3-03 ホワイトドラゴンで飛ぶのが怖くて...〇〇をしました①
ドン長官やポチ課長などが遠くから見守る中-
ホワイトドラゴンが羽ばたくときは猛烈な砂ぼこりがするので近くにいないように、と言ったのだ。
二匹の巨大なドラゴンは広場を砂ぼこりだらけにして、朝日がさし始めた中を離陸し、急速に高度を上げはじめた。
アールにはレオ、ランとモモ。ビーナにはカイオ、イザベル、それにアイミが乗っている。
アールもビーナも魔力飛行を使っているので図体がメチャ大きいわりに加速力はすごい。
ぐんぐんと高度を上げていく。
その間も羽ばたきをやめず、さらに高度を目指す。
シーノの紫外線遮断バリアーのおかげでアールもビーナもまったく紫外線を感じずに飛び続けることができる。見る間に兵器廠の建物群が米粒のように小さくなり、ドワーフ国特有の延々と続く山脈が見えはじめる。
さらに高度を上げ、行く手の下方にドワーフ海峡が見えはじめるが、上昇はまだ続く。
“まだ上がるのか...” とみんなが思ったときに、アールとビーナは上昇をやめ水平飛行に移った。
巨大な翼を強く羽ばたかせながらさらに速度をあげて行く。
加速のすごさにみんな椅子の背に押しつけられるのを感じていた。 アイミとランはシートに取り付けられている鞍のホーンに似た突起“ホーン(グリップ)”を両手でしっかりと握っている。レオとランとモモは、ふつうにホーンにつかまっているだけだ。
二匹のホワイトドラゴンの高速飛行は4時間ほど続いた。
飛行は、一応、ドワーフ国兵器廠のポチ課長から借りたコンパスで決めた方向を目指して飛んでいるが、やはり地上の地形や目じるしなどの確認は不可欠だ。
地表の方をしきりに見ていた、アイミが地表の一点を指さして小さく叫んだ。
「あ、あそこです。あの海に 突き出している半島の近くです!」
(レオ、アイミちゃんが、あの半島の近くだって!)
カイオが念話を使って隣を飛んでいるアールの背に乗っているレオに伝える。
「オーケー!よし、アール、あのひょろ長い土地の近くまで降りてくれ!」
レオはすぐホワイトドラゴンに指示する。
「ギュイ!」
アールもビーナも、難しい人族語はわからないのでアイミの助けが必要だが、簡単な指示は理解できるようになった。意外とアタマがいいドラゴンのようだ。
アールとビーナは、着陸地点を確認すると、首を下方に向けて急降下をはじめた。
それも巨大な翼を羽ばたかせながら。上昇したときとは比べようがないほどの速度で巨体が下降する。
二匹とも降りるところがわかったので、高空からもっとも速い降下方法- 急降下- で降りているのだ。彼らはいつもこんな飛び方や降り方をしているのだろう。
ホワイトドラゴンの降下速度は、引力に引かれてさらに速くなる。
下の方にシワが寄ったように見えていた山脈がぐんぐん迫って来た。
ホワイトドラゴンの背中に乗っている者は、あまりの急降下速度のため生きた心地もしない。
イザベルもアイミも今回ばかりはしがみつくレオがいないので、ホーンを握って二人ともそろって思いっきり悲鳴をあげている。
「キャ――――――――ぁぁぁぁぁ!」
「ヒィィィ―――――――――――!」
一方、レオといっしょのランとモモは、一人は勇猛をもってなるノブノブ将軍の娘、もう一人はドワーフ軍のエリート部隊であるレインボーの優等生だけあって、顔は少し青ざめているようだが、悲鳴はあげずにホーンにしっかりつかまってGの変化に耐えている。
急降下は10分ほど続き、さらに30分ほど地表近くを水平飛行で飛んだあと、二匹のホワイトドラゴンは海岸にある岬- 地理的にはミッッデンランジアの獣人族国領土の北東部にあたる― に降りた。
あとでアイミたちはテングノハナ岬と呼んでいる場所だということを知った。
レオとカイオはさっさと飛び降りる。ランとモモは鞍型シートの上でこわばった体をゆっくり伸ばしている。
一方、イザベルとアイミは... イザベルは真っ青な顔をしてまだホーンにしがみついている。そしてレオとカイオの方を何も言わずに見ている。
アイミはホーン(グリップ)をしっかり握った両手に頭をうつぶせたままだ。
まるでフリーズしたようにピクリとも動かない。両肩が呼吸で上下しているので生きているのは確かだが。
「ちょっと行って降りるのを手伝うか?」
「おう、そうしてやろうぜ!」
レオはアールの背に飛び乗って、ランとモモが鞍型シートから降りるのを手伝う。
最初にランを抱き上げるとお姫様抱っこで地上に降り立つ。それを見ていたモモは自力で降りるのをやめ、レオが手伝ってくれるのを待つ。
ランを降ろしたレオは、今度はモモのところへ飛びあがり、モモの手をとって自分の肩につかまらせ、シートから立ち上がると同じようにお姫様抱っこで抱いて飛んで地上に降りる。
