表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
姉妹百合なんて興味ない!……はず?  作者: M・A・J・O
あちらの世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/57

過去の精算

「ごめん、める。別れよう」

「……へ?」


 放課後。私はめるを呼び出し、別れ話を切り出した。

 つい最近まで一方的にイチャイチャラブラブしていたから気まずい……というか心苦しい。

 別れを切り出すことは過去に何度かあったけど、こんなの慣れるものじゃない。


「え、あ……な、なんで? 私なにかしたかしら?」


 めるは動揺し、目に涙を浮かべている。


「いや、そういうわけじゃないんだけど……」

「じゃあなんでよ!? 私のこと嫌いになったの!?」

「……ごめん」


 私はめるの目を直視できず俯いた。

 そんな私の態度に何かを察したのか、めるはそれ以上追及してこなかった。


 気まずい空気が流れる。

 それもこれも、全部自分のせいだ。

 自分の身勝手で、めるも妹も他の彼女たちも傷つけた。

 きっと私が許されることはないだろう。


「そう……もしかして、妹さん?」

「え……」


 なんでそれを……と言いかけたが、めるは察しがいい。

 きっと私の態度を見て、何か察したのだろう。


「あなたが私の家に来た時、急に家出てきて大丈夫か聞いたじゃない。その時、妹に対する反応がちょっと……ね」

「そ、そんなわかりやすかった?」

「わかりやすいってほどでもないけれど……なにか思うところがありそうな顔はしてたわね」

「……そっかぁ」


 そんなに顔に出てたのか、私。

 とっくにしまいきったと思っていたのに。

 しかし、もっと怒ったり悲しんだりするかと思っていたけど、めるはなんだか落ち着いている。

 喚かれても困るけど、慈愛に満ちた表情で見られるのも調子が狂う。


「血の繋がった姉妹は色んなハードルが高いと思うけど、応援してるわ」

「……うん、ありがと」


 応援なんてしてくれなくていい。

 もう私なんかに関わらない方がいいんだ。

 そう言いかけたが、めるの優しさを無下にするのも申し訳なくて、私はその言葉だけを口にした。


「ねぇ……もしよかったらなんだけど」

「なに?」

「……今まで通り接してくれないかしら」

「…………え?」


 どういうことだろう。

 めるは私に対してもう怒りとか悲しみとかそういう感情はないのだろうか。

 そんな私の疑問を察したのか、めるが続ける。


「恋人っていう関係は解消してもらっていいわ。でも……疎遠になるのは寂しいから今まで通り気が向いたら話しかけに来てちょうだい」

「……でも、めるはそれでいいの? 私……めるにひどいことしたのに」

「私はもう怒ってないわ」

「でも……」

「私がいいって言ってるからいいの。このわがままだけは聞いて欲しいわ」


 そこまで言うのなら……と私はめるの優しさに甘えさせてもらうことにした。

 めるは私を許すと言ってくれた。いや、わがままって言ってるから私欲も入っているのかもしれない。

 それでも、私はめるを……めるたちを傷つけてしまった。


 これは私が一生背負わなければならない罰だ。

 だから……彼女たちが私を許すというのなら、私は一生償う努力をしなければならない。


「じゃあ、そのわがまま聞いてあげる」

「そう、ありがと。それじゃあよろしくね」


 そう言ってめるはその場を後にした。

 私はその背中を見送ったあと、彼女たちにどう償っていこうか考えながら帰路につく。


「ただいまー」

「おかえり、ういちゃん」


 家に帰ると、珍しくお母さんが出迎えてくれた。

 なんだかいい匂いも漂っている。


「なにかいい匂いがするけど、お母さんなにか作ったの?」

「ちょうどういちゃんが帰ってくると思って、ちょっとね」


 そう言ってお母さんは台所へ戻っていく。

 私はその背中を追うように後に続いた。

 そこには私の大好物のカレーが用意されていた。

 確かめいも、お母さんのカレーが好きだったはずだ。

 私は思わずお母さんに抱き着いた。


「な、なに? もう……ういちゃんったら」

「ごめん……でも、嬉しくて」

「大げさねぇ。ほら、早く手洗ってきなさい」

「うん!」


 久しぶりのお母さんのカレーはすごく美味しそうだ。

 でも、なんだか物足りない気がするのはなんでだろう。

 ……あ、めいがいないんだ。


「お母さん、めいって帰ってきてない?」

「めいちゃん? そういえばまだ帰ってきてないわね。大丈夫かしら?」


 なんだか、少し胸騒ぎがする。

 いつもなら私より先に帰ってきているはずなのに、今日はまだ戻っていないなんて。

 なにか用事があって遅れてるだけかもしれないけど……謎の焦燥感が止まらない。


「ちょっと私、探してくる」

「え? でももう外暗いわよ?」


 私はお母さんの言葉を無視して家を飛び出した。

 なにかあったら……そう思うと不安が募る。

 私はめいに電話をかけるが、コール音がなるだけで繋がらない。


「どこ行ったの……めい」


 時刻はすでに夜の7時を過ぎている。

 もう日も暮れて、外は街灯に照らされているだけだ。

 そんな外灯を頼りに私は駆けた。


 だけど、めいはいつまで経っても見つからなかった。

 ちゃんと過去の恋愛を清算してきたのに。

 これからは思う存分めいに向き合おうと思っていたのに。

 自分の気持ちを伝えられないまま、めいはどこかへ消えてしまったのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