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天才怪盗の社会奉仕  作者: ハルサメ
ミネルヴァの梟、探る
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11話

 分室を出た俺はあーやの先導のもと、校舎を出て部室棟に向かった。


「体育館側の部室棟ってどこにあるんだ?」


 この学園には二百に及ぶクラブ活動が存在し、その活動場所に応じて複数の部室棟が存在する事は俺も聞いた事がある。まぁ俺が所属している日本でもっともメジャーで、帰宅する事が最大の目的である最高の部活には、部室などというしゃれ込んだものは存在しないため、部室棟などと言う施設を訪れたことは無いが。


「体育館の横にある二階建ての建物を見た事はありますか?」


 体育館の横には二階建ての建物が存在している。体育館の二階と渡り廊下で繋がっており、確かに体育館関係の部活が使うには便利な構造ではあるが、


「……あれって合宿用の宿泊施設とかじゃないのか?」


 外見は完璧な二階建ての住宅であり、そして無駄に巨大なのだ。いや、むしろ変に小奇麗でモダンな建物なので、ちょっと高めのホテルと言っても過言ではない。


「嘘だろ、金かけるところ間違えすぎだろ」


「あくまで施設の充実です」


 もはや疑問に思っていないのか、はたまたそれが一般の認識なのか俺にはよく分からないが――いや絶対違うんだろうけど――そこまで言い切られるともう突っ込めなくなる。


 そんなカルチャーショックを受けている間に、俺たちは体育館の部室棟にたどり着いた。仰々しい風格の建物であり、知らされた今でもこれが部室棟だとは思えない。


「あなた何やっているの!? ふざけるのもいい加減にしてよッ!」


 ここで何か問題が起こっているのか、その現場を探そうとした俺たちだったが、そんなことする必要も無く、問題の方からひょっこりと顔を出してくれた。二階の廊下、ガラス越しに見えるところに、女子生徒による人だかりが存在していた。明らかに和やかではない雰囲気、何かあったのだと想像するのは小学生でも容易だろう。


「行きましょう」


 あーやの言葉に肩を竦めた後、仕方なく足を動かす。面倒事だと分かっていながら関わるのは、それこそ面倒である。


 二階に上がった俺たちは、騒がしい人だかりを発見した。同じデザインのエナメルバッグを肩にかけた女子生徒、バッグのロゴにバスケットボールの英語が見えた。


「おっとあやや、よく来てくれた」


 人だかりにどうアプローチをかけようか悩んでいたところ、そことは違う方向から声をかけられる。そこにいたのは、小柄で髪を右横でまとめた活発そうな一人の女子生徒だった。


「成美さんですか。ということは通報の方は」


「うん、私からってこと」


 成美と呼ばれた女子生徒は答えながらグッと親指を突き立てた。たったそれだけの仕草だが、ノリの良い雰囲気で人当たりが良いのがうかがえる。


 ただそれだけだが、無意識のうちに警戒を強めてしまう。気の良い女ほど信用出来ないものはない、とは親父の教えだ。むしろ、あーや程警戒してくれた方が好感が持てる。


「ところで君はどなた? 見たこと無いんだけど」


「彼は今日から研修に入る結崎君です」


「研修って分室の? そりゃまた大変だね」


 俺を値踏みするように見る。じっくりと上から下まで観察されるのは、あまり精神的に好ましいものではないのだが。と言うか、研修初日の人間に大変とか不穏な事言うなよ。気が重くなんだろ。一発かましてやろうか。


「私は新聞部所属二年の周防成美だよ。あ、できれば名前で呼んでね。分室の方とは仕事上仲良くさせてもらってるんだよ。よろしくね結崎君」


「おい結崎君、呼んでるぞ?」


 後ろを通りがかった男子バレー部員の肩を叩く。


「何をしているんですか、結崎は君です。ふざけないでください」


「待て待て、こいつも結崎かもしれないだろ? おいあんた、名前は?」


「俺は神崎だ」


「だぁぁ! 惜しい、ザキ違いだ!」


 ザキ仲間、何か一撃で殺せてしまいそうな雰囲気だが気のせいだな、うん。


「……君塚これどういうことだ?」


「……すみません神崎君、無視して行ってください」


 首をかしげながら俺の即死魔法仲間は去って行った。また会おうな。


「素直に挨拶できないのですか?」


「幼少期に凄い虐待を受けてな。ネタを挟まないと生きていけないんだ」


「それは壮絶な子供時代を過ごしましたね」


 もはや返しが適当になってきた。まったくもって悲しいことだ。

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