めるにこだわる理由
「ふふふふふふ、幸せだぁ」
私は自室で今日の出来事を振り返っていた。
めると一緒に夕飯を食べたあとは即解散の流れになった。
理由は『早く帰ってあげて』とのこと。
それはよくわからなかったけど、一緒にいすぎるのもめるを疲れさせてしまうと思い、特に異論はなかった。
それにしても、あんなに奢ってくれと言っていたのに最終的には割り勘にしてくれた。
私はベッドに倒れ込み、枕をぎゅっと抱きしめた。
「めるは優しいな」
また会いたい。
学校に行けば会えるには会えるけど、一人でいる時間がとても寂しい。
ここはいっそめるの家に毎日泊めてもらうしかないのでは!
「……いや、それはやめておこうか」
ここでさらに押せば、めるの中で私のイメージがさらに悪くなってしまうだろう。
ただでさえ、ファーストコンタクトが最悪なのに。
「やっぱりめるに私を知ってもらうことでもっと仲良くなれるかな……」
手っ取り早く自分を知ってもらうにはどうしたらいいか。
私は早い段階で素晴らしい結論へ至った。
自分を知ってもらうには、自分からさらけ出すことが大事。
そう、つまりは――ありのままの自分をさらけ出すこと!
「ということはめるに私の裸を見てもらえば万事順調に行くのではっ!?」
「なに言ってるんですかこの変態さんは……」
「ぎゃーっ!? 変態ー!」
「お姉ちゃん人の事言えませんよね!?」
いきなり私の部屋に入ってきた妹がなにか言っている。
「め、めいはなんでここにっ!?」
「はぁ……お姉ちゃんがなにやらソワソワしてたので様子を見に来てみれば……」
呆れかえっためいはため息をつき、私のそばに座り込む。
「というか変態ってなんだ! 私は至って普通のこと言ってたのに!」
「どこがですか!?」
吼える私に、めいは負けじと食ってかかる。
こいつなかなかやるな。
しかし、私は妹に負けるような姉ではないのだ。
ここは年長者の余裕というものをめいに見せてやろう。
二歳しか変わらないけど。
「私は変態じゃないっ!」
「お姉ちゃんはもう手遅れなんです! いい加減自分の変態性を認めてください!」
「まだ私はノーマルだよ! めいに裸を見せようとしないし!」
「うわぁ……」
あれ、余裕を見せるどころかかなり引かれている。
おかしい。妹に私が変態じゃないと熱弁したら納得してもらえると思ったんだけどな。
むしろさらにドン引きされた気がする。
「はぁ……お姉ちゃんはなんでこうなっちゃったんですかね……」
「なにを言う! 私は昔からまともだよ!」
「……いや、昔はこんなんじゃなかった」
「え?」
めいがなにか呟いたが聞き取ることができなかった。
でも、私の聞き返しにめいは答えてくれず。
「とにかく、お姉ちゃんはもう手遅れなんです。だからもう諦めてください」
「……それは嫌だよ。私はめるにもっと近づきたいんだ」
「なんでめるさんにはそこまでするんですか」
「なんでって……」
不意にめいが私の服の裾を引っ張る。
なんでその質問をしている時に寂しそうな顔をしているのだろう。
めいはなにを思って私にそう質問しているのだろう。
めいの疑問に答えるため、私はちょっと考えてみる。
なぜめるに近づきたいのか。
なぜめるにこだわるのか。
なぜめるがいいのか。
私はめいの目をまっすぐ見て言った。
「好きだから」
めいは目を見開いて驚いている。
歴代の彼女達にも抱いていた感情だが、〝今〟はめるしか頭にない。
それはきっと、めるが私にない物をたくさん持っているから。
それがとても眩しくて、そんなめると一緒にいると私も輝きをもらえる気がするんだ。
「めいにはわからないかな? こんなに人を想う気持ち」
「……わかりませんよ」
めいは俯いてしまったが、私の裾を放すことはなかった。
「でも、気をつけてくださいね」
「めい?」
「女の子の嫉妬は怖いですから……お姉ちゃんがいつか彼女たちから刺されそうで怖いんです」
めいは震える声でそう言った。
そして、袖を握る力を強める。
「お姉ちゃんが刺されて死ぬなんて嫌です。私は、お姉ちゃんに生きていてほしい」
「……うん、めいは優しいね」
「優しくなんかないですよ……。私はただ、自分のために言ってるだけです」
めいは俯いていて表情は見えないけど、きっと泣いているのだろう。
私はそんなめいをそっと抱きしめた。
「ありがとうね。心配してくれて」
「……はい」
私の胸に顔をうずめるめい。
私はそんなめいの頭を撫でる。
……撫でることしか、できなかった。
しばらくしてめいが離れたので、めいの顔を見るともう泣き止んでいた。
「ごめんね、急に抱き寄せたりして」
「ほんとですよ」
そう言っためいはいつもの調子に戻っていて安心した。
そして、用が済んだかのように私の部屋から出ていこうとするめいを呼び止める。
「なに? お姉ちゃん」
「えっと……これからも相談に乗ってほしいな~……なんて……」
「……いいですよ。いくらでも乗ってあげますよ」
めいはふんわりと優しく微笑んだ。
そんな妹を見て、私はやっぱり優しい子だなと思ったのだった。




