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聖女の加護を双子の妹に奪われたので旅に出ます  作者: ななみ
第七章 家族編

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リリーの大切な人

「なんの用だ?」

「すみません。至急のご報告が……」


 まだ日が昇る前の早朝に、ドアの方からガインさんと女の子の声が聞こえた。

 災害派遣かと寝巻の上にガウンを羽織って部屋から出ると、フェルネットさんが制服に着替えながらやってきた。


「ドナ!」


 リリー担当の黒神官だ。

 春先とはいえ早朝はまだ冷えるのに上着も着ていない。


「一人なの? 危ないじゃない。どうしたのですか?」

「朝早くに申し訳ございません」

「いいから中に入って。寒かったでしょう?」


 彼女は「いえ」と恐縮しながら部屋の中に入ってきた。

 おじいさまが毛布を抱えて戻って来ると、椅子に座らせたドナを包みこんだ。


「リリー様から大至急の伝言です『マリーに石を投げた男たちが何か企んでる。近くの森にいるはずだ』と」


 私は眉を(ひそ)めてみんなを見回した。

 すると師匠が前に出て、ドナの目線に合わせて(ひざ)を突く。


「お嬢ちゃん。もう少し、詳しく説明してくれるか?」


 ドナが言うにはリリーが聖騎士同士の会話や、盗み見た日誌や書類、運動場で聞こえてきた監視達の会話から推理したという事だった。


「何の根拠もないじゃない」


 私が呆れてそう言うと、ドナが必死に首を振る。


「聖騎士もそう言って取り合わなかったんです。でも昨日の夜に『監視班が男たちを見失ったらしい』と。それで今朝、心配で早く起きた私にリリー様が……」


「監視班が見失った?」


 フェルネットさんの顔が厳しくなった。


「はい。リリー様はおっしゃっていました。『私には分かる。恨みを持つ者の気持ちや行動が』と。そして『彼らが監視をまいたなら、何か事を起こす気だ』と」


 リリー……。


「フェルネット。テッドを連れて森へ行け。シドさんとハートはモーラス司教様に報告を。俺とマリーは幽閉棟に行くぞ」


 それを聞いたガインさんが素早く指示を出す。

 私は着替える為に急いで部屋に戻った。


 玄関が閉まる音がしたので、着替えを済ませたフェルネットさんたちが先に出たみたい。


「俺たちも急ぐぞ」


 着替えが終わってリビングに入ると、ハートさんたちも家を出た後だった。

 ガインさんとおじいさまの横で、ドナが不安そうに座っている。


「馬車を待つより直接歩いたほうが早いな」


 ドナと一緒に私たちは早歩きで教会に向かった。


 ----


「マリー! 無事で良かった!」


 リリーはホッとした顔でへたり込んだ。

 へたり込みたいのはこっちだよ。


「リリー様は脱獄しようとしたんですよ。なので私があんなに朝早く……」


 リリーはドナに告げ口されて、気まずそうな顔をする。


「私の命なんかどうでもいいの! マリーを守る為だもん! もう大切な人を失いたくないの!」


「リリー。私もリリーが大事なの。だから自分を大切にして」


 リリーは「……分かってるってば」と口を尖らせて不服そう。

 本当に分かっているのか問いただしたくなる。


「ちゃんと手順を踏んで神官に伝え、俺たちに伝言を寄越したのは偉かったぞ」


 ガインさんがそう言って、リリーの頭をゴリゴリ撫でた。


「そうでもないし……。えへへ」


 リリーは褒められることに慣れていなくて、いつもああやって気まずそうにする。

 でもなんだか嬉しそう。


「ふふん。聖女の妹の私ですら、犯罪の未遂の疑いで一生幽閉されるのに。あんなゴミなんか、首を切るにも値しない。魔獣の餌で十分なんだから」


 相変わらず口は悪いけど。


「ドナもお手柄よ。リリーの脱獄の手伝いなんかしたら、大変な事になっていたのだから」

「ありがとうございます」


 ドナは嬉しそうに微笑んだ。


「で? なんでリリーの話を無視したんだ?」


 ガインさんが厳しい顔を聖騎士に向ける。


「村を出てからは監視が付いたので」「ただの村人ですし、見失っても……」「それに、聖女暴行と王都追放のステータス付きですし」


 聖騎士たちは各々(おのおの)に言い訳をしていた。


 聖騎士の言い分はもっともだ。

 所詮は村人。ステータス付きじゃ、私に近付く事さえ出来ないだろう。


「なるほどな。お前たちの言い分も一理(いちり)ある。今後は、聖女警護隊の俺たちに報告を上げてくれ」

「「「はっ」」」


 リリーを監視する聖騎士さんも大変だな。

 だけどガインさんが言う通り、報告を上げるべきだった。


「ほーら! だから言ったじゃない! お義父(とう)さん、もっと言って!」


 リリーは勝ち誇ったように(あご)を上げて、聖騎士の前で仁王立ちになる。


「リリー。あんまり威張っちゃだめだぞ」

「はーい」


 その態度を(とが)められてもリリーは満足顔だ。

 リリーが無茶しないでくれて本当に良かった。


 ----


 私たちが幽閉棟を出ると、モーラス司教様の側近たちが重苦しい空気で待ち構えていた。


「司教様が執務室でお待ちです」


 厳しい顔をした側近たちの後を、私たちは黙って付いて行く。

 何かあったのかな……。


 部屋に入るとフェルネットさんとテッドさんが既にいて、先に行った師匠とハートさんも一緒にモーラス司教様と楽しそうに談笑していた。


「遅かったねー」


 笑顔のフェルネットさんが片手を上げる。

 隣でテッドさんは苦笑いをしていた。


「え? もうですか?」

「もちろん。すでに引き渡したよ」


「何の罪で、ですか?」

「聖女の暗殺計画で」


 聖女の暗殺計画……。


「本人たちは認めているのですか?」

「うん、ずさんな計画だけどね。本気で暗殺を(たくら)んでいたらしいよ」


 自分がその憎しみの対象となると、意外に(へこ)む……。


「マリー様。もう二度と、彼らに(わずら)わされることはありませんので、ご安心を」


 モーラス司教様はにこやかな笑顔で、きっぱりとそう言った。


 流石にこれは仕方がない。

 あの子供が一緒にいなかったのが不幸中の幸いだ。


「リリーのお手柄だ。何も考えずに喜んでやれ」


 ガインさんがそう言って、私の肩に手を置いた。


 そうだ。リリーが私の為に……。

 リリーに『大切な人』って言って貰えたことが、今になって心にしみた。


読んでいただきありがとうございました。

ブックマーク、評価、いいね頂いた方、感謝です!

誤字報告、本当に本当にありがとうございます!!


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― 新着の感想 ―
作者はクソ妹に思い入れがあるのか、かなり読んででストレスがたまった
[良い点] 1.更新ありがとうございます。  リリーの悪行は許されないけど、リリーが反社会勢力に引き込まれて捨て駒にされないだけでもマシです。 [気になる点] 2.仮にリリーが裁判で人を寄せ付けない…
[一言] 最初の頃のリリーは本当にどうしようもない子だったけど少しずつ変わっていくリリーが可愛いですね 彼女や両親がどこで何を間違えてしまったのか、もうどうしようもないけどこれから少しでもリリーとマリ…
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