3-18 豹娘の嫁入り道具①
十分後、レオから話しを聞いた象将軍ディアドコイは上機嫌になった。
その他の将軍も、ジャバリュー将軍と派遣部隊の事について話し合っている。
「さて、打ち合わせはすんだことだし、明日は早いからオレたちも迎賓館に帰って休もうぜ。それにミユちゃんがアールに乗るから、彼女のイスも用意しなくちゃならないから、イスの設計図をジャバリューさんに渡しといて、明日の朝までに作ってもらっておこう。」
レオたちがバッグなどを手にとり、作戦本部から出て行こうとしているのを見たのか、ジャバリュー将軍が近づいて来た。
「あ、帰る前に大王様がみんなにお別れをしたいそうだ。」
「わかりました。オレたちもお世話になったお礼をしなきゃ。明日はもうお会いできないかも知れないし...」
「そうね、ジャバリューさんにも大王様にもとてもお世話になったからね!」
「いや、私などはただ当然の役目を果たしただけですよ。」
「海のものとも山のものとも分からない私たちを快く迎えてくださって、Xデー作戦にも同意してくださったんだから、やはり、ここは礼を尽くしておかなければね...」
三人で大王のところに向かう。
「ゼリアンスロゥプ大王さま、どうもありがとうございました。」
レオが代表して礼を言う。
「モゴモゴ... ゴくろうだった。モゴモゴ... 作戦は必ズ成功すル...モゴ」
「大王が派遣される大軍は、きっと魔軍を慌てふためかせることでしょう!」
「モゴモゴ... 魔軍フンサイする モゴモゴ…」
「はい。必ずや!」
それから大王はランの方をやさしい目で見た。
「モゴモゴ... ラン...第一夫人ノ 座は開けテおク。気ガ向いたラ、いつデモ来ルがいい。モゴモゴ...」
その言葉を聞いたラン。
大王の方に向かって右手を2、3回下に小さくふって、大王にもっと彼女の近くに顔をよせるようにゼスチャーする。
「?...」
大王がランが何を近くで言いたいのかわからず、3メートルを超える巨体をかがめてランの近くに顔をよせようとすると…
突然、ランが飛びあがって大王の首に両腕でしがみつき- 大王の首は太すぎてしがみつけなかったが- 大王の頬にチューをして、飛び降りた。
「モゴモゴ... ラン、ワシのオヨメさん、モゴモゴ... ラン、ワシのオヨメさん! モゴ」
大王は有頂天になって、あわや大王ダンスを披露するところだった。
「じゃあねー、ゼリアン君!」
獣人族大王にバイバイしながらダイダロス宮をあとにするラン。
ゼリアンスロゥプ大王も巨大な手をふってバイバイしている。
あまりのハプニングに驚きながら続くレオ、モモ、ミユだった。
獣人族将軍たちも呆然としていた…
大王特別貴賓用御殿に向かって走る馬車の中‐帰りはレオも馬車の中だった。
「ランちゃんも、お嫁さんにもらってくれる人が見つかってよかったね!」
レオがからかい半分で言う。
「いやぁ、ムリムリ。獣人族の王様なんかと結婚したら、お│義父さまに親子の縁切られちゃうわ!」
「なに言ってんのよ、ラン。大王様すごいお金持ちだし権力あるし、女性にもモテるのよ。見た?あのお妃さんたちの数?」
モモまでからかいはじめる。
「私は... レオさま一途です!」
「えーっ、ここで告白ぅ?」驚くモモ。
「ここでもどこでもいいでしょー?ミユちゃんも、レオさまのこと好きだって言っているんだしー!」
「あーっ、それはないです、ランさん。あれは私たちだけのヒミツって...」あわてるミユ。
「いいの、いいの。私たちの間はね、隠しごとなんかない方がいいの」
「そうなの?」と聞くモモ。
「そうよ。正々堂々とみんなの前で告白して、誰がレオさまの心を射止めるか競争するの。私はそれをアイミちゃんから習ったの。」
「アイミちゃんからねぇ... あの子、こと恋に関しては勇気あることをするからねぇ...」納得するモモ。
「だからモモも、この際はっきりと宣言した方がいいよ?!」
「ちょ、ちょっと!なに私まで巻き込んでいるのよ?」
「だって、モモ、カイオはフィアンセがいるからダメなの知っているでしょう?」
「私はカイオとは、ただの仲間つきあいだけよ。本命は... あっ!」と急いで口をふさぐモモ。
「なになに、本命はレオ様だって?」
「いやだー、ラン、そこまで言わせないで―!」
「あははは。こうする方がレオも分かりやすいでしょう?」
「おいおい、あまり新しい子をいじめちゃあダメだよ。ミユちゃんも驚いているよ」
「あははは。だいじょうぶ、ミユちゃんはすでに意思表示していますよー!」
「ランさん。あれは私たちだけのヒミツって...」
「あーははは」
「きゃーははは」
「あっはっはっは」
賑やかな笑いに包まれて馬車は特別貴賓用御殿に入っていった。
翌朝。
「やれやれ、大王様は派遣兵力を150万に増やして、自ら陣頭指揮をするって言ってますよ。それで、もっと大きなドコデモゲートを至急作って持って来いとのことです」
朝早く、レオたちの出発前にやって来たジャバリュー将軍がぼやく。
豹顔将軍は、レオが昨日頼んでいたアールに取りつけるミユ用のイスを持ってきたのだ。
「ミューロィナ、前に止めた馬車にお前の荷物を持って来ているから、忘れずにホワイトドラゴンに載せてもらうんだよ」
「ありがとう、パパ」
ミユは荷物を見るために部屋を出て行った。
「150万って、大王様本気で言っているんですか?」レオが驚いて聞く。
「本気も何も。大王が決めたことはやらないとこっちの首が飛びます」
「でも、何十年も膠着状態にあるとは言え、前線の兵力を減らすと魔軍はさらに獣人族のテリトリーに入ってきますよ?」
「それは大丈夫だ。現在、わが軍は500万近い兵力をもっているからな。もっともこれは国家秘密なので同盟国以外には漏らしてほしくないのだが。」
「えーっ、500万近い兵力?前に獣人族は200万の兵力って聞いたんですけど?」
「それは100年前の数字だ。魔軍が攻め入ってきた時は、それくらいしかなかったが、その後、獣人人口が増えるにしたがって兵力も増加している」
「つまり、150万抜いてイーストランジアに送っても全然問題ないと?」
「まったく問題はないとは言えんが、少なくとも魔軍にこれ以上攻め入られる隙はあたえんつもりだ」
「イーストランジアでは、ヤマト軍は少し苦戦しているようでしたが、ドワーフ国軍はラナ将軍が新しい戦術を考案し、3倍もの魔軍の上陸部隊を殲滅させました。」
「ほーう... それは獣人族軍の一翼を担っている私にとってもたいへん興味深いことです。」
「ドワーフ国軍の最大のメリットは、その強大な工業力と鉱山にあります。とくに工業力は目を見張るものがあります。」
「工業力ですか。わが獣人族国は有望な鉱山はかなりあるが、魔軍との戦いのため開発がまったく進んでいない。そのためにも、一日も早く魔軍を自国領から追い出し、ドワーフ国などの技術援助をうけながら鉱山を開発し、工業化を進めたいものだ。」
「それは、ヤマト軍をはじめ、ほかの種族国も同じでしょう。」
「うむ。それはそうだ。」
その時、ミューロィナ が部屋に入って来た。
かわいい頬をプーっとふくらませている。
なんだか、とても怒っているようだ。
一体、何が起こったのだろうか?




