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姉妹百合なんて興味ない!……はず?  作者: M・A・J・O
あちらの世界

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めい:カミングアウト

「ねぇめい! ほんとなの!?」

「え、な、なにが……?」


 あの事件があってから学校に行くことに気が乗らなかったが、そうも言ってられない。

 今日の給食はカレーだし、友だちに借りてた本を返す約束もしてたから。

 だけど、この選択は大きな過ちだったことをすぐに知った。


「いや、隣のクラスの人が話してたんだけど、めいって女の子が好きらしいじゃん?」

「……え?」


 一瞬の思考停止を挟み。

 そして意味を理解すると同時に、全身の血液がサッと冷えたような感覚に陥る。

 心臓がバクバク鳴って、頭の中が真っ白になった。


 ――きっと昨日のあいつだ。

 わたしの話を聞かず、最後までわたしを悪者として見てきたやつ。

 ただわたしは興味のない人を振っただけなのに、いつの間にか話が大きくなって……結局自分の本心を口にしてしまった。

 あんなことを言わなければ、こうして噂になることもなかったのでは……


 パニックになりそうな自分を必死に抑える。

 まずは落ち着かないと。

 そう自分に言い聞かせながら、ゆっくりと深呼吸をひとつした。


「ねぇ、どうなの? マジでレズなの?」

「は、はぁ? そんなわけないじゃないですか」


 わたしは必死に取り繕う。

 笑顔が引きつっていて、少し痛みを感じる。


「じゃあなんで告白断ったの? やっぱり女の子が好きなんじゃないの?」

「違いますって! それは……って待って!? なんで告白断ったの知ってるんですか!?」

「え? それも隣のクラスの人が話してたからだけど?」


 ……最悪だ。

 これでは、もう否定できない。

 それにしても、どうしてこうなったんだろう。


 別にわたしは何も悪いことはしていないはずなのに。

 ……いや、そもそもわたしは悪くないと胸を張って言えるんだろうか?

 確かに、わたしは人の気持ちを踏みにじるようなことを言ったかもしれない。

 でもだからと言って、これはやりすぎなんじゃないだろうか。


 ……わからない。

 考えても考えても答えが出なくて、頭が痛くなる。


 ――ただ、これだけはわかる。

 このままだと、わたしは確実に居場所を失うだろう。

 友だちがいなくなるどころか、クラス全員に避けられるようになるんじゃないかという恐怖が襲ってきた。

 現に、今話しかけてくれてるこの子のことが、わたしは好きなんだ。


 それこそ恋愛的な意味で。

 だから嫌われたくないし、こんなことで失いたくもない。


「まぁいいや、とにかくそういうことが噂になってるから違うなら違うってちゃんと言っときなさいよー」


 そう言って、その子は自分の席に戻っていった。


「…………」


 残されたわたしの心の中は不安しかなかった。

 どうすればこの状況を切り抜けられるのかわからず、頭を抱えてしまう。

 悪者扱いまでならまだよかった。

 だけど、こうして噂を流されてしまえば、もう逃げ場はない。

 これからずっとこんな状況が続くのかと思うと、胃液が逆流してきそうになる。


 誰かに相談したいけど、誰に打ち明ければいいんだ。

 家族には絶対に知られたくないし、先生にだって言いたくない。

 じゃあ、一体誰が信用できるっていうんだろう?


「……はぁ」


 無意識のうちにため息が出た。

 本当に辛い時というのは、涙すら出てこないものなんだな。

 そう思いながら、窓の外を見る。

 するとそこには、まるでわたしを見つめているかのような青空が広がっていた。

 それをぼーっと眺めているうちに、ふとある一人のことが思い浮かんだ。


「……お姉ちゃんになら、話せるかな……」


 噂がどこまで広まっているのかわからないけど、同じ学校に通っているお姉ちゃんの耳に入ってる可能性は充分高い。

 相談に乗ってくれるかどうかなんてわからないけど、一人で抱え込むよりは遥かにマシだと思った。

 それにお姉ちゃんは優しいから、わたしの話を聞いてくれたら味方してくれる可能性もあるはずだ。


「よしっ!」

「めい……!」

「ん? え!? お姉ちゃん!?」


 わたしが覚悟を決めて立ち上がった瞬間、いきなり目の前にお姉ちゃんが現れた。


「ど、どうしたんですか? というかなんでここに?」

「めいの噂が届いたからだよっ!」

「……え?」


 まさか、もうそこまで話が広がってるってことなのか?

 そう思うとまた怖くなってきた。

 だけど、噂を知っているなら相談しやすい。


「ねぇ、お姉ちゃん、その噂のことなんですけど……」

「めいも……なんだね」


 一瞬、お姉ちゃんの言っていることが理解できなかった。

 相談しようと口を開いたらそうやって遮られたから。

 だけど、その言葉は、その言葉の意味は、もしかして……

 ぐっと拳に力を入れて、お姉ちゃんの心に入り込む。


「もしかしてお姉ちゃんも……〝そう〟なんですか?」


 色々なことに配慮しながら聞くと、お姉ちゃんはゆっくりと頷いた。

 やっと、本当の意味で信用できる人を見つけられたかもしれない。

 あの事件のこと、今広まっている噂のこと、そしてお姉ちゃんのカミングアウト。

 色々なことが一気に頭を巡って、とうとう涙が堪えきれなくなった。


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