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水の魔王  作者: 粉ミルク
2/5

好奇心というマモノ

 世界に激震が走った。

 魔王を打ち倒してからたったの三年。たったの三年で新たな魔王が誕生した。

 その三年の間に他の魔王達とは辛うじて均衡を保っていた。



 その均衡が崩れる瞬間が来てしまった。



 新たなる魔王の誕生は神託として人族の国々に伝わった。これからの未来に怯え、人々は勇者に縋りついた。




魔王は今日も空を眺める。


鳥を眺める。


森を眺める。



魔王が住む湖の底で、魔王の魔力を受けた水から新たな命が生まれる。


それは、新しい魔物。


球体状の弾力を持つ動く水。気まぐれになんでも飲み込む未知の存在。


この世界にスライムが誕生した。


魔王はスライムを観察した。


スライムは湖の周りにあるものをなんでも飲み込んだ。


草、土、木、花、鳥を初めとする動物。


動物は動いて逃れようとするため、何体ものスライムが逃げ道を塞いで捉えた。


スライムには若干の毒があり、それが体内に飲み込んだ物を溶かしている。溶かしたあとは吸収されて、スライムの身体を大きく成長させた。


動物を生きながら溶かして取り込む様は、子供には到底見せられないだろう。



魔王はそれを見て同じことを試みた。

湖の周りの草を湖の水で包み込み、それを溶かして取り込んだ。


それを見ていたスライム達が飛び跳ねた。

スライムは自らの生みの親が魔王だと本能で理解している。

その魔王が自分達と同じことをしたのだから、それを喜んでいるのだ


胸が温かい。


未だ心のない魔王は、胸の辺りが温かくなるのを感じた。


その温かさがよく分からない魔王は、覚えたてのスライムの技を更に披露した。


湖が震える。


魔王は無意識に湖の全体をスライムの技で満たした。

それはつまり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


魔王は永き眠りにつく魔族達を取り込んだ。


それは本来ならばありえないことを可能にした。


いかに魔王になろうとも、その本質は精霊。

精霊は実体のない魔力の塊。自然そのもの。

身体を持つなどありえない。


強い魔族達の身体は、魔力の塊である精霊に適合した。本来は交わることのなかった存在同士。それがこの奇跡を可能にした。


膨大な魔力を宿す強靭な身体。

その身体を新たな依代にした魔王は、湖の外へと1歩を踏み出した。

依代を写したとはいえ、魔王は湖の精霊。湖の近くから離れようとは思わなかった。


前代未聞の神秘の存在は、上位の精霊しか使えぬ『領域』を本能のままに使用した。

精霊は領域内では無類の力を誇る。

領域など関係無しに超次元の存在である魔王が使った場合、それは神に比肩すると言っても過言では無い。


湖を己の領域とした魔王は、湖から川が流れていることに気がついた。



心のない魔王の中に、好奇心が芽生える。



好奇心という『心』に気がついていない魔王は、好奇心のままに川に沿って領域を広げた。

見たことのないものは溶かして取り込み、ただひたすらに領域を伸ばした。


領域を広げる過程で取り込んだモノは魔王の糧となり、魔王をより強大な存在へと変貌させた。

力が増せば領域の拡大上限が上がり、領域が拡大すれば魔王の力が増す。


もはや何者にも止められない。


やがて一つの川がとある場所に辿り着く。


果てしなく続く地平線。

全ての生命の母と言われる場所。

解き明かせない神秘。


魔王の心に『感動』が芽生えた。


そしてその瞬間、水の魔王の呼び名が世界に神託として告げられた。

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