3-04 ホワイトドラゴンで飛ぶのが怖くて...〇〇をしました②
レオは一人でテントのそばに行く。
ほかの者は焚火のところで待っている。
「アイミちゃん、オレだよ」
「.........」
返事はない。当然か。
「あのさー、返事したくなかったら返事しなくてもいいから、話だけ聞いてくれよ?」
「.........」
「オレさァ、最初にアイミちゃん見たときからアイミちゃんが好きになったんだよ...」
「.........」
「と言っても、恋人とかそんなんじゃなくて... 正直言って、まだそこまで気持ちは行ってないんだけど...」
「.........」
「オレってさァ、アイミちゃんみたいなナイーブな娘大好きなんだ。」
「ナイーブ...って何ですか?」
小さな声でアイミが聞いてきた。
レオはみんなの方を見て小さくガッツポーズをした。
女子たちは両手を合わせて“うまく行きますように!”と祈っているようだ。
「うぶで純真ってことさ!」
「私ってうぶですか?」
「うーん... だって、アイミちゃん今まで男性と交際なんかしたことないだろ?」
「そ、それはゼッタイにありません!」
思わずアイミの声が大きくなった。
「じゃあ、ナイーブじゃん?」
「そういうことになるんですか?」
「そう。それに、アイミちゃんはナイーブだけど、とても勇気がある娘じゃないか?」
「私が勇気ある娘?」
「だって、エスティーナ女王様が聖域の偵察隊に加わるようにたのんだとき、断ろうと思えば断れたのに受けたんだろう?」
「それは女王さまが私をたいへん信頼していることを知っていますので、その信頼に応えなければと思ったからです...」
「でも、たった17歳の女の子なんだよ? いくら魔術能力が飛びぬけていても、君はまだ未成年だし断ることもできたし、たとえ断ったとしても女王様はガッカリしなかったはずだよ?」
「それは... でも、私はエルフです。エルフ女王の命令に従うのがエルフなのです!」
「だから、そこがオレは好きなんだよ。純真でうぶ。」
「本当に私のことを好きなんですか?」
「ああ、好きだよ。かわいいし、すぐ恥ずかしがるし、初々しいし。」
「あの... ういういしいって何ですか?」
「恥ずかしがりやさん、世間なれしてなくて若々しく新鮮にみえる人のこと。」
「でも...」
「ん?どうした?」
「わ、わたしは... ビーナの上で おしっこをもらしてしまいました... グスン、グスン...」
「アイミちゃん、また泣いちゃあだめだよ。オレは怖くておしっこをもらす娘は好きだけど、いつまでもメソメソ泣く娘は好きじゃない!」
「グスン... (パッと止まった)もう泣いていません。」
「それでいいんだ!」
「でも、レオさま、私にはちょっとわかりません。」
「ん?何が?」
「17歳にもなっておもらしをする娘が好きだなんて...」
「......... そりゃしかたないだろう? イザベルだって、ちょっぴりはもらしたかも知れないんだよ?」そういうと、レオはイザベルを手招きした。
「えっ、イザベルさまが?本当ですか?」
アイミがとても信じられないと聞き返す。
こちらを見ていたみんなは、レオがいったい誰を手招きしているのかわからなかったが、イザベルが自分を指さし“私に来て欲しいの?”とゼスチャーし、レオが大きくうなずくと小走りで走って来ようとしたので“ゆっくり、静かに”とゼスチャーで示し、イザベルはゆっくりと歩いてレオのそばに来た。
“なに?”
目で聞くイザベルを待たせたまま、
「本当だよ。ほら、オレはバッタの100倍聴力をもっているから、イザベルが“私も少しもらしちゃったわ”ってほかの女の子たちに話しているのを聴いちゃったんだ」とアイミに向かって言った。
イザベルが目を大きく見開いて“レオ、何を言っているの!?”と怒って大声で言いたそうにしている。
彼女の耳に口を寄せてレオはささやいた。
(そういうことにしてあげたら、アイミも少しは安心するから...)
