うみ:変態の強襲
「ん……あ、あれ?」
目が覚めた時、すぐに違和感があった。
いつも無意識に眺めてるだけの天井が、どこか違って見えた。
特段代わり映えなんてしないはずなのに。天井なんて意識して見ることは少ないのに。
「なんか変……」
「なにが?」
「うわぁ!?」
突然隣から声をかけられて、思わずビックリして飛び起きる。
一人でここにいると思っていたから、必要以上に叫んでしまった。
それより、すごくういに似ているこの人は誰なんだろう。
ういが絶対着ないようなひっらひらのネグリジェを着ている。
ベッドの上で女二人……何も起きないはずもなく……
「今なんか変なこと考えてたでしょ」
「い、いえ、別に……」
「ほんとかなー。まあいいや。ちょっと胸揉ませてよ」
「……はい!?」
いきなり何を言い出すんだこの人は。
いや、まだ頭のおかしくなったういという可能性もある。
顔も声も似ているし、ういなら胸揉ませろということも言ってくる……かもしれない。
だけど、服装に気を取られてそれどころではない。
姉の際どい格好を目の当たりにして、頭が回らない。
「いや、あの……その」
「何よ。胸くらい減るもんじゃないでしょ?」
「そういう問題じゃないです!」
「いいからほら、揉ませなさいって!」
ういがあたしの胸を揉みしだこうと飛びついてくる。
それをなんとか避けようとベッドの上で逃げ回る。
しかし、狭いベッドの上では限界があった。
ういの両手があたしを捕らえる。
「や、やめっ……!」
「んー……やっぱりないねぇ。服の上からだと判別つかないから意外とあるかもしれないと思ったんだけど……」
「いきなり揉んでおいて失礼ですね!?」
やっぱりあたしの知ってる姉じゃないかもしれない。
ういはこんな失礼なこと言わないし、そもそも胸を揉んできたりなどしない。
なにより、姉がこんなネグリジェを着てるはずがない。
「あの……あなたは一体誰なんですか? なんであたしの部屋に……」
「え? ここ私の部屋だよ?」
「はい?」
何を言ってるんだろうこの人は。
本格的に通報した方がいいかもしれない。
ういの顔をした不審者が私の部屋を自分のものだと言ってくる。
それは不気味というか、意味不明すぎる。
「どう考えたってあたしの部屋じゃないですか。ここで寝たわけだし……それとも何です? 勝手に人の部屋に入っておいて、あなたの部屋だと言い張ると?」
「まあ君からしたらそうだよねー。私からすれば君が急に現れたんだけども」
「は、はあ……?」
あたしが急に現れた? そんなはずはない。確かにあたしは自分の部屋にいたし、パジャマに着替えている。
そこにういに似た知らない人が勝手に侵入してきたのだ。
そうとしか思えない……はずなのに。
「んー……なら、私のコレクション見てみる?」
不審者がそう言うと、ベッドから降りて部屋を物色し始めた。
その時ようやく気づいたが、家具や置いている小物などがあまりに自室と違っている。
さっきまでは不審者の存在と行動に気を取られていて、部屋のことにまで意識が回らなかった。
じゃあやっぱり、この人の言ってることが正しい……?
「あ、あったあった。歴代の彼女たちに使ってた〝玩具〟」
「玩具? 案外子供なんですね」
私が小馬鹿にするように笑うと、その人はキョトンとした顔であたしを見た。
「え? 何言ってるの? 大人の玩具の存在知らない?」
「……へ?」
嫌な予感がする。
あたしの予想は的中し、その人はベッドの下から何かを引っ張り出してきた。
「ふー……長年使ってないからちょっと埃っぽいな」
「……な、なにそれ」
「これが大人の玩具だよ。彼女に使う用のやつをいくつか持ってたんだ。今はもう全然使ってないけどね」
「……」
もうだめだ。この人の言ってることが理解できない。
なんであたしがこの部屋にいることになっているのかも分からないし、ベッドの下にそんなものがあったのも意味が分からない。
それになんでういとういに似てるんだろうか……もうわけがわからない。
「あの……あなたは誰なんですか?」
「ん? ああ、そういえば自己紹介してなかったね。私は――うい」
うい。確かにこの人はそう言った。あたしの姉の名だ。
あまりの衝撃なのに、その手に玩具を持って涼しい顔をしているからそっちに意識が持っていかれそうになる。
「で、君の名前は?」
「あ、えっと、うみって言います」
「うみか。可愛い名前だね」
「あ、ありがとうございます……?」
急に褒められて、思わず首を傾げながらお礼を言ってしまった。
完全にこの人のペースに持っていかれてしまっている。
なんとかして情報を引き出さないと。
「あ、あの……ういって、あたしの姉の名前なんですけど……」
「へぇ、君のお姉さんも……すごい偶然だね。いや、これはもう運命と言ってもいいのでは!?」
「は?」
運命? 何を言っているんだこの人は。
突然好感度マイナスの人に口説かれて、思わず自分でも驚くほど低い声が出てしまった。
「それはまあ置いといて、これで私の部屋だってわかってくれたかな?」
あたしの低い声を意に介していないのか、その人は玩具を手で弄びながら話を戻した。
それには首を縦に振るしかない。
天井から既に違和感があったし、置いてある家具や小物も全然違うし、何よりこんな大人の玩具見せびらかされたら認めるしかない。
まだ手に持ってるし。
それはいいのだが、だとするとどうしてあたしはここにいるんだろう。
目が覚めたら知らない場所で寝ていたなんてまるで夢みたいな話だ。
そうしてあたしが考え込んでいると、いたずらな笑みを浮かべながらういさんが近づいてきた。
「な、なんですか」
「いやー、久しぶりに取り出したからムラついてきちゃってさー……ちょっと試させて?」
「はい!?」
ういさんがあたしをベッドに押し倒す。
そしてそのまま、あたしのパジャマのボタンを外し始めた。
「な、なにやってるんですか!」
「だからー……大人の玩具試させてって」
「いやぁぁぁあああ!!」
ういさんのギラついた瞳に恐怖を感じながら、あたしの意識は遠ざかっていった。