自分の足で地上をふむと、さすがのモモも安堵の息をもらした。
カイオは、イザベルのところまで上っていって― カイオはバッタ力がないので飛べないので― イザベルに手を貸して立ち上がらせて、そろそろとビーナの背から翼に移り、先に自分が地上に降りてからイザベルが降りるのを、両手を彼女のわきの下に入れて手伝う。
「カイオ、ヘンなところ触らないでよ!」
手伝ってもらいながらも、やかましい赤毛の美女だ。
それを見ていたレオはさっとビーナの背に飛びあがった。
「アイミちゃん、アイミちゃん。着いたよ。もうだいじょうぶだよ。ほら、オレが手伝うから降りよう!」
まだ顔をうつぶせたままのアイミに話しかけるが、アイミは相変わらずだまったままだ。
「怖くて手足がしびれて動かせないのかい?じゃあ、オレが鞍から立ち上がらせてあげるよ...」
「... しちゃ...たの...」
ぼそぼそ...とアイミが小さな声で言う。
「えっ、どうしたって?」
レオが何が起こったのかわからずに聞き直す。
そのとき、下から見ていた女の子たちはハッと気がついた。
三人は目くばせすると、小さな声で何かを話す。
モモが軽い身のこなしでビーナに上ってきた。
イザベルは自分のバッグを開けて中から毛布を取り出し、ビーナの翼の上にいるイザベルに渡す。
ランは別のバッグで何かを探している。
そこまで見てカイオはすべてを理解したらしく、ちょっと離れたところで降ろした荷物などをチェックしはじめた。
ただ一人、レオだけが何がどうなっているのかわからず、モモがアイミの横に行って彼女を毛布でくるみはじめたのを見て声をかけている。
「アイミちゃん、寒かったの?」
するとモモがレオに近づき耳元に小さな声でささやいた。
「レオさま... 大きな声を出さないで。アイミさんはあまり怖くて粗相をしたのよ。」
「!!」
ようやく合点がいったレオ。
レオは何も言わずにビーナの背の上に立つと、毛布越しにアイミのわきの下に手を入れぐーっと持ち上げた。モモが毛布が外れないようにしっかりと巻きつけると、レオはアイミをお姫様抱っこし、バッと飛んで地上に降りた。
すぐにイザベルとランがアイミを両脇から抱えて、カイオが素早く建てたテントの中に連れて行った。モモもあとを追ってテントまで行き、中の様子をちょっと見たあとで外に立って見ている。
男子が近づかないように見張っているのだろう。もとより、レオもカイオもそんなつもりはないので黙って鞍を外したり、ほかのことをしている。
1時間ほどたった。
その間にレオとカイオは火を起こし、ホテルでたのんで作らせたトリゴパンのサンドイッチを出したり、ジュースや水を飲むためのカップを出したりして昼食の準備をしていた。
モモは何もすることがないのか、はたまた男子二人だけにしておくのが気がひけるのか、二人のそばに来て昼食の準備を手伝ったり、話をしたりしてた。
「カイオさん、シーノさんが言ってたことは本当ですか?」
「ん?何のこと?」
「カイオさんが王族だってこと」
「ああ、本当だよ。ボクはテラではレイナード国の王子なんだよ。と言っても王位継承継承順位は8番目なんで気楽なものだけどね。」
「あら、そうなの?じゃあ正真正銘の王子様っていうわけね」
「一応はね。でも、王国をほっぽり出して、海外遊学なんていう名目で冒険旅行をしている王子様なんだから、いい加減な王子様だろ?」
「それはそうかも知れないだけど、そのおかげでミィテラの世界が救われるかも知れないんでしょう?」
「まあ、ボクは自ら望んでこの冒険を選んだんだから、文句はないけどね」
「やはり、最も大事なのは、“それが命を懸けるに値することかどうか”ですよね。」
「それに尽きるね。」
そのとき、イザベルがテントから出て、こちらへ向かって歩いて来た。
「レオ... あなたもアイミちゃんに何が起きたか、もう知っていると思うんだけど...」
「うん...」
「あのね、アイミちゃんが、あんなことをしたから、レオには呆れられて嫌われてしまったに違いないって言って泣き止まないのよ...」
「!...」
「......」
カイオもモモも何も言わない。いや、言えないのだ。
ここはレオに一任するしかない。
「よし。わかった。じゃあ、オレからアイミちゃんに話すよ。そんなことは気にしないでって」
「あ、ダメダメ!たぶん恥ずかしくてレオの顔は見れないと思うからダメ!」
イザベルが手を横にふって言う。
「じゃあ、テントの外からでならいいだろう?」
「それでためしてみて。でも、アイミが話したくないって言ったらやめるのよ?」
「オーケー。」