イザベルは不満そうな顔をしてみんなの方へもどって行った。
「でもさ、アイミちゃん、このことは誰にも言っちゃあダメだよ。オレたちだけの秘密にしとかなきゃ。」
「はい。わかりました。でもちょっぴり安心しました。」
「もう落ち着いたかい?落ち着いたらテントから出てみんなで昼食を食べようよ。」
「でも、出る前にもう一度確認させてください」
「ん?何を?」
「わたしみたいな、ナイーブでういういしい女の子が好きだってこと!」
「ああ、オレは大好きだよ!」
「うふふ... うれしい!」
「ナイーブな女の子も好きだし、活発で気の強い女の子も好きだし、頭がよくて行動力のある女の子も好きだよ」
「えーっ、ひどーい!」
思わずアイミは大声を出してしまった。
すわっ、レオがアイミとうまく話せないでアイミを怒らせた、と思ったみんなは思わず立ち上がった。
女の子たちはこちらに走って来ている。
「アイミちゃん、今から自分一人だけでオレを独占しようなんて考えてないで、ほかの素晴らしい仲間に負けないように、もっとがんばって自分を磨いてオレからもっと好かれるようになってほしい、といいことさ!」
近くまで来た女の子たちはレオのその言葉を聞いて足を止めた。
「さあ、それじゃあメシに行こうか?」
そういうと、レオはテントを開け、中に座っていたアイミの手を取って立たたせると、カイオが一人で待っている焚火の方へ歩き出した。
手を引かれて歩くエルフ少女の顔は上気し、もうすっかり元気をとりもどしていた。
その顔を見たイザベル、ラン、モモはほっと安心した。
レオとアイミのあとを歩いて焚火のところへ歩こうとしいていたイザベルの足が止まった。
「イザ、どうしたの?」モモが聞く。
「ちょっとテントで用事があるから先に行ってて。すぐ行くから。」
「あ、いいわよ!」
自分のバッグを手に取り、さっさとテントに向かったイザベル。
“レオったら、どうして私がちびったことがわかったのかしら...”
レオは、あくまでもアイミのショックを軽減する目的で、イザベルも漏らしたということにしてくれ、と頼んだのだが、実際に少し漏らしてしまっていたイザベルは目を丸くして驚いたのだった。
手早くズボンと下着を着替えてテントから出てみんなのところへ行こうとした。
そのとき、外からモモの声が聞こえた。
「イザ、どうしたの?」
「モモちゃん?ううん、なんでもない」
バッグを手に持ちテントから出る。
「アイミさんのあとにテントに入っちゃうから、どうしたのかなって思って」
「.........」
「?...」
「あのね... 実は私も少しおもらししっちゃっていたの...」
「ああ、あれは怖かったものね...」
「そして、それをレオに気づかれていたの。」
「ええっ、レオさまに気づかれていた?」
「どうやらそうらしいの。アイミに言っていたもん。“アイミちゃんだけじゃないよ、イザベルもおもらししたくらいだから”って」
「えーっ、どうやって気づいたのかしら?」
「あのね、レオの能力は何でも100倍なの。」
「ええっ!なんでも100倍?」
「そう。力も100倍、聴覚100倍、嗅覚も100倍」
「嗅覚も100倍?!」
「そうなのよ。」
「じゃあ、気づかれるはずね...」
イザベルは、やはり女の子なのでレオに知られて少し意気消沈気味だ。
モモは“これはたいへんだ。私も気をつけなきゃ...”と考えていた。
だが、実際のところ、これは女子たちの考えすぎだった。
たしかにレオの嗅覚は100倍だし、オシッコの匂いもわかるが、それはオシッコだとわかるだけで、漏れたオシッコなのか、用を足したあとのオシッコの残りなのか分別できないということだ。
そこまで神経質になることはなかったのだ。
ホワイトドラゴンによる大陸間初飛行。
とんだハプニングも発生したが、エルフ美少女アイミは元気を取りもどし(レオから好きだと言われてより元気になった?)大成功だったようである。




