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姉妹百合なんて興味ない!……はず?  作者: M・A・J・O
こちらの世界

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昔の恋人

 私が、何をしたって言うの……


 理由なんて簡単で、すぐに答えが出た。

 すなわち、何もしていない。それが答え。

 何もしていないからこそ天罰が下った。

 怠惰なこの私に……天罰が。


 ☆ ☆ ☆


 数年前。


「んっ……は、恥ずかしいよ」


 小さな部屋に、自分の声だけが響き渡る。

 恥ずかしい。でも満たされる。

 その腕は私の奥深くまで満たしてくれた。

 心の中にポッカリと空いたなにかの穴が埋め尽くされるようで、とても心地よかった。


 こうして愛してもらえる時、一番相手を身近に感じられる。

 寂しくない。切なくない。孤独じゃない。

 そのことが泣けるほど嬉しくて、私は相手にすがった。


 相手も嬉しそうに目を細めるから、自分と同じ気持ちだと思っていた。

 ……実際、同じ気持ちだっただろう。今、この時は。


「大好き……大好きだよ、○○」

「うん、私も大好きよ。……もうちょっと、力込めてもいいかしら?」


 元々不自由さを感じていたけど、さらに圧迫感が加わる。

 それでも私の身体は幸福を感じていた。


「うぅ……苦しいよぉ」


 それは言葉だけで、実際はそこまで苦しくない。

 その理由は多分、本当に○○のことが好きだったからだろう。それ以外に見つからない。

 ○○は私の頬に手を添えると、愛おしそうに私と唇を重ねた。

 とても恍惚な表情をしていて、それを見ていたらまた心が満たされる。


「ん、唾液美味しいわ。癖になりそうね」

「は、恥ずかしいよ……」

「恥ずかしいこと言ってるのはこっちよ?」

「そっ、それはそうだけど……そういうことじゃなくて……」


 なにが言いたかったのか、自分でもわからなくなる。

 だけど、なんでもよかったのだ。

 ○○と話を楽しめればなんでもよかった。

 そう思う。


 だって、他のことがどうでもよくなって盲目になるほど大好きだから。

 結婚して、ずっと一緒にいたいと思っていた。ずっと一緒にいられるとのだと思っていた。


「ふふっ、可愛いわね」


 そうして撫でられることが当たり前だと思っていた。

 ずっと、そう信じて……


 それから何日か経ったが、私たちの関係は変わらず続いていた。

 高校が同じで、お昼休みと下校はずっと一緒にいるのが当たり前。

 ○○はバス通学だったから、スクールバスが停車しているところまでしか一緒にいられなかったけど、それでも十分だったのだ。


 そこまでは恋人繋ぎで歩く。

 ちらほらと視線を感じることがあって少し恥ずかしかったけど、付き合っているのだから別にいいじゃんという心持ちでいた。


「じゃあ、また明日ね」

「うん。また明日……」


 ○○は笑顔で手を振ってくれる。

 でも、それが私に向けられた最後の笑顔だった。

 この後、なぜか振られることになってしまった。ほんとになぜ。


 ○○は私を振った理由を話してくれなかったけど、真意を探るために前から繋がっていた裏垢を覗いてみた。

 するとそこには……


『私、ほんとは好きじゃなかったのかも』

『寂しさを紛らわせるために一緒にいたような気がする』

『それは恋じゃなくて依存とかもっと別のものなような感じよね』


 そんな言葉の羅列を見ていたら、いつの間にか私の両目から涙が溢れている。

 やっとそこで、自分と○○の意識の違いを知った。

 繋がっているアカウントだから、マイルドに言っているだけなのかもしれない。

 本当の理由は、まだ他にもあるのかもしれない。


「うっ……うぅっ……」


 それでも、私は○○と一緒にいたかった。一緒にいられるものだと信じて疑わなかった。

 この感情は依存から来るものなのかもしれない。

 でも、依存も愛の形に違いないのではないか。私はそう思うが、人それぞれ違う考えを持っているだろう。


「うわぁぁぁぁん!!」


 私は泣き叫んだ。

 声が出る限り、力いっぱい、内側から溢れ出るなにかを声にしているみたいに。

 意味のある言葉にはならなかった。

 どんな思いで泣いているのか、自分でもよく理解できなかったから。

 でも、悲しくて泣いていることだけはわかった。


「びぇぇえええ……! ○○なんて知らない! 勝手にすればいいじゃん!」


 私はいつの間にか、選ぶ語彙が怒っている子どものようになっていた。

 ぐす……ぐす……と嗚咽が止まらない。

 それでも、過ぎてしまったことだ。今更どうしようもない。

 前を向いて、歩いていくしかないのだ。


「絶対……絶対後悔させてやる……! いい女になって、必ずっ、『あの時はごめんなさい』って謝らせるんだからぁぁぁ!!」


 その勢いはふて寝と同時に静まり返ったが、一つだけ消えなかったものがある。

 すなわち、絶対に後悔させて○○から復縁を切り出してほしいという感情が。

 その気持ちだけは、何年経っても消えることはなかった。


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