなんてわからないし」
しばらくの沈黙。
「分室に頼むのは?」
「却下」
「ない」
「それはダメだ」
「ここに来て反応早い奴らマジウケる」
「でも分室はダメだ。今までの先輩たちも自分で対処していた。僕らの代がそれを投げ出すわけにもいかない」
「だからと言って、これはもういつものとは状況が違うでしょ。実際にけが人が出ている。過去、そこまで被害が出たことはないはずでしょ。立派な傷害事件だよ」
「それはそうだが」
「ならむしろ警察では?」
「余計話がこじれる。話は学園内で収めるべきだ」
「しかも警察入れても対処できるかどうか。今年の奴は本気でやばいぞ」
「なら、『彼』に頼むのは?」
再び少しの沈黙。
「彼……か」
「適任。やってもらおうよ」
「賛成」
「それで行こう」
「何かあってもこちらに損害はないな。いいと思う」
「結局分室に頼るアホ」
「でもこれからインターハイシーズンだ。どの部も対応する余裕はなくなってる」
「決まりだね。この件は『彼』に任せよう」
「だがどうやって引き出す? はっきり言って彼は私たちの手におえる相手じゃない」
「俺たちに秘策がある。要はあいつをこっち側に引き込めばいいんだろ?」
「なるほど、君たちならできそうだ」
「流石の彼も気づかないだろう」
集った者たちは様々な思いを抱えながらも、ゆっくりとうなずいた。
「結崎流斗を巻き込むぞ」