あぁん? お前、ワクチン様を信じて無いのかあ?
(* ̄∇ ̄)ノ 奇才ノマが極論を述べる。こんな考え方の人もいるのだ。
「なんでみんなワクチンを打ちに行くんだろうな?」
「それだけコロナが怖いのかもな」
先日、友人とワクチンについて話をした。ちなみに私も友人も今のところワクチンを打つつもりは無い。
「ワクチンさえ打てばコロナ前の世界に戻れるとでも思ってるのかもね」
「そんなのは、バブル期よもう一度とか、昭和に戻れたらなんて夢みたいなものだろ。バックトゥザフューチャーか」
「ビル&テッドの方が好きだ」
「しかしワクチンさえ打てばどうにかなる、なんてのは皆ワクチンのことをよく知らないゲーム脳なんじゃないか?」
「確かにゲームっぽい。そしてワクチン推進派も反対派も極論や陰謀論が出てくるとおもしろい。ワクチンを打つと不妊や流産するとか、ワクチンにマイクロチップが入っていて人を操るとかデマも出てくる」
「注射針を通れるのかマイクロチップ?」
「細いから無理、なので次に出てくるのがナノマシンだ」
「がんばれSF、現実の戯言の方がおもしろくなってんぞ」
インターネットの普及から、かつてはアンダーグラウンドのものであった陰謀論や誹謗中傷が表に堂々と出るようになってきた。デマやフェイクニュースもSNSで拡散される現代、情報の真偽の判断が重要にもなる。
「新型コロナウイルスのワクチン接種により、副反応が出た場合、国の予防接種健康被害救済制度で一時金4420万円が支払われる、なんていうのも酷い詐欺だと思うね」
「確かに、ワクチン接種して副反応の出たふりをしたら4000万となれば美味しい話だ。だが、現実はそうはならないだろう」
「ワクチンを打った後に障害が出ても、ワクチンが原因では無いってなった前例がある。HPVワクチンだ」
子宮頸がんの原因の約95%が、ヒトパピローマウイルス、HPVの感染が原因。
子宮頸がんワクチンは2013年に定期接種となったが、その後は副作用がマスコミで報道され、積極的勧奨の中止となった。
「HPVワクチンの副反応を訴えても、診断された結果がクララ病だとさ」
クララ病とはアニメ、アルプスの少女ハイジに出てくるクララをもとにした病名。
クララは足が動かないと思い込んでいるから立てない。このクララと同じように『ワクチンを打つと副反応が出る』と思い込んでいるから、副反応が出たように振る舞う心の病気がクララ病だという。
「機能性身体症状とも呼ばれてる。クララ病はワクチンの注射が切っ掛けで発症しても、ワクチンが原因の副反応では無く、もともとが心の病気だってことになる」
「ワクチンの注射は切っ掛けでしかなく、もともと心が病んでるから副反応のような症状が出た、と。偽薬効果みたいだな」
「だけど、その説明で被害者とその家族が納得できると思うかい? ワクチンを打つ前は普通に学校に通っていた。なのにワクチンを打ったあとは、四肢に麻痺が出る。水に触れると痛みを感じ風呂に入れなくなる。脳に障害が現れ、かけ算や割り算ができなくなって学校の授業についていけなくなる。記憶障害が出て親に向かって『あなたは誰ですか?』と問いかける。ワクチンの注射を打ったあとにこうなったとなれば」
「専門家じゃなければ、ワクチンが原因だと考えるのも当然か」
「それをワクチンの成分が原因では無く、もともと心が病んでいたせいだ、と診断されるわけだ。ワクチンの注射は切っ掛けでしか無く、いずれ他の要因でクララ病を発症してただろう、と言われる」
「ワクチンが原因で無いなら薬害にならず、ワクチンを作った奴にも、ワクチンを推奨した奴にも責任は無い、か」
「被害者から見れば原因は心でもワクチンでもなんでもいいから、医者なら治療してくれ、身体をもとに戻してくれ、となるのだけれど」
「副反応が起きて障害が出るかもしれない、と不安に感じる人ほどクララ病の発症リスクは高くなる」
「副反応を心配する人ほど、偽薬効果が出やすくなると」
「もしもクララ病が発症して計算障害や記憶障害に悩まされるようになったら、自分だったら今の仕事を続けられなくなるし、生活もできなくなってしまう。自分の暮らしを守る為にクララ病の発症リスクを抑えるには、ワクチンを接種しない方が良いとなる」
「それが、お前がワクチンを打たない理由か」
「なにせ自分はかつて、幻覚と幻聴に悩まされた境界性人格障害だ」
「なるほど、発症リスクは高そうだ」
ワクチンというのはギャンブルに近いものだろう。打てば病気にかからないかもしれない、代わりに副反応が出るかもしれない。リスクとメリットを比較し、メリットが多いと判断した方を選べばいい。
「自分の判断で打つと決めた人は、その判断を尊重されたければワクチンを打たないと決めた人の判断も尊重するべき、だと思うのだけど」
