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聖女の加護を双子の妹に奪われたので旅に出ます  作者: ななみ
第七章 家族編

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プロポーズの返事

「マリー。そろそろ夕食だけど、遅いからここでいいよな」


 不意にハートさんが私の横に立ち、研究机に手をついた。


「ああ、もうそんな時間。いつの間にか部屋に明かりまで……」


 既に部屋には明かりが(とも)り、窓の外は真っ暗だ。


 しばらく待てば、黒神官が御用聞きに来てくれる。

 ここで食べて帰るなら、慌てることもないし。


「黒神官はさっき来たんで頼んでおいた。マリーの好きな肉料理にしたから」

「あはは。それもですか? ありがとうございます。全く気が付きませんでした」


 あれから私はガインさんの身を守る何かをと、ヘンテコな防具を試作しては粗大ごみを量産していた。

 これは私の自己満足。気が済むまで何かしないとおかしくなりそうだったから。


「ああ、気にするな」


 ハートさんはそんな私に何も言わずに付き合ってくれる。


「薬草を使った服とか出来たら、HPやMPが回復し続ける防具とか出来そうなのに。ふふ。流石にそれは無理でした」

「ははは。マリーの発想は面白いな」


 ハートさんは楽しそうに明るく笑いながら、いつも読んでいる本をバッグにしまった。

 なにげなくその本が目に留まる。


「ハートさんはいつもどんな本を読んでいるのですか?」

「戦術本だよ。戦況パターンを考えていると、あっという間に時間が過ぎる」


「へぇ……。とても面白そうですね」


 それからハートさんは、難しい戦術の話や戦い方を色々と話してくれた。


 だから瞬時の判断が早いんだ。

 ガインさんも最近は、ハートさんには敵わなくなったと言ってたし。


 普段無口なハートさんがこんなに楽しそうに話すなんて。

 そういえば、稽古の時も楽しそうだったな。きっとこういう話が好きなんだ。


 もっとハートさんの事を知りたいな。


「ハートさん」

「んん? どうした?」


 ハートさんが優しい目で私を見る。


「私、ハートさんの事をもっと知りたいです」

「マリー……」


 ハートさんが少し()()けて「ありがとう」と微笑(ほほえ)んだ。

 先日のデートで気持ちを自覚してから考えないように過ごしていたのに、急にまたハートさんを意識してしまう。


「あ、あの……」


 トン、トン、トン。


「失礼します。お食事をお持ちしました」


 タイミングよく食事を届けに黒神官がノックした。

 助かったのか、助かっていないのかよく分からない。


「ありがとうございます」


 ドアを開けると黒神官が、ワゴンごと部屋に運び入れてテーブルに食事を並べてくれる。

 私がキッチンからお菓子を持って戻ってくると、すでに黒神官が帰った後だった。


「あー。お菓子を渡しそびれました」


 私が残念な顔をすると、ハートさんが目尻を下げる。


「次は俺が用意しておくよ」


 そして私たちは夕食を取りながら、戦略の話や私のヘンテコ防具の失敗談で笑って過ごした。


「もう少しやっていくか?」

「いえ。片付けたら帰ります」


 ハートさんがワゴンに食器を乗せて廊下に出して、私は棚に薬品類をしまって鍵をかける。


「えっと。薬品棚よし、キッチンよし、机、テーブル、窓の鍵よし!」


 私は声に出して指さし確認をした。


「ふふふ。マリーのそれは、何度見ても面白いな」


 指さし確認は珍しいのか、ハートさんはいつもこうして私を笑う。


「いいのです。これが一番なのですよ。確認漏れは、ハートさんが気が付きますし」

「確かにな。俺を頼ってくれて嬉しいよ」


 そう言いながらもクスクス笑ってるし。


「少し歩いて帰りませんか?」


 いつもは馬車で帰るのだけど、なんとなく歩いて帰りたくなった。

 まだ、ふたりでいたいような、なんていうか。


 ハートさんが目だけで(うなず)いて、正門前で馬車を断ってくれる。

 私はそれを見ながら考えた。


 フェルネットさんはいたずら好きのお兄さん。

 ガインさんは豪快でおおらかなお父さん。

 ちょっぴりおちゃめな師匠は親戚のおじさんって感じかな。


 ハートさんは?


 愚痴を聞いてもらったり、弱音を吐いたり、泣いたり笑ったり。

 ハートさんは私のすべてを受け入れてくれて……。


「おまたせ」


 ゆっくり戻って来たハートさんがふわりと微笑んだ。


「私でいいのですか?」


 ハートさんの目が揺れる。


「すみません、急に。そうじゃなくて……、私もハートさんのことが……」

「いや、いいんだ。それは先日の返事と思っていいか?」


 動揺する私の前で、ハートさんの顔は真剣だった。


「はい。よく考えまし……」


 ハートさんが私の腕を引き、人目もはばからずに抱きしめる。

 正門前の門衛が口と目を見開いていた。


「本当に、本当に……。家族になってくれてありがとう。絶対に大切にするから……」


 耳元で小さくささやくハートさんが、痛いくらいに強く抱く。

 家族……。ハートさんにとっての家族は特別なのに。


「妹は犯罪者ですよ?」


 確認の為にそう言うと、ハートさんは私を抱きしめたままフッと笑う。


「俺は孤児だ、心配するな。もう離さない」


 恐る恐るハートさんの背中に手を回すと、(くだ)けるかと思うくらいに抱きしめられてタップした。


読んでいただきありがとうございました。

ブックマーク、評価、いいね頂いた方、感謝です!

誤字報告、本当に本当にありがとうございます!!


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― 新着の感想 ―
門衛( ゜д゜)
(*ノωノ).。o○(なんでこんなとこでやるんですか!by門衛)
[一言] ガインさん、孫育てが待ってますよ!
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