妹リリーのステータス確認
「リリー。ちょっとこっちに来きてくれる?」
「きゃははは。やーだー」
リリーはとっても楽しそう。
今日は着替えをさせるだけでも一苦労だった。
機嫌がいい日は特に言う事を聞いてくれない。
「お願いよ。ちょっとだけ、ね」
「どうしようっかなー」
先日リリーの光適性の “仮決定の書” を担保にS級冒険者を雇った。
この “仮決定の書” を “認定書” にすれば、教会から冒険者ギルドにお金が渡る。
その為に、白神官様がこの村に派遣されると、そう聞いていたのに。
なのにまさか我が家に教皇様が……。
代わりに偶然こちらに向かっていた、あの教皇様が来るなんて。
役場の人から手紙を渡され、手の震えが止まらない。
だって教皇様は国王様より偉いお人なのに!
失礼が無いよう徹底的にお掃除をしなくては。
やることがいっぱいだわ。
「ほら、『ステータス』だけでも言ってみて。『ステータス』って」
「やだー。言わないよーだ。きゃはは!」
それなのに、家の中を逃げ回るリリーを捕まえることすら出来やしない。
リリーに『ステータスフルオープン』を教えたくても、ちっとも言うことを聞いてくれなくて。
もう、本当にどうしたらいいの。
頭を抱えて泣きたくなる。
「ちょっとまって。『ステータスフルオープン』って」
「きゃはははは。やだよーだ」
はぁ。こういう時、マリーに任せればどうにかしてくれたのに……。
今になって、マリーのありがたみがよく分かる。
マリーを我慢させる方が楽だったから、だからリリーを甘やかした。
今更後悔しても仕方がない。
「もう。言わなきゃご飯抜きよ? 『ステータス』って。ね?」
「どうしようかなー。えへへ。ご飯くれたら言ってあげるかもー」
まるで私が困るのを見て、楽しんでいるようだわ。
はぁ。
満足そうにご飯を手でぐちゃぐちゃにして食べているリリーを見て憂鬱になる。
まだ5歳だし、これからきちんと育てれば……。
「リリー。ご飯を食べ終えたら練習よ」
「んー? あとでー」
「さっき約束したじゃない」
「へへへー。眠くなるかもー」
結局、ご飯をあげても言えるようにはならなかった。
どうしたらいいの。
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あれからひと月が経ち、我が家に教皇様と大勢のお付きの白神官様、外には聖騎士団の一行と、思った以上に大掛かりの来客でびっくりした。
「そんなにかしこまらんでも良いわい。この子が “光適性” の子じゃな」
「はい」
教皇様はとても優しそうな目で、向こうで遊ぶリリーを見る。
言わなくちゃ。
「名前はリリーで間違いがないか?」
「はい。間違いありません」
教皇様は嬉しそうに笑い、リリーの目線まで腰を落とした。
目の前で膝を突く教皇様に、白神官様達が慌ててる。
「こんにちは。リリー」
「……」
リリーは教皇様に目を向けると、何も言わずに私の後ろに逃げて来た。
不安そうに私の手を握るリリーを、私はそっと抱き寄せる。
「ふぉふぉふぉ。すまんのう。怖がらせるつもりは無かったのじゃが」
どうしよう、ちゃんと言わなくちゃ。
怖くて必死に頭を下げる。
「申し訳ありません。あの……。実は……この子『ステータスフルオープン』が言えなくて……」
「なぁに。幼子じゃ、珍しくもないわい。ほれ、アレを」
教皇様がそう言うと、近くにいた白神官様が札のようなものをリリーに押し当てた。
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リリー 女 5歳 緑適性
Lv.1
HP 10/10
MP 5/5
光属性Lv.1
加護
光の精霊
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