「自分は頭がいい、と思い込んでる奴は自分の判断は正しいがそれに同意しない他人の判断は間違ってる、と言うからな」
「わりとそんな人が多いのかもね。ここでどうかと思うのはワクチンを打つと決めた判断理由にも寄るということ」
「例えば?」
「例を出せば『ワクチンを打たないと仲間外れにされる』『ワクチンを打たないといじめられる』だからワクチンを打つ。こんな理由でワクチンを打つ人は同じ理由を他人に押し付ける。ワクチンを打ってないのにいじめられないなんておかしい。ワクチンを打ってない人はいじめられるべきだ。それが社会の常識だ、と」
「おかしな常識の押し付けが始まった」
「コロナが流行し始めたときは、家族がコロナに感染した人が自主退職するまで会社の中でいじめる。コロナ感染者の家に投石して窓ガラスを割る。家に落書きをするという事例があった」
「迫害と追放は歴史的に見て、疫病のときの古典的なソーシャルディスタンスだよな」
「次は同じことがワクチンで起きるかもね。ワクチンを打たない人は迫害してよし、追放してよし。ワクチンを打たない人には人権は無いと言い出すかもね。いじめの結果にワクチンの普及率が上がれば、いじめは日本の文化だ、という人が調子づいたりして」
「あー、いじめがあるから日本は世界に誇る治安のいい国だ。いじめが無くなったら日本の治安は悪化する。だからいじめは無くならないとか、世迷い言抜かす奴がいるな」
「自分や君みたいに、人の和とかどうでもいい、と考える人にとっては、仲間外れにされたくなければワクチンを打て、というのは説得力に乏しい」
「むしろ、できたばかりの新薬の実験台に自分からなりに行く奴の多い理由が分かった。賢人は理と義で動き、愚人は利益と恐怖で動かされる、か」
「ワクチンの普及率は六割程度で留まる見込み、と言うけれど、それぐらいでいいと思う。極端な話、ワクチンを打った六割が死んでも打たない四割は生き残る。ワクチンを打たなかった四割がコロナで死んでも六割が生き残る。どちらかが残れば全滅はしない」
「どちらか片方に100%傾いたら全滅の危険があると」
「という話を母親としたら、説教された」
「なんて?」
『ワクチンの効果とか副作用とか、そんなのはどうでもいいの。皆がワクチンを打てばコロナは鎮まると信じていて、皆が信じる想いが世界を変えるの。だから皆が信じてワクチンを打てばコロナは無くなる。信じる気持ちが大切なのよ。それを皆が信じていることにイチャモンつけるなんて、普通じゃないわ、この悪魔!』
「お前、悪魔だったのか。知らなかった」
「自分も知らなかったが、産みの親が言うからそうなんだろ」
「アスタロトかシトリーか」
「なんでエロ系悪魔?」
「しかし、相変わらず狂ってんな、お前の親。そんなに信じる気持ちが大事ならセフィーロにでも行け」
「懐かしいな、魔法騎士。ちなみにこういうときの皆というのは、当人が選んだ当人にとって都合のいい皆だ。うちの母親の場合、同じカルトに所属して教祖の教えを信じる皆になる」
「まったく、『自称、普通の人』ほど邪悪な生き物はいないな」
「誰もが専門的な知識を持ってるわけでも無く、周囲に流されてしまう人もいる。ただ、今はコロナの恐怖から、まるでワクチンを崇める宗教が広まりつつあるような気もする。ワクチンを信じればコロナという疫病神が退散する、という教義がひろまり、これを信じない者は悪魔だ、というような」
「ワクチン拒否者を魔女狩りする風潮になったりしてな」
「戦前のように、ワクチン拒否者は非国民だ。国が一丸となるべきときに反戦主義者ならぬ反ワクチン主義者は迫害してよし、死刑にしてよし、となるかもね」
「ワクチンという薬が無いと生き残れない、なので全人類がドラッグ中毒になりましょう、というのは狂気かディストピアか」
「ということはアレだ。筋肉ムキムキのマッチョなモヒカンが革ジャン着てデカイバイクにまたがってだな、『あぁん? お前、ワクチン様を信じてないのかあ?』『ワクチン様に逆らう奴は皆殺しだあ!』とか」
「それ、どこの世紀末?」
「妙な迫力のある男が、いきなり人の顔の汗をベロンと舐めて『この味は! ワクチンを打っていない『汗』だぜ』と」
「それ、どこのスタンド使い?」
「ひとつ分かったことがある。ワクチンを打ってない奴はタバコの煙を少しでも吸うとだな、鼻の頭に、血管が浮き出る」
「嘘だッ!」
「ああ、嘘だぜ! だが、マヌケは見つかったようだな!」
「あっ!」
おまけ
「ワクチンの普及率を上げたいのなら、ワクチンの呼び方を親しみやすいものに変えるといいんじゃないか?」
「例えば?」
「ワクワクチンチン」
「風俗みたいになった」




