強化合宿-ハートとフェルネット
「フェルネットは合宿中魔法禁止。今日の夕食を取ってこい。ハートはフェルネットの護衛な」
「「はい!」」
嘘だろー、魔法禁止って。
近接戦は苦手なんだよなぁ。
「大丈夫だ。俺が盾になる。まずは攻撃だけに集中しろ」
「あい」
ガックリ肩を落として歩いていると、ハートさんが背中を叩いて励ましてくれる。
ハートさんが護衛で助かった。
ガインさんに、この合宿で魔法に頼り過ぎず、戦える力を付けろって言われたけどさ。
僕は魔術師だから、カッコよく魔法でぱぱっと倒したいんだよなぁ。
でもマリーも頑張ってるし……。
「そもそも冬の山で魔獣って、簡単に見つかるのかな」
「待ってろ、索敵する」
ハートさんが歩きながら索敵を始める。
兄弟子が有能すぎてツライ。
僕は歩きながら索敵すると、酔うので絶対やらない。
ん?
ハートさんが僕の肩を叩き、遠くを指差す。
目を凝らしてよく見ると、一角ウサギだ。
素早くナイフを投げて……。
「流石にウサギだけじゃ怒られちゃうよね」
3匹のウサギを血抜きして木に吊るすと、ハートさんが苦笑いをする。
だよなぁ。
少し離れて、今度は自分で索敵を開始した。
これだけ血を撒いたんだ、あいつが来るはず……。
「ハートさん」
僕が指差した方向に、血の匂いに誘われたアイスワイバーン数匹が飛来する。
ふふん。あれなら文句ないよな。
あ! しまった!
今は魔法が使えないんだった!
魔法が使えたらあんなの余裕だったのにー。
下手に近づいて飛ばれたら詰むし、ナイフなんか投げてもこの距離じゃ弾かれる。
もー、どうすりゃいいんだよー。
ちらりとハートさんを見たけど、手を貸すつもりは無さそうだ……。
だよな。
せめて闇の隠密系魔法が使えたら、近接でも何とか行けそうなんだけど。
どう考えてもダメだ。
やっぱりこの方法しか思いつかない。
よし! ナイフ投げちゃえ。
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「おおお。大量じゃないか。すごいぞフェルネット!」
ガインさんが良くやったと褒めてくれる。
もう成人したし、マリーも見てるし、頭ゴリゴリするの恥ずかしい。
担いでいたウサギやアイスワイバーンを降ろすと、ハートさんが笑いながら僕を小突く。
「ガインさん。フェルネットを褒めるのは少し早いよ」
「はは?」
「おお? ちょっとあっちで詳しく聞こうじゃないか」
「あははは?」
僕的にはハートさんが護衛にいる利点を、最大限に活用したつもりだけど、やっぱり怒られた。
お前は人をうまく使う事だけは天才的だと。
確かにアイスワイバーンを全部倒したのは、ハートさんだけどさ。
呼び寄せたのも、囮になって逃げまわったのも、全部僕の作戦なのに。
翌日は隠密系魔法の使用だけ許されたので、喉元に一刀で狩れた。
魔術師に魔法禁止とか、剣士が素手で戦うのと同じだって抗議したら認められて助かったよ。
なんかガインさんの思惑通りな気もするけど。
でも冬に毎日肉料理が食べられるのは、僕のおかげだから。
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