めいのマッサージ
「……どうしてこうなった……」
「え? お姉ちゃんはこういうことをしてほしかったんですよね?」
「いや、うん、そうだけどさ……」
私はめいと一緒に自分の部屋にいた。
だけど、私の状態は普通とは少し……というか、かなり違った。
うつ伏せに寝かされ、その上にめいが馬乗りになっている。
……正直ちょっと重いが、それは口が裂けても言えなかった。
「さぁ、ということで! またお姉ちゃんを癒しちゃいたいと思います!」
「……よろしく」
まぁ、重いと言ったところでこの天然の可愛い妹はきっと傷つきはしないだろう。
しかし、私から〝マッサージ〟を頼んだ手前、余計なことは言えなかった。
「じゃあ、まずは……お姉ちゃん、力抜いてくださいね」
めいはそう言うと、私の肩に手を当ててゆっくりと力を入れていく。
「……んっ」
思わず声が出てしまう。
「あ、痛かったですか?」
「いや、大丈夫。続けていいよ」
「はい! では遠慮なく……」
めいはそう言うと、私の肩をゆっくりと揉み始めた。
……うん、やっぱりめいはマッサージが上手い。
マッサージされるのは初めて出会った時以来だけど、めいはその時と比べても格段に上手くなっていた。
「お姉ちゃん、気持ちいいですか?」
「うん、すごく気持ちいいよ」
「えへへ、良かったです!」
私がめいのマッサージを褒めると、彼女は嬉しそうに微笑んだ。
思わず撫でようと手を伸ばしそうになったけど、うつ伏せだから撫でられない。
「よし、じゃあ今度はここもマッサージしますね」
めいはそう言って、私の背中の上の方に手を当てる。
「いっ……!」
そしてそのまま肩甲骨の辺りをグリグリと揉まれた。
痛い。
めちゃくちゃ痛い。
めいは力加減が分かってないんだろうか。
……いや、めいのことだからきっとわざとだろう。
私が痛がってるのを楽しんでるんだ、この妹は。
……まぁ、別に構わないけど。
可愛い妹のためなら、私はどんな痛みも受け入れよう。
「あれ、結構我慢強いんですね。ちょっと意外でした」
「い、いや、別に……我慢なんか……してないしっ?」
「……気丈に振舞っても無理がありますよ」
バレてる。
強気でいこうと思ったが、どうやら無理だったようだ。
しかも、やっぱりわざと強く押して反応を楽しんでいたように見える。
……まったく、可愛い顔して意地悪な妹だ。
「じゃあ、今度は腰周りをマッサージしますね」
「う、うん」
めいが私の腰を優しく撫でる。
くすぐったい。
でも気持ちいい。
絶妙な力加減ですごくリラックスできる。
……なんというか、このマッサージはやばい気がする。
毎日やってもらいたいくらいだ。
いや、それはさすがに言い過ぎだけど……でもそれくらい上手いのは事実だ。
「大学はたくさん歩くでしょうし、足もやっちゃいますか」
「え? あ、あぁ……うん、お願い」
めいは私のふくらはぎ辺りをゆっくりと揉み始めた。
私はめいのマッサージに完全に骨抜きにされている。
もうめいが私の上に乗ってるとかどうでもいい。
とにかく今はこのマッサージをずっと受けていたかった。
しかし、そんな至福の時間にも終わりは来るもので……
私はうつ伏せから仰向けの状態に変えられる。
すると、当然めいの顔が視界に入るわけで……
「ちかっ!」
思わず声が出てしまう。
「ふふ、お姉ちゃんが可愛すぎるのでつい近づいちゃいました」
めいは、イタズラが成功した時の子供のような笑顔だった。
可愛いけど……悔しい!
私は恥ずかしさと悔しさでめいを直視できなかった。
「もうわかったから、離れてよ」
「えへへ、はーい」
めいは素直に私から離れて、私の横に寝転がる。
もうマッサージは終わったのだろうか。
「……お姉ちゃん」
「ん? なに?」
「今日、楽しかったですか?」
めいは不安げな表情でそう聞いてきた。
なんでそんなこと聞くんだろう。
私はめいの質問の意図を掴めないでいた。
「……うん、すごく楽しかったよ」
しばらく悩んだ結果、私はめいの問いかけに素直な感想で返した。
めいはそれを聞いて、安心したように笑う。
……なんでわざわざそんなこと聞いたんだろう。
聞かれなくても、めいといる時間が楽しくないわけないのに。
「私、ずっとお姉ちゃんに求められたかったんです。だから、今日はすごく嬉しかったです」
めいはそう言って嬉しそうに笑った。
それは見ているこっちも嬉しくなるような笑顔で……
「……そっか」
そんな笑顔を見てしまったら、私も自然と笑顔になってしまった。
誰がなんと言おうとめいは私の妹だ。
私はこの子と出会えて本当に幸せだ。
もう絶対にこの幸せを壊させない。
何があってもめいを守るんだ。
そんな強い決意を私は胸に刻んだ。




