順調に進む救助
「マリー。そろそろだ」
私はすっかりハートさんの胸に顔を埋めて寝ていたらしい。
仕事中に流石にこれは……。
肩を揺すられて自分の置かれている状況に眩暈がした。
「そうですか。ありがとうございます」
師匠の目が痛いけど、ガインさんも爆睡していたのでセーフってことで。
そんなガインさんもテッドさんにすぐに起こされ、そしてフェルネットさんを叩き起こしていた。
みんな上着を羽織り、私はコートを着て自分の薬の入ったカバンを斜め掛けにする。
「俺とフェルネットは現地の聖騎士と救助隊と合流する。シドさんは避難所の総指揮。ハートとテッドはマリーの警護だ。何かあったらシドさんに情報を回せ!」
ガインさんの命令に、みんなの顔が引き締まった。
馬車は徐々に減速して停止すると、外からドアが勢いよく開かれる。
「お待ちしておりました! 聖女様!」
辺りはすっかり真っ暗で、松明を掲げた白神官たちが私たちの到着を待ち構えていた。
「こちらに物資をお願いします」
神官が指定したのはキッチンスペースの近くだ。
彼らは私が出した回復薬や救援物資を手に、次々と散らばって行く。
凄い。
随分と手際が良くなっている。
「こちらの患者からお願いします。今のところ死者はいません」
「ああ。良かったです」
ホッとしながら全て取り出し終わると、壁の奥に案内された。
土魔法で作った個室には、小さな明かりの中で患者が数人横たわっている。
泥だらけの患者はひとりもいない。
「重傷者は彼らだけです。応急処置で聖騎士が、水魔法で洗浄しました」
どうりで。
災害派遣を何度も経験して、私も白神官達も成長していた。
「ここはもう大丈夫そうですね」
「はい。そろそろ聖女様も休憩なさっては?」
夢中で気が付かなかったけれど、キッチンスペースからはスープのおいしそうな匂いが漂っている。
料理も成長してるのかな……。みんながほっこり顔で食べていた。
まだ夜が明けるには時間があるし、なにかお腹に入れて仮眠でも取ろうかな。
そう思いながらも、私はガインさん達がいる上のポイントに行く道の前で足を止める。
「マリー。ダメだ」
ハートさんが私の肩に手を掛けた。
テッドさんも首を振る。
「ちょっと気になっただけです」
彼らはこうして危険な時だけ私を止める。
聖女の仕事をしている時は、危険でない限り何をしようが絶対に口を挟まない。
尊重され信頼されている事を、今更ながらに実感した。
でも……、ガインさん大丈夫かな。嫌な予感がする。
「嬢ちゃん。ちょっと頼む」
そこへ、師匠が聖騎士を引き連れて歩いて来た。
「魔力に余裕はあるか?」
「はい」
師匠は通常ルートから外れた山の中へ、ためらいもなく入って行く。
着いた先はいくつもの松明に照らされた山肌で、本当に何もなかった。
通り過ぎた土砂が山を削ったんだ。怖い。
時折カラカラと小石が転がり落ちてきていた。
「あれが見えるか?」
目を凝らして師匠が指した方を見る。
「この先に生命反応がある。土魔法で緩んだ斜面を固めてくれないか」
なるほど。
このままだと救助が出来ないんだ。
「ハートさん、テッドさん。協力をお願いします」
二人は黙って頷き、索敵を開始した。
私は出来るだけ山肌に近付くと、足元から徐々に固めていく。
「マリー。そこから右斜め上に人がいる。壁を作って保護できるか」
「はい」
私は指示された方向に、壁を作り、道を作る。
無心で魔法を操る私の肩を、師匠がポンと叩いた。
「ありがとう。もう十分だ」
二人の指示の下、どうにか安全な道を作れたみたい。
「流石だな。助かったよ」
師匠が目を細めて褒めてくれる。
聖騎士達はすぐに私が作った道を使って救助を始めた。
「生存者は順に馬車で下山している。嬢ちゃんは少し休んでろ」
私は避難所に戻り、聖女用の個室の簡易ベッドに寝転んだ。
みんなが働いている中で休むのは、なんとなく気持ちが落ち着かないな。
「ガインさん、大丈夫なのかな……」
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