うみにバレてた!?
朝、いつも通り白いベッドの上で目を覚ます。
柔らかな心地よさと程よい暖かさがあり、すぐには起きられない。
それに、目の前にはすやすや寝息を立てて眠っているめいがいる。
妙に愛おしくて、離れられない。
だから私はめいの手をぎゅっと握り、そのまま二度寝した。
絶対にこの手を離さないという、少しの独占欲を露わにして。
「――……ちゃん。お姉ちゃん。起きてください」
「んぅ……? どうしたの? 今日は学校ないんだからもっと寝かせ――」
「あ、あの、そうじゃないんですけど、とにかく起きてください……!」
「えぇ? なん……で……え……?」
二度寝から無理やり起こされ、めいに文句を言おうとした。
だが、その続きは言葉にできなかった。
なぜなら、そこにはもう一人の人物がいたから。
「……うみ……」
私と同じ黒髪――ではなく、ブロンドカラーのストレートなセミロングに、明るい茶色の瞳を持っている……そのキラキラした人物は、私の妹。
「はぁ……仲良すぎると思ったんだよね……でもまさかこんな……」
呆れている。引いている。戸惑っている。
私はお姉ちゃんだからわかる。今、うみがどんな気持ちでいるのか。
だがわかったところで、到底対処できるものではない。
私だって、この状況をまだ飲み込めていないのだから。
「あ、あのですね、うみちゃん。その、これはなんというか……」
「あ、弁明なら大丈夫です。全部わかってるんで」
「……ふぇ?」
めいがわたわた慌てながらも説明しようとすると、うみによって制止される。
ここぞという時に、めいは弱いようだ。
いつもは私を組み敷いているくせに……
ん? ということは、力関係ではうみが一番上ということに……?
それはちょっと、最年長としてどうなのだろうか。
「うい、なに唸ってんの?」
「お姉ちゃん怖いです……」
二人の妹が、私に辛辣な言葉をかけてくる。
くそ、なぜ私はこうも非力なのか……!
「いや、ういのことはどうでもいいや」
「ひどっ!」
うみがバッサリ私を切り捨てた。
切り捨てたという言葉の使い方が合っているかどうかわからないけど、とにかくひどい。
そんな妹には姉としてビシッと言って――
「付き合ってるんでしょ? ういとめいさんは。違うの?」
――やれなかった。
それより、すごく衝撃的な言葉がうみの口から出てきた。
一体、うみはなにをどこまで知っているのか。
もしかしたら、本当に全部知られているのかもしれない。
恐怖はない。まったくないというわけではないが、ないに等しいと思う。
ただただ――猛烈に恥ずかしい!
だって全部知られているということは、私がめいに甘やかされているのを知っているわけで!
しかもそんな私とめいの絡みをこっそり影から見られていたわけで!
恥ずかしすぎて、顔を真っ赤にしてベッドにうずくまるくらいしかできなかった。
そんな私の背を、めいは優しくさすってくれる。
「あ、あの、お姉ちゃんが限界なようなのでそろそろ――」
「だめっ! 二人だけでイチャイチャしてっ! あたしもイチャイチャしたいっ! 交ぜてっ!」
「えぇ……」
こやつはなにを言っておるのじゃ。
思わず婆さんになってしまったわ。
めいも明らかに面倒くさそうな顔をしている。
百合 (ラブラブしてる女の子二人)の間に交ざろうとするのはいくら女の子でも私は無理なんだけど……って、なに言ってんだ私は。
私とめいを百合と言って――いるな。
でも私とめいは百合なのか? 百合だな、うん。自分で勝手に悩んで自分で勝手に結論付けた。
「冗談だよ。なに本気にしてんの」
「そうだよねよかったそんなことするようなやつじゃないもんね!!」
「……微妙にあたしが言ったことに答えてるよね」
「そんなこたぁどうでもいい!」
「そんなこと!?」
うみとやり取りしていたはずが、最後はめいが乱入する。
まあ、それもどうでもいい。
「よかった……ほんとに……うみが嫌なやつじゃなくてほっとしたよ……」
「あたしをなんだと思ってたの……まあいいや。――二人と一緒に寝たーい!」
「え、いい……よぉぉぉ!?」
一度承諾しかけた声は、盛大な疑問系になる。
文字通り、開いた口が塞がらない。
うみはいつからそんなハレンチ娘になってしまったのか。
けしからんやつだ……!
「あ、寝たいってそういう意味じゃないからね。勘違いしないでね」
「え、あ、そっかぁ……ん? ということは?」
「てーいっ」
「うわぁぁぁ!?」
うみは私とめいを同時に、ベッドの上に押し倒した。
私とめいの真ん中を陣取って、満足そうに微笑んでいる。
これじゃあまるで私とめいが親でうみが小さな子どもみたいだ。
本当にただ間に入って、一緒に寝たかっただけのようだ。
「ふふふ、うみちゃんって可愛いですね」
めいがうみの顔を覗き込んでそんなことをつぶやく。
可愛いというのは愛玩とか子供っぽいとかそういう意味で言ったのだろうけど、少しだけもやもやしてしまう。
「あ、もちろんお姉ちゃんが一番ですよ」
「……そりゃどうも」
取ってつけたような言い方に若干不機嫌になりながらも、めいの気持ちは十分伝わっているので問題はない。
それよりも、少し賑やかになった百合的日常に充足感を覚え、気がついたらめいに軽く口付けしていた。
めいは戸惑いながらもそれを受け入れてくれて、次第にお互いの舌を絡めるまでになっていた。
「お姉ちゃん、愛しています」
「……うん、私も。愛してるよ」
その状況に満足して気が抜けていたのか。
「うふふ、特等席だぁ……」
うみが起きていてボソリとつぶやいたことに、まったく気づけなかった。




