3-02 ミッッデンランジアへ②
「えっ?今から決めようと思ったのに?!」
レオもかなり驚き、半分泣き出しそうなアイミの顔を見て、アールの上に乗ってしまったランとモモの“やったわ!”と言わんばかりの顔を見て困惑している。
「いいのよ、レオ。 昨夜、ジンゴロさんの工房から帰ったあとで女子だけで話し合ったの。ランとモモはレオをよく知らないから、今回の旅はレオとずーっといっしょということでみんな合意したの」
イザベルが状況を説明する。
「わ、わたしはレオさまといっしょに行きたかったのですが...」
アイミが泣き出しそうな顔で、まだ十分に納得していません!と言いたげな顔で言う。
「まあまあ、アイミちゃん。最初はエルフのかくれ里に行くのでしょう?」
「はい...」
「それまではホワイトドラゴンは別だけど、行動はいっしょだから。」
「そうですね。なんでもひとり占めはよくありませんね...」
ようやく納得した感じのアイミ。
モモはそんなエルフ少女の様子を見て“あれれ... このエルフっ子、レオさまにぞっこんね”と思った。
「で、ミッッデンランジアの予定の場所までは何時間かかる計算なんだ?」
「オレの計算では、この二匹は時速200キロくらい飛ぶから、ここからだと10時間くらいで着く計算なんだけど...」
「10時間もイスに座ったまま...? かなり疲れるたびになりそうね。」
イザベルがボヤキ気味につぶやく。
「ちょっと待ってください、イザベルさま。ドワーフ国までは、ふつうに飛んでちょうだいってお願いしたんですけど、アールとビーナにどれくらい速く飛べるか聞いてみますから。」
「あ、お願いするわ、アイミちゃん。」
しばし、アイミがホワイトドラゴンたちとコミュニケーションをする。
「あのー... この子たちが、“もし、ご主人様たちが高いところまで上がっても問題なければ、魔力を使った飛行で半分ほどの時間で行けるって言ってますけど...」
「えっ、半分の時間?」
「そんなに速く飛べるの?」
「時速400キロってこと!?それってめちゃくちゃ速いじゃない?」
「で、どんな魔法飛行なんだい、それは?」
肝心のことをレオが聞く。
レオがホワイトドラゴンのステータスを見たとき、たしかにMPはすごく高く、スキルに高速飛行と表示されていたが、どんな飛行方法なのか皆目わからないのだ。
アイミは、またしばし二匹とコミュニケーションする。
「すべてがとても小さく見える高さまで上がるそうです。そこは空気も薄いので速度が出せるので、それにこの子たちがもっている高速飛行能力を使えば通常の倍のスピードで飛べるのだそうです。」
「それって、空の高いところは空気がうすいからヤバいんじゃないの?」
「エルフの里も、ガヤー山というすごく高い山の中腹にあるので、ふつうの人には空気がうすくて苦しくて気絶してしまうほどです。」
カイオの発言に対してアイミが高山病の恐ろしさについて言う。
「それはシーノがバリアーを張って守ってくれるからだいじょうぶだよ。」
レオがそういった時、レオの上着の下にかくれていたペンダントからシーノが飛び出して、みんなの上を飛びはじめた。
「...!」
モモは生まれて初めて見る天使― まるで子どもの絵本に出てくる妖精のようなシーノの姿にビックリしてクルクル回っているシーノを見ている。
(この娘がモモね...)
ドワーフ娘の顔の少し前にホバリングして止まって、ドワーフ娘の顔を見ながら念話で話す。
モモは念話がはじめてなので、エリート軍人らしくもなく、少しドギマギしている。
(私が守護天使シーノです。モモさん、よろしくね!あ、言いたい言葉を頭で考えると念話できるわ)
(えっ、どのように?)
(そうそう、その調子で)
(あ、わ、わたしはダルーシ・モモッタ・ロウ・バンディです、よろしくお願いいたします、シーナさま)
(シーナでいいわよ)
(ほ、本当にいるんですね、天使様って!?)
