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聖女の加護を双子の妹に奪われたので旅に出ます  作者: ななみ
◆書籍化で余ったSS

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結婚式の後

「まだ目を開けるなよー」

 ハートさんが目を瞑る私の手を引いて、新居の前まで連れて来た。彼の声はとても楽しそうに弾んでいる。手続きに忙しかった私の代わりに、すべての手配してくれた。家の場所も家具も小物も、全部丸投げだったのだ。


「はい! 目を開けて、マリー」

「わぁ! 綺麗な色!」


 そこには白い壁にターコイズブルーの玄関扉が街灯に照らされていた。表札代わりの玄関の色は、私の貰った指輪と同じ色。そして私とハートさんの瞳の色だ。


 建売のように周りの家とあまり変わらない石造りの二階建ての家は、周囲の家に溶け込んでいた。聖女の家がここにあるとは誰も気づかないだろう。両隣は聖騎士家族の家なので、ご近所付き合いは気楽そう。この辺りは、教会関係者の家が多いそうだ。最初は郊外にある高級住宅特区の大きな屋敷と言われたけれど、おじいさまの家から歩ける距離ではなくて断ったのだ。


「お隣はオレンジとピンクで正面は朱色だろ? うちだけ目立つ気もしたんだけどさ」

「いえ、この色です、私たちの色は。でしょ?」

 指輪を見せつけると、ハートさんはその手を引いて中に入った。

「マリー」

 

――生まれて初めてキスをした。


「すまない。どうしても我慢できなくて」

「いえ、その。初めてのことで驚いちゃって。でも、嫌じゃないし、謝らないでください」

 いやぁ、私もとうとう大人になってしまった。これが私のファーストキスなんだ。なんか感動。前世でも飼っていた犬としか、したこと無かったし。いや、あれは口に突撃されただけか。


「なぁ、もう夫婦だし、それやめないか?」

「あ、すみません! 何か失礼なことでも……」

「違う、違う。そうじゃなくて。リリーには砕けて話しているだろ? それにこれからは『ハート()()』じゃなく『ハート』と呼んで欲しい」

 ハートさんは両手を振りながら慌てて否定して、照れたように頭を掻いた。


「はい……じゃなくて、うん。ハート……。分かった」

 うぉー、めっちゃ話しづらいし、めっちゃ照れる。キスより照れるかもしれない。

「ありがとう。特別に親しい感じがして、リリーが羨ましかったんだ」

 羨ましい? なんか新鮮。ハートさん……じゃなくてハートがとても身近に感じるなぁ。

「うふふ。もっと早く言ってくれたら良かったのに」

 彼は姿勢を正して私の手を取った。

「さぁ、お姫様。ルームツアーにご案内しましょう」


 今いるリビングは、玄関扉より薄いターコイズブルーの壁紙にベージュの木の床。家具もソファーも真っ白で、本当にお姫様のお部屋みたい。意外にハートの趣味は乙女かも。

「この白い花瓶はノーテさんからの贈り物。このオレンジの花はカトリーナとエヴァスからだ」

 テーブルの中央に置かれた真っ白な陶器の花瓶は、機能的でシンプルで、まるでノーテさんのよう。寒色の部屋に映えたオレンジは、カトリーナの髪のように綺麗だった。


「この部屋にピッタリね」

「では姫様、ダイニングに移りましょうか」

 玄関側とは反対の白いドアを開けるとそこは、白い部屋を埋め尽くす大きな木のダイニングテーブル。椅子は六脚並んでいた。


「ははは、二人にしては大きすぎるというか……」

「俺も言ったんだけどさ。シドさん……じゃなくて親父とガインさんが拘って作ったんだよ。ここの装飾が凝っているだろ?」

 ハートは「見て、見て」と側面を覗き込んだ。

「あ、これと同じ!」

 私は初魔獣討伐で貰った一角うさぎのストラップを取り出した。アラベスクっぽい模様が美しい。

「ああ、俺のも同じだ」

 え? それシルバーウルフの牙じゃん。初魔獣でA級魔獣? ……深く考えるのはやめておこう。


「そしてこの奥がキッチンだ。狭いけど、二人暮らしなら十分だろ?」

「収納も充実してるし、この扉の色も玄関と同じで素敵!」

「そうそう、同じ色に揃えたんだ。白いキッチンに映えると思って」

 私は扉を開けて調理器具を確認する。鍋やボウル、食器など、最低限はあるようだ。


「このスパイスたちは?」

「ああ、それはお爺さんから俺への贈り物。スイーツだけでなく、料理も作れってさ」

「おじいさまが? ははは。私も料理の腕を磨こうかな」

 料理好きなおじいさまのチョイスなら間違いないな。


 続いてバスルームへ。真っ白な大理石の壁に大きな白いバスタブ、それ以外に何もない。

「シンプルですね」

「ああ、清潔だろ? ここはフェルネットとテッドに任せたんだ。そのバスタブは魔道具で、自動で清掃されてお湯が張られる」

「へぇ。そんな魔道具があったのですか……」

「らしいな。貴族の間で流行っているそうだ」

 なるほど。おぼっちゃまコンビならではなのね。

「キャンドルとか並べたら素敵かも」

「ああ、綺麗だろうな。さて姫様、次は二階へご案内しましょう」


 階段を上がると真っ直ぐに廊下があり、両脇と正面に白いドアがあった。

「両脇の部屋は今のところ客間だな。子供が出来たら子供部屋に。俺たちの寝室は正面だ」


 ハートが突き当りのドアを開けると、薄いグレーの壁紙の部屋だった。高い位置に横長のスリット窓が付いていた。夜が明けたら朝日が入って綺麗だろうな。

 部屋の中央に大きな白いベッドがあり、その両側には真っ白なナイトスタンドが置かれていた。


読んでいただきありがとうございました。

本編完結済みですが、書籍化で余った数本のSSがストックあります。

ぜひ読んでいただけると嬉しいです。

詳細は活動報告をお読みください。

ブックマーク・評価・いいねもよろしくお願いいたします。

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