もう一人の主人公
私はこの世界のものではない。
看護師として毎日の夜勤をこなし、人員不足のために時々日中にも出勤。
忙しい日々を過ごす中で、出会いもなくましてやマッチングアプリなどもできる時間の確保もできず、
唯一の癒しとしてRPG風恋愛乙女ゲーム『十三遊戯~王国立て直し計画~』をやりこんでいた。
国を代表する魔導士になる素質を持った13人の男女の中から選び、そこから自分好みに育成していくという言わばプロデュース・マネジメントを含む恋愛シュミレーションゲームになっている。
自由度が高く、根本の性格は変わらずとも多少の変化は伴う。また、魔力についてもキャラクターによって使えるものと使えないものがいたり、様々。プレイヤー自身も男女の概念がなくでリリース当初、話題を呼んだ。
まさか、自分がゲームの中に転移するとは思わなかった。
正確には魂だけが転移されたと考えるのが良いのかもしれない。
というのも、ゲーム調にはされているものの見た目が幼少期の自分であり、実際夜勤に向かう歩いていたのに気づいたらダンジョンの中にいたのだ。
「はぁ~~~~~~~」
死んでから転生するのが相場ではないのか。
どうしよも出来ないのだから仕方ない。
「ていうかこれ死亡フラグ?とりあえず、洞窟なのはわかるけど」
「おい!誰かいるのか!出てこい!」
何人かの足音と金属のぶつかる音。
流石に、何もわからない以上出たほうがいいと判断し、父(仮)アドンに拾われて、ようやく自分がダンジョンにいてゲームの世界だと分かった。髪が短く小汚かったせいか男の子に間違われ名をルーモスと付けられた。
プレイヤーは種族が全員ハーフエルフという作者の性癖が垣間見えるが、男女どちらにもなれるという点で設定にちょうどいいと納得。13の国にもハーフエルフは少数存在。私もどうやらそうらしい。
正直、現状を考えると元の世界に戻りたいけど、こちらに来て1か月以上寝ても覚めても戻らないから、だれか一人でも育てるか、と目を付けたのが隣の村にいた”トーマ”。
ゲームでは、あと10歳くらいで出会う予定だったが、そんなに待ていられない。
プレイヤースキルを使って育成するのが第一関門だった。