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六十五話 【冬・聖夜祭編】断罪の時②

「そんなに言うなら、確固たる証拠があるのかな。パトリシアがカレン嬢にしたという嫌がらせの証拠が」


「カレンの証言があるんだぞ! それだけで十分、疑いようのない事実だ!! オレはカレンを信じている!!」

 ブレントはサディアスの態度が気に喰わなかったのか、先程よりさらに苛立っているようだ。


「正気? 十分なはずないだろう」

「証拠なら、ボロボロにされた教科書やカバンがあります!!」

 カレンがすかさず主張したが、サディアスはそれを一蹴する。


「そんなもの、いくらでも自分で偽装できる。公平に状況を把握するには第三者の目撃情報じゃないとね」


「ならばおれが証言する!! カレン様はパトリシア嬢からの虐めにより、陰で涙を流していた。それをおれは何度も見ている!! 皆、騙されるな!! その女は、聖女の名を偽った性悪女だ!!」


 いつものカレン親衛隊男子生徒が大袈裟な身振り手振りでそう主張を始めると、サディアスは彼を冷たい目で一瞥した後、指を鳴らした。


 すると、どこからか黒装束の男が現れる。


「な、なんでノワールの部隊のヤツがっ」


 その姿を見て王家の隠密部隊だとブレントはすぐ理解したようだった。


「彼はパトリシア付きの護衛だよ」

「どういうことだ?」

「パトリシアは王太子の婚約者。ブレントに護衛が付いているように、彼女の身の危険を案じ学院祭の前あたりからずっと護衛を付けていたんだ」


 それはパトリシアも初耳の事実だった。


 そういえば夏頃に嫌がらせを受けていたが、サディアスにそれを話した次の日からぱったりと嫌がらせがなくなった。それは護衛に守られていたからだったのか……


「だからなんだって言うんだ!!」


「まだ理解できない? パトリシアがカレン嬢に陰湿な嫌がらせをしていたとして、つねに護衛についている彼が知らないはずない。君、パトリシアは彼女になにかした?」


「いいえ。そちらのご令嬢がおっしゃるような行動は一つもありません」

 サディアスの問いに感情のない声音で男が答える。


「そ、そんなのウソ!」

 カレンはそう言うが、彼女の言葉を信じているのはこの会場で、ブレントしかいなかった。


「彼は王に忠誠を誓う者だ。嘘をついてまでパトリシアを庇ったりはしない」

 サディアスの言葉に今度はブレントが唖然としながら青い顔をしているカレンへ視線を向けた。


「カレン、どういうことだ?」


「そんな……わたしを信じてブレント! パトリシア様は、ブレントと婚約破棄したくないからって裏で手を回して……こんなことまでして、わたしを陥れようとしているの!!」


「随分と往生際が悪いようだけど、残念ながら裁かれるべきは君の方だ」

 必死にパトリシアの悪事を訴えるカレンをサディアスが諌める。


「どうして、サディアス様はわたしの味方じゃないの?」

「味方じゃないよ」

「そんな……いつも、あんなに優しくしてくれてたのに!!」

「特別優しくした覚えはないけど……君と適度な距離を保っていたのは、君をただ監視するためだ」

「な、なにを言って……」


「この国で自分が聖女だと偽った者は罰せられることを知らないのかな」

「…………」

 その言葉を聞いた途端、カレンはぴたりと黙り込んだ。


「カレンが裁かれるだと?」

 ブレントは呆然と呟く。


「カレン・チェンバレン伯爵令嬢。君に偽物の刻印を刻んだ彫師を見つけた。締め上げたらすぐに白状したよ。ただ……詳細を聞く前にその彫師は、何者かの呪いによって急死したけど、ね」


「そ、そんなの、わたし知らない。無関係だもん!」

「うん。無関係かどうか、ハッキリさせるためにも、君の身柄は確保させてもらう」


「ちがっ、わたしは悪くない! わ、わたしだって、本当はこんなズルしたくなかった。でもっ、刻印が出るはずの出来事が過ぎてもなにも起きないから、不安でっ」


 カレンは青ざめ震える声で、またなにかブツブツと言っている。


「話は後でゆっくり伺おう。まだまだ余罪もあるだろうし、ね」

「いやっ……イヤイヤ! お願い、サディアスさま、カレンを助けて?」


 カレンが上目遣いで腕に縋り、うるうるとした瞳で訴えかけてきても、サディアスは容赦なくその手を払い彼女を捕まえるよう隠密部隊に合図をおくった。


 どこからか黒装束の男たちが続々姿を現す。


「ああ、あと毎回パトリシアに絡んでいた向こうにいる彼も、偽証罪の疑いで連れていけ」


「なっ、うぁあ!? や、やめてくれっ、ゆ、許してくださいっ」

 いつもカレンの肩を持ってパトリシアを罵っていた男子生徒も青い顔をして連行されてゆく。


「なんでっ……その部隊は、パトリシアを捕えるための部隊でしょ!!」

 金切り声を上げるカレンを捕まえようと伸びてきた男の手から逃れるように、カレンは叫ぶ。


「ブレント、助けて!!」


「カ、カレンは王太子であるオレの新たな婚約者だ! 手荒な真似は許さない!!」

 ブレントはカレンの叫びに応えるようにそう命令するが。


「ああ、ブレント。言い忘れていたけれど……王命により君は、王位継承権一位から外されたよ」


「は?」

「どういう、こと?」


 理解できないでいる二人の目の前に国王直筆の言葉が書かれた羊皮紙を取り出したサディアスがそれを掲げた。


 そこには確かにブレントの王位継承権一位を無効にする旨が記されている。


「これは……なぜ、だ……」


「お前は、王太子という立場に胡座をかいて、好き勝手しすぎたんだよ」


「そんなこと、ありえない……」


 あまりの衝撃だったようで、ブレントはその場に崩れるように膝をついたのだった。

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