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姉妹百合なんて興味ない!……はず?  作者: M・A・J・O
あちらの世界

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気まずさ

「うい、ちょっといいかしら?」


 放課後。教科書をカバンに詰めていると、めるが話しかけてきた。

 ソワソワと落ち着きなく、視線もなるべく私を見ないようにしている様子で。

 あまりの態度の変わりように、私は教科書を持つ手が震える。


「める!? もしかしてついに私に抱かれる覚悟できた!?」

「え? なにそれキモいわ」

「デスヨネー」


 いや、うん……わかっていた。わかっていたよ。

 でも、少しくらい期待してもいいじゃないか!

 そんな思いでいっぱいになる。


「あなた……なにかあったの?」

「へっ? ななな何もないよー?」


 動揺しすぎて変な声が出てしまった。

 これでは何かありましたと言っているようなものではないか。

 しかし、めるはそれ以上追及することなく、「そう」と言って会話を終えた。


「…………」


 私の中で、モヤモヤとした感情が生まれる。

 めるにとって、私は追及するに至らない程度の存在だったのだろうか。


「いや、実は話したいことがあるの」

「……話したい、こと?」


 めるの口から放たれた言葉を聞いて、一瞬思考停止する。

 そしてすぐに理解する。

 ああ、そういうことか。


「うん、わかった!」


 私は満面の笑みを浮かべて答える。

 ふふーん、私はめるのことをわかっている。

 めるは改まって私に向き直ったのだ。

 つまり、これは……めるから「好きだよ」と告白されるのだということに他ならない!


 きっとそうだ。

 だって、こんなにも真剣な表情をしているのだもの!


「あのね、うい……」

「はい!」


 私は目をキラキラさせながら返事をする。

 心臓が激しく鼓動している。緊張で吐き気がした。

 めるは深呼吸をして息を整えると、意を決したように口を開いた。


「今日の帰り、というか今ね……今から寄り道しない?」

「……へ? あっ、あー、全然大丈夫だよ」


 告白ではないとわかった瞬間、急激にテンションが下がった。

 まあ、よく考えたらわかることだったのだが……

 告白ならもっとロマンチックな雰囲気にするだろうし。

 というか、それだと私が困ってしまう。

 だって、ムードもへったくれもないじゃないか。


「どこ行きたいの?」


 私は気を取り直して尋ねる。

 すると、めるはキョトンとして首を傾げた。


「あれ、言ってなかったかしら?」

「えっと……何を?」


 なんのことかさっぱりわからない。

 今日どこかに行くなんて聞いていないぞ。

 めるは頭をポリポリ掻くと、「あー」とか「うー」とか言っている。

 それからやっと決心がついたようで、再び私を見据えた。


「……クレープ屋」

「へ?」


 思わず間抜けな声を出してしまう。

 予想外すぎる答えに、頭が追いつかなかった。

 めるは顔を真っ赤にして俯いている。

 その姿はとても可愛らしいが、今はそんなこと考えている場合じゃない。


 なんでクレープ屋?

 なぜそこに行きたがるのだろうか。

 めるのイメージとかけ離れてはいないけど、めるなら一人でも行きそうなのに。


「そ、それだけ……?」


 恐る恐る聞くと、こくりと小さく首を縦に振った。

 ……なんだこの可愛い生き物は!

 いつも見せてくれる顔とのギャップがありすぎて、もう胸キュンどころの騒ぎじゃなくなる。

 萌え死ぬとはこういうことを言うのだろうか。

 いや、絶対に違うと思うけど。


 しかし、一体どうしたというのだろうか。

 めるって甘いもの好きだったかなと思い返すが、なにぶん好きな食べ物すら知らずに付き合ったから、記憶の中にそれらしき情報はない。


 ますます謎が深まるばかりである。

 でも、そんなことは些細な問題にすぎない。

 めると一緒にいるだけで幸せだからね!


 結局、私たちは二駅先にある駅前のお店に向かうことになった。

 電車に乗って数分後、目的地に着いた。

 駅から出ると、そこは人で溢れかえっていた。

 休日ほどではないが、人通りは多い方だと思う。


「わー、人がたくさんいるねぇ」

「そうね」

「……」

「……」


 会話終了。

 沈黙が続く。


 いつもなら平然と喋れるはずなのに、なぜか言葉が出て来ない。

 さっきまではあんなにも会話が続いていたというのに。

 やはり、デートという状況を意識しているからだろうか。

 めるも同じことを思ってくれていたらいなーなんて淡い期待を抱く。


「……」

「……」


 私たちの間に流れる無言の時間。

 それはとても長く感じられた。

 だけど、不思議と嫌な気分ではない。

 むしろ心地いいと思ってしまう自分がいることに驚いた。


 そして、ふとあることに気づく。

 ――手、繋ぎたいかも。

 そう思った時には既に手が動いていて、気づいた頃にはめるの手を掴んでいた。


「へ!?」


 突然の行動に驚いているのか、めるは目を大きく見開いてこちらを見る。

 私は「やってしまった」と思って咄嵯に手を引っ込めようとした。

 だが、それよりも早く腕を引かれて引き戻される。

 そして、そのままめるの手に包まれた。


 ああ、温かい……安心する。

 心の底からホッとしたような感覚に陥る。

 めるの顔を見ると、耳まで真っ赤になっていた。

 きっと私の顔も同じように赤く染まっていることだろう。


「……行きましょう」

「……うん」


 お互いにぎこちない動きで歩き出す。

 このまま時が止まればいいのにと、本気で思った。


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