3-10 獣人族国へ
ボックズ師の家のドコデモゲートをくぐってテングノハナ岬の洞窟にもどったレオたち。
警備のエルフ兵たちとあいさつする。彼らはいったんエルフ国へ帰って休むので、交代のエルフ兵士がレオたちといっしょに来ている。
洞窟を出る前に、レオは今回のプランについて再確認を行った。
「さて、朝、朝食のあとで話したように、イザベルのグループは、まず最初にミッッデンランジアの人族連合の政府があるナンバ市まで行ってっもらう。約15時間ほどかかる計算だ。そこからトロール亡命政府のあるバステトへ向かってもらう。計算ではさらに約15時間飛ぶことになる。」そう言って、レオはイザベル、カイオとアイミを見た。
「そしてオレのグループは、最初に獣人族国の首都ゾオルへ行く。かなり遠いので25時間ほどかかることになる。それから鬼人族国の首都ガジーマへ飛ぶが、ゾオルからガジーマまでは10時間かかる計算だ。」と言って、彼と同行することになるランとモモの顔を見た。二人とも大きくうなずいている。
「いずれにしても、かなりハードな長距離旅行になるので、昨夜、コナ司令官にお願いしてホワイトドラゴンの背に乗せることができるテントみたいなものを作ってもらっている。
アイミちゃんは物理的衝撃を無効化する魔術を使えるから、ビーナにとって空気抵抗はほどんどないだろう。
紫外線の問題は、トンシー大先生からフランボエーザが原料の日焼け止め薬をもらってきたので、これをアールとビーナに塗ることで問題を解消できる。シートベルト付きの快適なイスも付けるし、簡易トイレもつけてもらう。」
「まるで空飛ぶ小さなホテルね」とモモ。
「オレたちが乗るアールにも同じテントが付けられる。昨夜からエルフの職人さんたちが徹夜で作ってくれている。昼過ぎには完成するはずだ。」
「私もトンシー大先生に薬草から作られた酔い止めのクスリをもらいましたので、今度の旅ではドラゴン酔いしないと思います。」
「あ、それ私も欲しい!」
「私にもちょうだい!」
「わたしもできれば...」
女の子たちからリクエストが出る。
「あ、みなさんの分ももらってきていますので、あとでお分けします」
さすがエルフ少女、あの失敗は二度と起こさない決意だ。
たとえ大好きな人といっしょに旅できなくても...
それから、一行はアールとビーナがいる森に向かった。
アールとビーナは元気そうにしていた。みんなを見て、でっかいシッポをぶんぶん振ってよろこんでいる。
そして… 森がなくなっていた。
「こ、これは...?!」絶句するレオ。
「なに、この子たち、大きくなっていない?」驚きの声をあげるイザベル。
たしかに、そこにいる二匹のホワイトドラゴンたちは、乗って来たときよりずっと大きくなっていた。
「このホワイトドラゴン、たぶん3メートルくらい大きくなっているよ?」とカイオ。
アールもビーナもみんながワイワイ騒いでいるのをキョトンとした目で見ながら、地面の草を食べている。このあたりにはもう木が生えてないのだ。
しばらくドラゴンたちと念話で話していたアイミが、
「この子たち、閉じこめられていたときは、腹いっぱいに食べたことがなかったんですって!」
「つまり、このドラゴンたちは育ちざかりということね?」とモモが目を丸くして言う。
ホワイトドラゴンたちが大きくなっていたので、テントをつけるのによけいに手間がかかってしまったが、なんとか付け終わった。この取り付け作業でもレオの100倍バッタ力が大いに役立った!
時差の関係で、昼過ぎにエルフのかくれ里を出たのが、テングノハナ岬を出発するのは明け方になってしまった。
「それでは、イザベル、カイオ、アイミちゃん、くれぐれも気をつけて!」
テントを備え付け、ロープはしごを垂らしているビーナの横にいる三人にレオが出発前の激励をする。
「レ、レオさまも、お怪我をしないようにお気を...つけて...くだ...さい」
アイミの青い目は涙でいっぱいだ。
「うん。オレはだいじょうぶだ。シーノもいるしな!」
「シーノさま、くれぐれも...レオさまを...お守り...ください!」
(あーい。まかせといて、私たちはだいじょうぶですよ。アイミこそケガをしないようにね!)
「あ...ありがとう...ござい...ます。うううー... グスングスン...」
イザベルがアイミの肩をやさしく抱く。
「じゃあ、レオたちもしっかりね!」
「おう!」
「「はーい!」」
「ちゃんとランちゃんとモモちゃんを守るのよ?!」
「お、おう、まけせとけ!」
そして、夜明け前の薄暗い中、うっすらと東の空が明るくなりつつのを見ながら、二匹の巨大なホワイトドラゴンは大きな翼を羽ばたかせて離陸すると、テングノハナ岬の上を大きく旋回してそれぞれの目的地を目指して飛んで行った。
「ギューイ!」
「ギュギューイ!」
アールとビーナもしばしの別れを告げる。
アールははるか南西に約1万キロメートルのところに位置する獣人国の首都ゾオルを目指して。
ビーナの目的地は南に約7千キロメートルのところにある、人族連合の首都ナンバ市だ。
アールは、ドワーフ国のあるイーストランジアからミッッデンランジアの北東の端にあるテングノハナ岬に向かって飛んだときと同じように高速飛行をはじめた。
魔力を使って飛んでいるのか、体のわりに加速力がハンパない。ぐんぐんと高度を上げていく。その間も羽ばたきをやめず、さらに高度を目指す。
しかし、アールが成長して体力が増したせいか、前回より速度が速いような気がする。といっても速度計はないからよくわからないのだが、体に感じるGの変化に差を感じていた。
ランもモモもアイミからっもらった酔い止め薬を飲んでいるからか、ベルトでイスに縛られていても結構平気な顔をしている。
そういえば、最初の飛行の時もこの二人は結構平気な顔をしていた。
ときおり、テントののぞき窓から外を見たりしながら、おしゃべりをしている。
「アイミちゃんはレオにぞっこんね。本当にかわいいわね。」
「あんなにホレられたら、男だったらシアワセね!」
「ねえ、レオ、そう思わない?」
ランがいきなり話をふって来た。
「美女に好意をもってもらうのはうれしいけど...」
「あら、あれはコウイ(好意)じゃないわ。もうコイ(恋)でしょう?」モモがツッコむ。
「まあ、好意でも恋でも、アイミちゃんはまだ若いだろう?いつ白馬に乗ったステキな王子様が現れて、その王子様が好きになるかも知れないじゃないか?」
「好意と恋は次元がまったく違うわよ。たとえば、私はレオに好意はもっているけど、恋はしてないし...」とモモが訂正をうながす。
「へーえ... モモちゃん、レオに好意をもっているのォ?」
「あっ、えっ、た、ただの好意よ。それ以上のものでもないし、それ以下のものでもない、ただのコ・ウ・イ」なぜかちょっとシドロモドロなドワーフ娘。
「私は... そうね。トモダチ以上、コイビト未満かな...?」とラン。
ランは、その言葉をシーノから教えてもらっていたのだ。
「な、なによ、ソレ?」とモモ。
「あはは。冗談よ、冗談!」
「ランったら、すぐはぐらかせる!」
「とにかく、レオ様。あなたはアイミちゃんにとって、白馬の王子様はレオなのよ!」
「そう、その通りよ!少しは責任感じてマジメに考えてあげなさい!」
「.........(汗たらたら)」
今回の旅は、猛者二人につきそわれて、かなりたいへんな旅になりそうだ。




