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十三話 王子たちとの顔合わせ③

「うふふ」

 リオノーラは浮かれた足取りで城内を歩いた。

 左胸に聖女の徽章を着けているだけで、城内の大人たちが敬う様に頭を下げてくる。

 普段なら入れない場所を歩いても何も言われない。


(これがあれば……サロンが始まる前にブレント殿下を見つけなくちゃ!)


 二つ年上のブレントはリオノーラにとって、いや同世代の令嬢みんなの憧れの的だ。

 パーティーで会えても、すぐに沢山の令嬢たちに囲まれリオノーラもその他大勢にしかなれなかった。


 けれど今日は違う。この徽章があれば抜け駆けできる。一度ブレントの目に留まれば、気に入られる自信がリオノーラにはあった。

 根拠は母によく言われるから。リオノーラは誰よりも可愛い天使のような存在なのだと。


(会場に着く前にブレント殿下を見つけて、わざとぶつかっちゃお!)


 そして「大丈夫?」と手を差し伸べてくれる王子を想像し顔がにやけた。その時。


「きゃあ!?」

 曲がり角で誰かにぶつかって、勢いよくシリモチを着いてしまった。


「いたたたっ」

「大丈夫ですか?」

 お尻が痛くて「大丈夫じゃないですわ!」と声を荒げそうになったけれど。


「っ!?!?!?!?」

 目の前で手を差し伸べる少年を見た瞬間、リオノーラは息を呑んだ。


(この方は……どなた?)


 頭が真っ白になりながら少年の手を取り立ち上がる。

「すみません、お怪我はありませんでしたか?」

「え、ええ……大丈夫、ですわ」

 緊張で声が震える。こんな経験は初めてだ。


「なぜ、こんなところに?」

 ここは王族の生活区域ですよと言われ、リオノーラは慌てて言い繕う。

「サロンに参加する予定が、迷子になってしまったんですの」

 心細げに上目遣いで訴えると。


「奇遇ですね。俺もこれからそこへ向かう予定だったんです」

 そう言いながら少年はぶつかったはずみで床に落ちていたメガネを拾いかける。


「あなたはっ!?!? どうして……」

 そこでようやく、リオノーラは自分が今誰と会話をしているのか把握し動揺した。

 きっと彼の素顔を知れば、誰だってそう思うだろう。どうして、と。


「今見たことは、内緒ですよ」

 二人だけの、ね。と人差し指を唇に添えられた瞬間、噴火するんじゃないかと言うほど、リオノーラの顔は真っ赤になって湯気が上った。


「よかったら会場までエスコートさせてください。可愛らしい聖女様」

「え……」


 そこで自分が聖女だと勘違いされていることに気が付いた。

 胸元に徽章を着けていたせいだ。けれど。


「喜んで! お供しますわ。サディアス殿下」


 聖女じゃないことは、彼が自分に夢中になってから告げればいいかと思った。

 そうすれば聖女じゃないと知っても、彼は自分を妃に望んでくれるはずだ、と。


 リオノーラはすっかり舞い上がり、生まれて初めての一目惚れをしたのだった。

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