付き合えた!
「でへへ……ようやく付き合えるのかぁ」
顔の表情筋がゆるみまくっていて、通行人から五度見くらいされた。
家に帰るだけなのに、目立ちまくって仕方ない。
今の私はピンクのオーラが出まくっているだろう。
これぞ幸せの可視化だ。
私の幸せを全国に広めたい。
そんなことできないのはわかっているけれど。
ニヤニヤしまくっているから、そばに警察でもいたら何事かと思われてしまうだろう。
でも、たとえ逮捕されたとしても、今の私ならば受け入れてしまうと思う。
こんなに幸せなのだから、少しくらい不幸なことがあった方がのちにこんなに幸せでいいんだろうかと悩む必要がないから。
「へへっ、ふふふふ……」
「お、お姉ちゃん? ……おかえりなさい」
めるとこれからどんなことをしようか考えていると、いつの間にか家の中に入っていたようだ。
「めい! 聞いてくれ! 狙ってた子とついに付き合えることになったんだ!」
「えっ……よ、良かったです。でも、他の子はいいんですか?」
「ん? なにが?」
唐突に、めいがわけの分からないことを言ってきた。
もう少し具体的に話して欲しい。
「え? いや、その、お姉ちゃんは色んな子と付き合ってるじゃないですか。これ以上増やしたら修羅場どころじゃなくなる気が……」
なるほど、そういうことか。
めいは私のことを心配してくれているらしい。
その優しさはありがたいが、それは無用な心配だ。
なぜなら……
全員のことが本気で好きだからだ!
「みんなのことを好きになってしまったんだから仕方ないだろう。それに、今までだって何も問題はなかったよ」
「は、はあ。そ、そうですか……」
めいは呆れたようにため息をついた。
さっきからなんなんだ。
「とにかく、私は幸せだ! めいも早くいい人を見つけなよ!」
「……はい」
「じゃあ、私は部屋に戻る。またな!」
「わかりました」
私はるんるん気分で階段を駆け上がる。
その時後ろでめいがなにか言っていたが、私の耳には入ってこなかった。
「お姉ちゃん……わたしは……」
部屋に入り、めるとのトーク画面を開く。
もうすでにメッセージが届いていた。
『これからよろしくお願いします。あと、お願いがあるんだけど、みんなの前でベタベタするのは控えて欲しいわ』
『よろしくー。って、なんで!?』
『恥ずかしいからに決まってるでしょ!?』
私がメッセージを返すと、すぐに返事がきた。
もしかして、私からの返信を待っていたのだろうか。
可愛いヤツめ。
『私はいつでもどこでもめるとベタベタしたいのに!』
『そんなことばっか言ってると別れるわよ』
「そんな!」
つい声に出してしまった。
別れられたら困る。せっかく付き合えたのに。
……まあ、私が飽きたらどうなるかわからないけど。
『ごめんなさい。冗談だから。ただ、恥ずかしいから二人きりの時だけね』
『わかった!』
ただ、今はめるにゾッコンだ。
他の子なんて目に入らない。
これからじっくり、めるを私好みに育てていこう。
そして、いつかは……
私はこれからのことを妄想して、またニヤニヤした。
「あ、そうだ。せっかく付き合ったんだし、めるとのツーショットを撮りたいな」
思いついた私は、すぐにめるにメッセージを送る。
『めると写真撮りたいんだけど!』
『ほんと急ね。別にいいわよ』
めるからすぐに返事が届いた。
あまり拒否されないようで良かった。
『じゃあ今から行くね!』
『え? 今?』
『うん! もう我慢できないよ!』
私はそう返して、すぐに家を出た。
めるの家の前まで行く。
ちょっと緊張してきた。
ついにめると会えるのだ。
しかも、付き合ったあとだ。
もう想像が膨らんで仕方ない。
私はインターホンを押す。
……出てこないな。
もうとっくに家の前で待っているのだが。
もしかして、気付いてないのだろうか? それとも、居留守を使われている? だとしたらショックだ。
もう一度インターホンを押すか悩んでいると、中から足音が聞こえてきた。
「……ほんとに来たのね」
「める!」
ドアを少し開けて、こちらを覗くめる。
そんな仕草も可愛い。
早く抱きしめたい。
「そんなにやけた顔でこっちを見ないでくれる?」
「ええー? そんな顔してるかなあ」
確かに、今私の顔はだらしないことになっているかもしれない。
でもしょうがないじゃないか。幸せなのだから。
そんな私を見て、めるはため息をついた後、ドアを開けた。
「まあ、いいわ。入って」
「お邪魔します!」
ついに私はめるの家に入ることに成功した。
「えーと、めるの部屋はどこだ?」
「こっちよ」
めるに案内されて、二階へと上がる。
めるの部屋の前まできた。
ドアにハートマークが描かれており、なんだか可愛らしかった。
「入って」
めるに促されて入った部屋の中にはふかふかの真っ白なベッドやたくさんの小物が置いてある机など色々なものがあり、女の子らしい部屋だった。
そんな部屋に今私たちは二人きりなのだ。
その事実が私をさらに興奮させる。
「……で、写真撮りたいって話だったわよね。学校でもいいんじゃないかしら……」
「そうだね。でもせっかくだし、めるの部屋がいいかなって……」
「……そう」
めるが赤面して顔を逸らす。
可愛い。可愛すぎる。
もう我慢できない! 私は思わずめるを抱きしめた。
「きゃっ!? もう……いきなり何よ?」
「ごめん、もう我慢できなかった」
私はさらにぎゅっとめるを抱きしめる力を強める。
そんな私をめるも抱きしめ返してくれた。
ああ、幸せだ……




