反対側の村
あれから、山の反対側の村へはかなり距離がありくたくたになりながらも到着した。
隣村は普段から交流があったことから快く受け入れられた。
他にも何人かは同じ考えだったようで見知った顔もいた。
「トーマ大丈夫?疲れたでしょう。少し休みなさい。」
「俺より母さんの方こそ、身体を休めたほうがいい。」
「母さんは大丈夫よ。父さんは・・・・」
目に涙を溜め、言い淀んだ母を見て何もできない自分に苛立った。
昨日まで自分にできないことなんて何もないと信じて疑わなかったのに、いざ危険が迫っても何もできない。無力にも逃げるだけ。
「父さんなら大丈夫だろ!村で一番丈夫で馬鹿力だし!俺らが信じてないと!」
「そうよね!母さん弱気になってた!ごめん!もちろん信じてる!!」
本当は自分だって弱気だ。
訳も分からず身一つで逃げて、母さんを頼まれた。
男の俺は守らなくちゃいけない。
どうしたらいい?どうしたら守ることができるんだ?
「お取込み中ごめんね~?メイ、村班会議があるから来れそう?」
そう声をかけて来たのは、部屋の一室を貸してくれてお世話になっているピーニャさんだ。
ピーニャさんは元々同じ村に住んでいたが、冒険者と結婚しギルドが近い山の反対側に越した。
母とは同級生で、活発的なピーニャさんは誰とでも仲良くなれて憧れていると聞いた。
「呼んでくれてありがとう。今行くわ。」
「はいよ~。トーマくんはうちの子と遊んどきな~。裏の広場にいると思う~」
「わかった。ありがとうぴーにゃさん」