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姉妹百合なんて興味ない!……はず?  作者: M・A・J・O
つながる世界

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姉妹の選択

「うい、めいさんになんかしたの?」

「何もしてない……と思いたいけど」

「絶対なんかあったでしょ……」


 私が自信なさそうに言うと、うみは呆れ気味に返してきた。


「うい、心当たりないの?」

「……全くないわけじゃないけど」

「え? あるの?」

「それが、微妙なんだよね」


 ういさんのこと、やっぱりめいは勘づいているのだろうか。

 でも、確信がない。

 めいはずっと家にいたはずだし、私がういさんに会ったことを話したわけでもない。


 ただ、うみには詳細を話してもいいかもしれない。

 私に似てる人を見たということの答え合わせもしておきたいし。


「うみ、実はね――」


 うみの見た人がういさんかもしれないということ。

 そのういさんがめいに似た人を探していること。

 それをめいが気づいているかもしれないということ。


「なるほどね」


 私が一通り説明し終わると、うみは納得したように頷いた。


「確かにそれは微妙なラインだね」

「でしょ?」

「それにしても、あたしが見た人がういに似てるだけじゃなくて名前も同じとは……」


 うみは腕組みをして唸った。

 すごい偶然だし、本当にそんなことがあるのかと疑うほどの奇跡だ。

 しかも、めいに似ている人を探しているということは……


「もしかして、めいさんのお姉さんって……」


 やっぱり、うみも私と同じ結論に達したらしい。

 まあ、ここまでヒントもりもりで実は全くの見当はずれでしたという方が可能性としては低いだろう。


「実はういさん、とか」

「……だよね。それしかないよね」


 うみの結論は、私が導き出したものと全く同じだった。

 私は同意するように、大きなため息をつく。

 ……いや、これは同意というより自分自身への無力感とかやるせなさに近いかもしれない。


「私、どうしたらいいのかな」


 ぽつりと、そんな言葉が口からこぼれた。

 めいとはそれなりに仲良くやってきたつもりだ。

 向こうから求められて、私も求めて。

 もう、お互いがいなければ生きていけない。


 だけど、ういさんがめいのお姉ちゃんで、めいを探しているというのならば。

 あるべき場所に戻してあげるのも、愛なのではないか。

 私のそんな気持ちが、うみにも伝わったらしい。


「ういはどうしたいの?」


 一見するとなんでもない普通の言葉。

 それなのに、私の胸に深く突き刺さる。

 ずっと優柔不断で、なにかを決めるという行為が苦手だった。

 そんな私が、選択を迫られている。


「……わからない」

「そっか」

「でも」


 私は、うみに向き直る。


「ういさんが本当にめいのお姉ちゃんで、めいを探しているなら……私は、ういさんに会わせるべきだと思う」

「……そうだね」


 うみは、優しく頷いた。

 私ほどじゃないにせよ、うみも相当めいと仲を深めてきた。

 うみも寂しいはずなのに、それを出さずに私のことを慰めてくれる。


「あたしも、それがいいと思うよ」

「……うん。ありがとね、うみ」


 私がお礼を言うと、うみはいつものように笑った。


「全く、ういはしょーがないやつだなー」


 うみは私の頭をぽんぽんと優しく叩く。

 私は、なんだかそれが無性に嬉しくて、笑みがこぼれる。


「うみはすごいね」

「そりゃどうも」


 笑いながら、私たちはいつものやり取りを続けた。

 お互いが落ち着いたところで、私はふと思い出したように口を開いた。


「……そういえば、めいはどこに行ったんだろ」

「ういさんのところとか?」

「冗談でもそういうこと言うのやめてよ。どつくよ」

「やり返されたいの?」


 軽口を言い合える空気に戻ってきた。

 やっぱり私たちはこうじゃなきゃ。

 難しいことなんか知らない。ただ言葉のプロレスをするだけ。楽しいことは笑い合って、相手に対して嫌なことがあれば喧嘩して。

 それこそが、私たち姉妹の在るべき形。


「まあ、めいさんってあんまり自分のこと話さないから、いつかはこういうことがあるんじゃないかって思ってたけど……まさか平行世界があるなんてね」

「めいやういさんのこともそうだけど、うみも巻き込まれてたよね」


 あの時のことを思い出すといまだに胸が苦しくなるけど、できるだけなんでもないように装う。

 私を呼ぶうみの声がだんだん遠ざかっていくところは、もう思い出したくもない。

 だけど、その後戻ってきたうみから聞いた話ではういさんはかなりチャラかったはず。

 確か『可愛い子猫ちゃん』って言われたって聞いたような。


「あー、いきなり朝起きたらういに似た変態があたしのこと口説いてきたやつね」

「あれはインパクトあったなぁ……私が変態呼ばわりされたの忘れないから」

「あっははー。あたしも混乱してたんだから許してよ」


 あの出来事を笑い飛ばせるうみは強い。

 私はまだあの時の恐怖が拭い去れないのに。

 元の世界にいた私よりも、知らない世界に飛ばされて知らない人しかいない空間はさぞかし心細かっただろうに。


「うみは強いね」


 私がそう言うと、うみはきょとんとした。


「え? そう?」

「うん。私だったら絶対耐えられないよ」

「まあ、あの変態はういには荷が重いか」

「え、あ、いや! そういうことじゃなくてね!?」


 うみの思わぬ返事に慌てる私。

 そんな様子を見て、うみはいたずらっぽく笑った。

 これは完全に面白がってる顔だ。

 私はからかわれたことにちょっとムッとするも、なんだか少し元気が出たような気がするから文句も言えない。

 こういうのを手のひらの上で転がされているっていうのかな……


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