(うふふ... あなたの反応、かわいいわ)
(か、かわいい?私が?)
(私の主人は、あなたみたいなかわいい娘が好みなのよ)
(ええーっ!...)
シーノの言葉に絶句するモモ。
(そうですよ、モモさん。レオさまは美女が大好きなんですよ。ほら、よく見て。イザベルさまもランさまもみんな美しい方でしょう?)とアイミが念話に加わる。
(なに言ってんの、アイミちゃん。あなたも美女でしょうが?)
すぐにイザベルから訂正が入る。
(わ、わたしは、耳が長いだけのフツーのエルフですぅ!)
(そういう初々しさも私のご主人は大好きなのです)
アイミは長い耳のとっぺんから顔まで真っ赤にして恥ずかしがってモジモジしている。
「あのー オレの美女観というか女性観の話はそれくらいにして、早く出発しようぜ。」
これじゃいつまで待っても女子トークは終わりそうにない、と思ったレオがストップをかける。
(なーに茶々いれてるの、レオ? このトークは、誰があなたの将来のオヨメさんにふさわしいか見るための心理テストの一つなのよ?!)
((((えーっ、心理テストーォ???))))
シーノの言葉に女の子たちが一斉に反応してハモった。
(レ、レ、レ、レオさまの将来のオヨメさんを決めるための心理テストーぉ?)
きれいな白髪をすべて逆立たせるような驚き方で、顔をピーマンのように真っ赤っかにして聞き直すエルフ少女。
(えーっ、レオ様、その歳でもう奥様を探しているんですかー?)
それは知らなかったとオドロク夜叉美女のラン。
(レ、レオさまはオヨメさん探しにドワーフじゃない、ミィテラの世界に来られたのですかァ?!)
これもビックリ仰天のモモ少尉。
(ちょ、ちょっとー、シーノちゃん!それはちょっとジョークの度が過ぎているんじゃない?)
シーノのからかい発言やレオのカワイイ子好みにもなれているイザベルまでが驚いている。
(なにを言っているんですか? カイオじゃあるまいし、レオはフィアンセなんていないんですから、あなたたちの中から将来のオヨメさんを選ぶ可能性は大じゃありませんか?)
「えーっ、カイオ、あなたフィアンセがもういるの?」
また驚くイザベル。これは彼女も初耳だった。
「やれやれ、シーノちゃんも何もこんな時に王族のヒミツをバラさなくても...」
「私はカイオがアイミちゃんにもモモちゃんにも、私にも― あ、私はどうでもいけど― 関心を示さないようだから、もしかしてカイオってオトコが好みなのかなって...」
「おいおい、イザベル、何の証拠もないのに、ボクの好みを勝手にそっちの方に持っていかないでくれよ!」
(カイオはね、すでに10歳のときから王族同士で決めたフィアンセがいるのよ。相手は...)
「ストーップ!それ以上はゴッドスペッド王家のヒミツだ。シーノちゃん、相手もいることだし、もうそれ以上は言わないでくれ」
(はいはい。じゃあ、次の女子トークの時のおたのしみね)
「もうシーノにはかなわないな...」
「さて、ということでシーノちゃんのおかげでオレの女性の好みもみんなわかったようだし、カイオがオトコが好きじゃないとわかったところで、そろそろ出発しようぜ!」
「「「「「はーい!」」」」」
一斉に返事が返ってきた。
カイオの婚約者に関係する話もあって、女子たちの男子に対する関心度が急上昇したのを感じながら、レオはつぶやいた。
「いったい、誰だよ“女子トーク”なんて言葉を女の子たちに教えたのは?」
つい口に出た言葉を聞きとめたのはアイミだった。
「女子トークって言葉、みんなシーナさんから教えてもらったんですよ、レオさま!」
「えーっ、シーノからぁ?」
「ええ。なんでもテラではレディーたちがレベルの高い教養的な内容のお話をすることを女子トークって言うのですって」
「......(シーノは何を考えているんだ?トンでもないことを教えている!)......」
ひとりニンマリとしてるのは守護天使だけだった。




