ういとういの邂逅
「うぅーん……お姉ちゃんはつるぺたなところがいいですよねー」
「いやどんな寝言だよ」
めいの秘密を知れて一段と仲が深まった私たちはついに一線を――超えることはなく。
ただ、一緒にお昼寝をしていた。
今日は大学に行くのは午後からなのでめいの寝顔をじっくりと堪能する。
「ん……お姉ちゃん……好きぃ……」
「……っ」
寝言で好きと言われるのは心臓に悪い。
しかも抱き枕にされているので寝返りもできない。
「めい……」
頬を優しく撫でると、寝ているめいの顔がふにゃりとゆがむ。
「……うへへ」
「可愛いなぁもう!」
頭を撫でまくって愛でまくる。
私はもうめいにメロメロだ。
ずっと私と一緒にいてね、めい。
そんなことを思いながらめいの頬をすりすりしていると。
ガチャリと玄関の扉が開いた音がした。
「たでまー」
「うみ!?」
高校生のはずのうみがお昼に帰ってきた。
まさか早退!?
「おかえりうみ……なんで帰ってきたの……?」
「なんでって、今日テストしてきただけだし」
「あ、そうなの?」
どうやら早とちりだったようで一安心。
そういえば、私もテスト期間中は早めに帰ってきてたよなと思い出す。
「そうそう。あ、お昼は食べてきたから自分で用意してね」
「えー。まあでもなにかコンビニでも行って適当に買ってくるよ」
「で、ういはめいさんとまたイチャイチャしてたの?」
「っ!?」
反射的にめいから離れる。
「い、イチャイチャなんてしてない!」
「でもなんか顔真っ赤だけど?」
「……へ!? あ、いや、これは……」
「別に隠さなくてもいいよ。めいさんの寝顔をずっと見てましたーって素直に言いなよ」
「なっ……!」
にやにやと私の反応を楽しむうみ。
全てバレバレである。
このニヤニヤするうみの口を今すぐ塞いでやりたい。
しかし、うみはとてもSっ気が強い。
私が何を言っても効かないだろうし、もっとからかいたいという気持ちが顔に現れまくっている。
……こいつ、もしかしてめいより強敵なのでは?
倒すことのできないボスとかチートすぎる。
「本当に、イチャイチャなんてしてないからね!」
「はいはい。とりあえずあたしは部屋に戻るから、ういはお昼ご飯でも買いに行きなよ」
「ぐぬぬ……」
でも、お腹空いているしうみの言う通りお昼ご飯を買う方がいいかもしれない。
今日は焼きそばの気分かな。
でもコンビニよりスーパーの方が安いしそっちで買うか……
などと考えながら、うみの横を通り過ぎる。
「……そういえば」
「ん?」
「さっきういに似た人をちらっと見たような気がするんだよね」
「え?」
私に似てる人とは誰だろう。
他人の空似とかいうやつだろうか、それとも出会ったら死ぬと言われるドッペルゲンガーなのだろうか。
まあでも、うみの見間違い説が一番高いだろう。
うみの言い方的に一瞬しか見てないようだし。
「まあ、ういが帰ってくるちょっと前だったし、見間違いかもしれないけどね」
やっぱり、そんなことだろうと思った。
でも、うみがわざわざ報告してきた程だから気になるしちょっと見てみたい。
その人に会えるかどうかはわからないけど。
「じゃ、行ってくるねー」
「いてらー」
お昼ご飯を買いに、コンビニではなくスーパーへ向かうことにした。
その道中は特に何もなく、うみの言っていた『私に似ている人』にも出会うことはなかった。
……そういえば、めいはお昼ご飯どうするんだろう。
自分の分しか頭になかったけど、やっぱりめいの分も買った方がいいだろうか。
でも、めいの食べ物の好みにそこまで詳しくないし、もし苦手なものを買ってしまったらどうしようという不安がある。
「どうしようかなぁ……私と同じもの買ってったら苦手だとしても喜んで食べてくれそうではあるけども」
それはそれでめいに強制しているみたいで気が引ける。
とりあえず自分のご飯を先に買って、めいの分はまた後で考えるか。
そう結論付けたところでスーパーに到着。
「あ、焼きそばが安い」
そのスーパーの限定価格とかなのだろうか。
いつも見かける値段より明らかに安くなっている焼きそばのパックを発見する。
ちょっと気分が良くなってウキウキでそれを手にしようとした時。
「――あ、すみません」
「いえいえ、こちらこ……そ……」
同じくそれに手を伸ばしていたであろう人と手がぶつかってしまった。
謝ろうと思いその人の方へ顔を向けると、そこには。
「へ……?」
「え……?」
私とよく似た顔の人が立っていた。
これがさっきうみの言っていた、私にそっくりな人か。
本当にいるとは思わず、つい固まってしまう。
その人も困惑しているのか、私と目を合わせたまま動かない。
ドッペルゲンガーの類じゃないよな?
もしそうだとしたら死ぬかもしれないってことじゃないか。
せっかくめいという運命の人に出会えたのに死にたくなんかない!
「あー……ごめんなさい。自分とよく似ていたもんだからついジロジロと……」
私が声を出せないでいると、向こうから先に口を開いてくれた。
「え? あ、いえいえ! 私の方こそすみません!」
私も慌てて頭を下げる。
お互い謝りあうと、なんだかおかしくなってきて笑い合ってしまう。
人見知りのはずなのに、顔が似ているからかとても話しやすかった。
「あはは、それにしてもすごく似てますよね。もしかして名前とかも同じだったりして」
「ははっ。そしたらもう運命じゃないですか。自分と似ている人を口説こうと思ったことはないから新鮮だな」
「え……?」
なんか変な言葉が聞こえたような気がするのは気のせいかな。
その人はニヤリと笑うとこちらに詰め寄ってくる。
なんだろうと思い私も後ずさるも、もう背中が壁についてしまっていた。
もう後ろには下がれない。
逃げようとしてもすぐに追い付かれてしまうだろう。
それくらいにその人との物理的な距離が近かった。
そんな私の状況などお構いなしに、その人は続ける。
「私――ういって言います」




