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二十四話 義妹の恋の行方①

「お母様、どこかおかしなところはない?」

「大丈夫よ、いつもに増して可愛いわ」


 今夜はクレスロット城にて夜会が開催されるらしい。

 招待状が届いてからというもの、リオノーラとミアはずっと浮ついている。

 パトリシアがたまたま玄関の前を通ると、出掛ける前の最終チェックをしている二人を見かけた。


「きっと会場の誰よりリオちゃんが一番よ」

「うふふ、私と会うのサディアス殿下も楽しみにしてるかしら」


 今回の夜会は未婚で婚約者のいない上位貴族の御息女たちが招待されているらしい。おそらくサディアスも出席するだろうことから、リオノーラは気合が入っている。


 リアムは留学中のためこの家で今回招待を受けたのはリオノーラのみ。おかげでパトリシアは今夜もいつも通り秘密の特訓を行えるのだった。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 城に着いて通されたのは磨き抜かれた大理石の床に大きな絵画が描かれた高い天井のある会場だった。給仕たちが配っているウェルカムドリンクはノンアルコールだが、それ以外は大人な雰囲気が漂っている。


「今日の夜会ってサディアス殿下の婚約者探しを兼ねているというのは本当なのかしら」

「きっとそうよ。私、お父様からアピールしてくるようにって念を押されたもの」


 会場にはリオノーラと同じぐらい着飾った令嬢たちが沢山いた。

 やはりみんな思う事は一緒のようで、他にも良家のご子息たちがいっぱい招待されているが、サディアスとお近づきになりたいライバルは多いようだ。


「はぁ、でもサディアス殿下かぁ。私、ずっとブレント殿下をお慕いしておりましたの」

「バカね。王妃にはなれなくても、第一王子の正妻になれるのよ。私は本気でいかせてもらうわ」


 親に言われているが乗り気じゃないご令嬢もいれば、サディアスをものにしようと闘志を燃やすご令嬢もいるみたいだが。


(ふん。皆、サディアス様のことなにも知らないくせに)


 リオノーラの中のサディアスは令嬢たちが噂するような冴えない王子なんかじゃない。彼の素顔がとても素敵なことも、本当は根暗じゃなくて心優しい人なんだということも、この会場で知っているのは自分だけなのだ。


「あ、サディアス殿下よ」

「さすが存在感が薄い……気付かなかったわ」


 彼女たちの視線の先を辿るといつも通りの彼の姿があった。華やかな良家のご子息たちに紛れ、一番目立たない位置でポツンとしている。どこにいても人の目を惹くブレントとはまさに対照的だけれど。


「サディアス殿下、お久しぶりです」

「お会いしたかったですわ。中々、こういった場でお目に掛かれないから」


 顔見知りと思われるご令嬢たちが、すかさずサディアスの元へ集まりだす。本日は同世代の御息女たちしかいない無礼講の夜会。声を掛けやすい雰囲気なので、いつもより皆積極的のようだ。


 こういった公の場に出席するのはいつもブレントのみで、サディアスが出席することは珍しいから余計かもしれない。


(ようやく会えた……)


 一目惚れしたあの日から何度か顔を合わせる機会はあったけれど、望み通りの進展がなかったリオノーラは、今日こそはと迷いなく彼の元へ向かった。


「お退きになって!」

 サディアスに群がるご令嬢たちをぐいぐいと掻き分けてゆく。

「なによあなた!」

 文句を言いたげな令嬢もいたが、侯爵令嬢であるリオノーラの顔を知っているものはぐっと言葉を飲み込んでいた。


「サディアス様!」

 そして満面の笑顔でサディアスの前に飛び出すと、彼は少し驚いた顔をした後。

「御機嫌よう、マクレイン侯爵令嬢」

 口元に笑みを浮かべそう答えてくれた。


 リオノーラと名前で呼んでくれない事が若干不服だったが、挨拶を交わせた喜びの方が勝る。


「ずっと、ずっと、お会いしたかったですわ。わたくしっ」

「ねぇ、サディアス殿下、先程のお話ですけど」

 瞳を輝かせたリオノーラを遮るように一人の令嬢が前に出てきた。


 ムッとして顔を見るとそれは、自分より四つ年上の辺境伯令嬢だった。何度かパーティーで顔を合わせた事があるけれど、高飛車な態度があまり好きじゃない。


(なにこの人、わたくしのお家より爵位が下のくせにでしゃばって!!)


 当然サディアスも困っているはずだと思ったが、彼は辺境伯令嬢に対しても口元に同じ笑みを浮かべたまま変わりなく対応していた。


「サディアス様、今度ある学院の聖夜祭ぜひ私をパートナーに選んでいただきたいですわ」

「なっ!!」

 辺境伯令嬢の言葉を聞いてリオノーラは一気に気色ばむ。


 聖夜祭といえば学院の中でも選ばれた者しか参加できないラグジュアリーなパーティー。

 誰もが憧れ参加者に選ばれることはステータスにもなる。


「ずるいわ、私も聖夜祭に参加したいです」

「わたくしだって」

 猫なで声のご令嬢たちが我先にと群がってくる。先程までブレントが良いと言っていた令嬢たちも参加したくて必死のようだ。

 そんな彼女たちの態度が余計にリオノーラをイラつかせる。


(なんなのこの人たち!! こんな方たちと一緒にされたくないわ!!)


「サディアス様! パートナーは、もちろんわたくしがっ」

「皆さん、すみません。もう聖夜祭に行く相手は決まっておりますので」

「っ!?」

 サディアスの言葉に騒がしかった令嬢たちが大人しくなりあたりがしんと静まり返る。


「そんな……いったい、相手は誰ですの!?」

 リオノーラが呆然としている間に、ワナワナと震えながらも先程の辺境伯令嬢が問いだたそうと詰め寄った。


「相手は……秘密です」

「え~、気になります~!!」

 腕にしな垂れかかる辺境伯令嬢に苦笑いを浮かべるも、サディアスは相手の女性が誰であるか公言しなかった。


(……もしかしたら、相手なんていないのかも。そうよ、そうに決まってるわ)


 今は場を治めるためにこう言っているけれど、あとで二人きりなった時に自分を聖夜祭に誘ってくれるに違いない。


(だって、わたくしたちは運命の相手なんだから)


 そう信じて疑わなかったリオノーラは、ご令嬢たちがサディアスに詰め寄る中、彼と二人きりになれるタイミングを見計らって大人しくしていることにした。


(絶対に、サディアス様のパートナーの座を射止めてやるんだから)

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