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姉妹百合なんて興味ない!……はず?  作者: M・A・J・O
つながる世界

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ついにこの日が

「いやー、まさかほんとに名前まで同じだったとは」

「ほんとですよー。ってか私はいきなり壁に追いやられたこともびっくりしましたけど」

「まあまあ、いつか埋め合わせしますんで」


 私に似ている人……ういさんとスーパーで出会ったあと。

 なぜか仲良くなっていた。

 自分でもよくわからないけど、ういさんとは話しやすくて一緒にいて楽しい。

 初対面なのに、ずっと昔からの親友と話している気分だった。


「そういや、ういさん……ういちゃんも焼きそば好きなんです?」

「急に距離近くなりましたね!?」


 ういさんは私が握っているエコバッグを見ながら尋ねてくる。

 そんなことよりもいきなりちゃん付けで呼ばれたことの方が衝撃で、話が入ってこない。


「いやー、他人行儀なのってなんか苦手で。すぐ距離詰めたくなっちゃうんだよねー」


 そしていつの間にか敬語も取れている。

 距離の詰め方が異常な気がする。

 やっぱり、顔が似てて名前が同じでも性格や態度がここまで違うんだなとなぜか感心する。


 そりゃそうか。

 そんなもの同一人物でもなければ有り得ない話だ。


「まあ、ういさんがそうしたいのなら尊重しますけど……私はまだ敬語を取るとかできないなぁ」

「人それぞれペースってあるしね。私がやるのは苦手ってだけで相手から敬語使われるのとかは全然大丈夫」


 ういさんはにっこりと笑う。

 その笑顔は、私みたいな陰の者とは違って光って見えた。

 ここまでラフに接してくれて、それでいて嫌味がないからモテそうだなと思う。


「……ふと思ったんですけど、ういさんも家こっちなんです?」

「もしかしてういちゃんも?」

「はい。ほんと偶然が重なりますね」


 まさか家も同じ方向だったとは。

 でも、それにしては見ない顔すぎる。

 大学に通うために毎日家を出ているが、ういさんに出会ったことは一度もない。

 ちょっと前に引っ越してきたのかな。


「……実はね、妹を探しに来たんだ」

「え?」


 ういさんは唐突にそう呟いた。

 その声にはどこか寂しさを感じる。


「その妹さん、急にいなくなったんですか?」

「うん……私が高校生の時突然ね。お母さんもお父さんも心がおかしくなりそうなのを誤魔化すために必死で探してたな」

「そんなことが……」

「だから私も高校終わったら働きに出てね。一人暮らしを始めたんだよ」


 私はういさんの表情を窺う。

 あまりジロジロ見るのも失礼かと思いじっくりとは見てないけど、多分悲しそうな表情をしていた。

 そりゃ、家族がいなくなったのだから当然か。


 ――ちょっと待て。

 なんだか嫌な想像をしてしまった。

 私と顔が似ている同名の人。当然消えてしまった妹。めいから平行世界の存在を知らされたこと。


 きっと私の勘違いだ。そうに決まっている。

 でも、もし、もしこの人がめいの……


「……その人、どんな感じの子でした? 髪型とか背丈とかは?」

「うーん……髪型は肩より下まである茶髪だよ。背は私より10cmは低かったかな」


 ……めいの見た目とかなり合致している。

 いやでも、まさかそんなはずはない。きっと私とういさんが似ているのは偶然で、偶然その妹さんもめいに似ているというだけだ。

 そうに違いない。


「……ちなみに、性格とかも聞いてもいいですか?」

「あー、そうだなぁ。天真爛漫で太陽みたいな子かな。ちょっと強引なのがたまにキズだけど」


 めいの性格と一致している。

 偶然にしては出来すぎている。


「あ、ついたよ。ここが私の家なんだ」


 ういさんはマンションを指さす。

 最近近所にできた大きな新築マンションだ。


「うわー、ここに住めるなんてすごいですね……高そう」

「まー、そのー、かなり無理してるけどね。でもいつか妹と一緒に住めたらなって思ってるんだ」

「え、妹さんと住むなら実家でもいいんじゃ」


 私は思わず口を挟んでしまう。

 ういさんは少し驚いたあと、苦笑いしながら口を開いた。

 その笑顔にはどこか陰りを感じる。


「んー、そう思うよね。でも実家だと都合が悪いんだ」

「……そうなんですか?」


 もしかして余計なこと言っちゃったかな。

 話しやすいからといって、初対面で踏み込むべき話題ではなかったかもしれない。

 私は少し反省する。


「ま、とりあえず家に入るね。後々話すことにするよ。ここまで付き合ってくれてありがと」


 ういさんはそう言ってマンションの階段を登っていく。

 私は、ただ無言でその後ろ姿を見送ることしかできなかった。

 自分一人ではこの問題に到底対処できない。


「帰ったら……めいに聞かなきゃ」


 私はういさんの姿が見えなくなったのを確認した後、そう決意した。


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