1話(仮)
この世界には"能力"というものがある。
身体能力とか戦闘能力とかそういう能力のことじゃない。いわゆる異能の力というものだ。
その力は、全員には与えられなかった。
その力は、あまりにも強力だった。
その力は、世界に混乱をもたらした。
その力は、世界を変えてしまった。
"実力主義"の世界へと。
今日から通う世界最高峰の実力主義学校の始業式が終わり、クラス分けの為に能力値測定が始まる。能力を発動することで、その強力さを測る能力値測定。A~Eまでに分けられ、もちろん高い能力値を誇るものは優遇され、尊敬される。先程からも時々その結果に盛り上がりを見せ、賞賛の声が上がる。
「、、、"E"か」
いつも通りの"E"。
一部の人から向けられる軽蔑のような、もしくは馬鹿にするような視線。
俺はなるべく目立たぬように、ただの落ちこぼれに見えるように、そういうふうに精一杯取り繕いそそくさと去ろうとする。が、
「あなた、、、ランクEなの?」
残念なことに俺の努力が報われることはないらしい。紫髪の少女が俺に話しかける。
「私は今日までに私と戦えるような強者の目星を付けてきたわ。その中に貴方は入ってなかった。」
「でも今日、色んな人の気配を見てるうちに感じたの、あなたの強者としての気配を。そういう雰囲気を感じたの。どうやって、どうして能力値を偽ったの?」
「買い被りすぎだな、レミリア・スカーレット。お前の気のせいだろ。」
「俺はただのランクEだよ。それ以上でもそれ以下でもない。」
レミリアスカーレット。混乱の時代で実力主義社会を作ったスカーレット家の次期当主で、現世界最強ともいわれている人間。
「ただのランクEは私に対してそんな言葉使いはしなはずなのだけど。まぁいいわ、また今度ね。あなたとはいつか戦うことになる気がするの。」
言いたいことだけ言って、レミリアはスタスタとこちらに背を向けて歩いていく。
「それもまた気のせいだな。」
つぶやくように俺は言う。周囲を見回すと何人もの人が怪訝そうな顔をしてこちらを見て、何かを話している。
はぁ、最悪だ、、、とんでもなく目立ってしまった。正直今すぐにでも帰りたい。
逃げるようにその場を離れ、人混みの奥へ進む。俺を怪訝そうに見ていたやつらも、しばらくすると再び能力値測定の結果に注意を向け始めた。
人混みを抜け、隅まで進むと後ろから見知った声が聞こえる。
「お前レミリアさんに絡まれるとか何したんだよ。」
「てかお前能力値どれだった?俺はもちろんE!」
知り合いである其之辺 野仁だ。ちなみにこいつの能力は火をつけるだけの能力。いわゆるハズレ能力ってやつだ。
俺は周囲に人が居ないことを確認してそいつに告げる。
「もぉぉぉ〜〜〜俺が知りてぇよぉ〜
なんで俺はいつも強い奴らに絡まれんだよ〜」
「ランクもEのままに決まってるだろ?
そんな能力が覚醒した訳でもないんだからさぁ〜」
そう、俺という人間は昔から実力を隠してそうな強者の雰囲気がするだけで、実際はただの雑魚なのである(能力値Eだから当たり前だが)。
その雰囲気を醸し出す原因の一因でもあるであろう喋り方や生意気な態度は、この実力主義社会では1度舐められたら喧嘩を売られてボコボコにされてしまうため、舐められないようにするために無理やり定着させた強気口調及び態度であり、心の中ではほぼずっと弱気なのである。
「お前の弱気と強い人に目を付けられんのはずっとだなぁ。ここに来ることになったのもそれのせいだし。」
そう、何故ランクEごときの俺がこんな世界最高峰の実力主義学校に来たかと言うともちろん理由がある。
-数年前-
世界に能力が現れて間もないころ、俗に言う"混乱の時代"真っ只中だった。国々は思想の違いで分断され、強力な能力者によって思想ごとに派閥が作られていた。
そんな時代のある日。俺は突発的に始まった派閥同士の争いに巻き込まれていた。炎が燃え盛り、ビルが倒壊し、様々なものが宙を舞う。
そんな激しい戦いの最中、俺は逃げる。
路地を抜け、戦闘の中心から離れ、中立派閥へと逃走する。
あとすこし、、、あとすこしで逃げ切れる、と思った。
その刹那、轟音が響く。
そちらを見ると、遠くからトラックがとんでもない速度で飛んでくる。
驚いて一瞬、反応が遅れる。
それでもそれを、必死に避けようとする。が、足らない。コンマ何秒。どうしても間に合わない。
同時に、"死"を感じる。あぁ、俺は死んでしまうんだな、と思う。
もう少し早く反応出来たらな、という後悔。それを思った瞬間、とめどない生への執着が沸いてくる。
、、、トラックがぶつかる寸前、時の流れが遅く感じる。いわゆる走馬灯という奴だろうか。それが流れる。
遅い時の流れの中で走馬灯を見ているとき、ふと思った。
"もし、俺にも能力が発現していたら"
一縷の望みにかける。
もし、今、この瞬間、能力が発現したなら。
願う。心の底から。生への執着をも乗せて。
、、、瞬間、体の奥底から沸き上がるものを感じる。それが何かはわからない。
だからこそ、精一杯にそれを発動しようとする。とにかく大きい出力で、とにかく大きい範囲に。
そして、
そして、
そして、
それは、発動した。




