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葬式も終わり、祖母の家に戻ってきた。
それからも忙しなく動く大人たちの目を盗み、祖母の部屋を覗いた。祖母の部屋の片隅に、書籍が数冊あった。そのどれもが植物に関するものだった。そうした中に花言葉の本があった。花の育て方に関する本がいくつかある中で、それは意外なものに思えて、私はその本を手に取った。パラパラと開いて見ていると、本の間からひらりと何かが落ちる。
拾い上げてみると、それは押し花のようだった。紙のように薄く、全体としては茶色に変色していたが、花びらに辛うじてあの青さが残っていて、それは勿忘草であることが分かった。どこかのページに挟んでいたのが落ちたのだろうか。そもそも、祖母に花を押し花にする趣味などあっただろうかと首を傾げる。
いや、これは違う。不意に、あの日のことを思い出し、最後に載っている索引のページから勿忘草が載っているページ数を確認する。勿忘草が載っているページには紙が挟まっており、更にその間に勿忘草が挟まっていた。
それは、あの日私が押し付けるように祖母に渡した勿忘草だった。挟まっていた紙の隅に、あの日の日付だけが添えてあった。
私には、それだけで十分に嬉しいことだった。
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