3-20 豹娘の嫁入り道具③
レオが今後の戦いについて考え込んでいる間、女の子たちは楽しく女子トークをしていた。
「それでね、フィラさん、ランちゃんはゼリアンスロゥプ大王に“第一夫人になってくれ”って求婚されたのよ!」
「その話、ゾオル中で話題になっていますよ!」
「あーやっぱりね?!大王様、ランちゃんにぞっこんだもんねっ!」
「あー、もうよそうよ、その話!」
ランは恥ずかしいのだろう、話題を変えさせようとしている。
「だって、ランちゃんコロシアムでカッコよかったもんねー?」
「あの試合、私も拝見させていただきました!」
「私もパンサー部隊の仲間といっしょに観に行ったんですよ!」
「えっ、ミユちゃんとフィラさんも見に行ったの?」
「大王様がコロシアムに行かれるのは100年ぶりだと聞きましたし、私たちフツーの獣人が大王様のお顔を拝見することなんてないんですよ。」
「私はパンサー部隊の隊長が格闘技とかバトルとかを見るのが好きなので、パンサー部隊全員で観に行ったんですよ」
「へーぇ、そうなんだー!」
「でも、私もいまだにわからないんですが、どのようにしてランちゃんは旗のポールの上にのぼられたんですか?」
「あー、あれね。あれは瞬間移動っていう私の得意技!」
ランが得意そうだ。
「瞬間移動?じゃあ、あの試合で剣やら槍やらを浮かせたのも?」と今度はミユが聞く。
「まあ、似たようなものね。あれは念力だけど」
「ネンリキ? すごい特技ですね! あの攻撃だと防ぐのはほぼ不可能なんじゃないですか?」
「ふつうなら無理でしょう。レオさまを守っているシーノちゃんあたりじゃないと。」
「シーノちゃんって、スゴイんですね!」
ミユが目を丸くしている。
「瞬間移動って、いつでもできるの?」
「いつでもできるわよ、フィラさん。」
「私、まだよく見たことないんだけど、見せてくれない?」
「いいわよ、ミユ。」
次の瞬間、ランは向かいの席に座っていたレオの膝の上に座っていた。
「わっ!?」
窓から朝日がさしはじめた外の景色をぼーっと見ていたレオは、急にやわらかいお尻の感触と重さを自分の膝の上に感じて驚きのあまり、飛び上がるほど驚いてしまった。
ミユとモモの間にいたランがいなくなったと思ったら、レオの膝にいた!
外を走っていた虎族の獣人騎士が、なにが起こったのかと外から中をのぞいたが、人族の女の子が人族の男の子の膝に乗って遊んでいる(?)とわかって、ニヤリと笑って離れて行った。
「ちょ、ちょっと、ラン、何よそれ?!」
ランを指さしてさけぶモモ。
「ラ、ランちゃん...」
目を大きくしているミユ。
フィラさんもおどろいている。
だが、レオがまだ何かを言おうとした時、ランは瞬間移動で元の場所にもどっていた。
「どう?」自慢げなランの顔。
「なんでレオさまのお膝なのよ?!」文句を言うモモ。
「ランちゃん、スゴイ...」新入りなのでひかえめな言葉のミユ。
「凡人には想像もできない能力ですね」フィラさんの感想。
「ったく!」とレオがランを見ながらブツブツ言っている。
「だって、レオは私を抱きなれているから問題ないと思って。フィラさんの膝に乗っても面白くないでしょう?」
「えーっ、レオさまはランを抱きなれているー?!」
「えーっ、お二人ともそんな仲なんですかー?!」
モモとミユが素っ頓狂な声を出す。
「そんな仲なわけないじゃないか!ヤマト国でホワイトドラゴンを見に行ったときに、むりやりランがオレに抱きついた形て走っただけだよ。」
レオが弁明する。
「そんなこと、ランは全然言ってくれてないじゃない?水くさーい!」とモモが抗議する。
「あら、だって誰にも聞かれなかったもん!」
ランは平気な顔。
ダテに2コ年上ではない。知恵がある。
「レオさまに抱きついてどれくらい走られたんですか?」
「往復3時間よ!」
思い出したのか、ウットリしているラン。
「「「往復3時間!」」」
三人がハモった。
モモは唖然として
ミユはうらやましそうな顔をして
フィラさんは呆れ顔だ。
女の子たちの騒ぎを聞きながら、レオはたった今まであったランのやわらかいお尻の感触を思い出していた。膝の上にはまだあたたかい感じがのこっている感じだ。
女の子たちの騒ぎを聞いていたフィラさん。
「まあ、レオさまも認めるかわいさを持つランさんだからこそ、大王様も白羽の矢を立てられたのでしょうね!」
話題をゼリアンスロゥプ大王とランの話題にもどす。
「ランさまもかわいいけど、モモさまもかわいいです」
二人を見ながらミユが言う。
「そういうミユも絶対にレオ好みだよ。」とラン。
「そうそう。じゃなけりゃパーティーに入れないよ!」
「えーっ、そんな基準があるんですかー?」おどろくミユ。
レオはだまったままだ。
「でもね、大王様が美女を見て“ワシの第一夫人に”というのは、大王様が気に入った女性に対していつも使う常套句なのよ。」
「「「えーっ!?」」」
女の子たちが一斉にハモる。
「今の大王のお妃様たちは、ほとんどみんな大王からそう言われてお妃になられたのよ。」
「あの... 40人くらいいたお妃様たちが全員、大王様に“第一夫人になってくれ”と言われて結婚したんですか?」とランが聞く。
「公式に顔を出すお妃様はあの人数だけど、後宮にはあと100人くらい奥妃様と呼ばれる方たちがいるのよ。」
「えーっ、まだ100人お妃様が?」
「奥妃ってなんですか?」
「大王のお妃は、子どもが出来たり、年をとったりするとみんな後宮に送られるの」
「それヒドイ!」
「私もそう思うわ!」
ランとモモが口々に批判する。
「あら、でも大王様はときたま後宮に行って奥妃様たちと幾夜かすごしたり、お子様たちの顔を見たり、いっしょに遊ばれたりするのよ。」
「その後宮ってどれくらい大王様の子どもがいるんですか?」
「たぶん500人は下らないわね!」
「ご、500人!?」
「ひょっとしたら、それ以上いるかも知れないわね。詳しい数字は知らないんだけど。大王さまって、かなり長生きしているからね...」
「大王様、タネウマ能力すごーい!」ランが驚嘆する。
「それは定評あるわね。なんでも一晩で20人から30人のお妃様のお相手をなさるとか...」
「セイリョクゼツリンなんてものじゃないわね...」とモモがつぶやく。
「セイリョクゼツリンってなに?」
「精神力と肉体能力が優れているということよ、ミユちゃん。」とフィラさん。
「ゼリアンスロゥプ大王さまが、セイリョクゼツリン...?」
「あとで詳しく教えてあげますわ、ミユちゃん」
戦闘能力は高くても、世間のことはまだまだ│疎い豹耳娘だった。
知恵と世事に長けているフィラさんが付き人みたいな形でついてくるのは、ミユにとっても大いに助かることだ。今はレオがいるから、そんな話は避けた方がいいと判断したのだろう。
“おい、おい... ウブな豹娘ちゃんに変なこと教えないでくれよ…”
女子トークの行方を心配するレオだった。




