3-01 ミッッデンランジアへ①
いよいよミッッデンランジア(中央大陸)での冒険が始まります。
「ミッッデンランジアへ行こう!」
兵器廠から帰り、ガン総司令官から宿舎として提供されたガラガス市内のホテルの部屋でレオは全員を前にそう告げた。
「ミッッデンランジアへ?」
カイオが“なぜ?”といった表情で聞く。
「反攻作戦実施日- オレは『Xデー』って勝手に名付けているんだけど、それまで二十日ほどあるだろう?」
「そうね。あと22日あるわ」イザベルが答える。
「それで、オレたちが最初にアイミちゃんたちと会ったとき、アイミちゃんは、今はデーモンランジアと魔王が名前を変えた元エルフ国へ同盟国軍を送ってエルフ国と聖域を取りもどすための事前調査と偵察目的でイーストランジアに来たって言ってただろう?」
「うん。」
カイオもイザベルもうなずく。
「オレもアイミちゃんも、カイオもイザベルも、この一週間ほど魔軍と戦ったりしてその力というか戦力というのは決して侮れないものだってよーくわかったと思うんだ。」
みんなうなずく。
「だから、これからミッッデンランジアへ行って、エルフの里にいるエスティーナ女王さまにお会いして話をして、それから同盟国のリーダーたちに会ってミッッデンランジアの同盟国軍によるイーストランジア侵攻を、オレたちが計画している『Xデー』と同じ時期にすることで、ヤマト軍とドワーフ軍の反攻作戦をより効果のあるものするんだ。
つまり、ヤマト軍とドワーフ軍とミッッデンランジアの同盟国軍からの3軍による同時攻撃という計画にするんだよ!こうすれば、イーストランジアにいる魔軍と対等に戦えるし、こちらの作戦が優れていれば、魔軍をイーストランジアから追い出せるんだ!」
「それは戦略的に見ても最善の作戦だと思うわ!」
モモが早速賛成の声をあげる。
「きっと、わがドワーフ軍もオダ将軍のヤマト軍も同意するはずよ。これは魔軍にとっては予想もしていない事なので、その効果も絶大なはずよ!」
さすが陸軍士官養成学校を首席で卒業しただけあって、作戦の良し悪しを一目で見抜いたモモ。
状況分析もかなり正確なようだ。
「ただ、問題は、どうやってミッッデンランジアまで行くか、どうやってヤマト海をブラックドラゴンに見つからずに渡るか、とうことだな?」
カイオが、アイミたちの偵察隊がミッッデンランジアからイーストランジアに船で渡る時に、ブラックドラゴンの攻撃でほぼ全滅させられかけたと語ったことを思い出して言った。
「それは、あの二匹のホワイトドラゴンに乗っていけば問題ないよ。」
「そうね。もし、ブラックドラゴンが現れたら、私やレオがやっつけちゃうし!」
「シーノさまのバリアーもありますし!」
「オーケー、わかったよ。で、いつ出発するつもりだ?」
「明日の朝一番で出発しようと思っている!」
「レオらしい性急さだな。」
「じゃあ、ラナ将軍たちに知らせなきゃ!」
「それは、私にまかせて、イザ。すぐ母に手紙を書いて連絡将校に持っていってもらうわ。」
「でも、モモはお母さんやお兄さんたちとお別れしなくてもいいの?」
「一応私は、レインボー部隊では“外地にて秘密任務を遂行中”という扱いになっているし、それは、あなたたちの仲間としていっしょに行動するということが前提となっているのよ。それに昨夜の夕食はお別れ会でもあったの。」
「そう。じゃあ問題ないわね?」
「まったくないわ!」
- ∞ -
翌朝、まだ日が昇る前に兵器廠にやって来た一行。
アールとビーナは、兵器廠の近くの原っぱで一晩中草を食べたり、寝たりとゆっくり過ごせたらしく背伸びをしている。
アイミの言うことをよく聞いて原っぱからは一歩も出ていない。
万一の場合に備えて、ドワーフ兵たちが一個小隊監視していたようだが、徒労に終わっただけだ。
すでに二匹の背にはシートが固定されている。レオとアイミとランがヤマト国で作ってつけて来たものだ。
ホワイトドラゴンの体は大きいので、背中にもかなりスペースがあるので、背中に2列2シートを設置し、その真ん中には通路を開け、最後尾には簡易トイレもつけた。もちろんたれ流しではなく溜める方式だ。
ノブノブ将軍が出陣するときになどに出かける時に持っていくのを参考にして、ヤマト人の職人に作ってもらったもので、下のタンクとの間にバルブが付けてあるので臭いがもれないようになっている。
そして、かなりの荷物スペースもあるので、そこに着替えや食料などを入れた背嚢やカバンなどの荷物も積めるようになっている。
「みんな、準備はいいかいかい?」
レオがみんなの顔を見ながら聞く。
そして何となく、左手首につけているブレスレットをさわってみた。
細く幅2センチほどのブレスレットは真珠のような淡い白色をしていた。
昨日、兵器廠のドン長官にお願いして、ガラガスの町で装飾品を扱うドワーフ職人の工房に連れていってもらったのだ。
その工房のオーナーはジンゴロさんというドワーフ国でもトップレベルの装飾細工職人だった。
レオはすっかり忘れていたのだが、シーノが“ここには腕のいいドワーフ職人がいるはずだから、レオが好きな形のアクセサリーに作ってもらって、いつも身に付けているようにしたらいいわ”と言ったのを思い出したのだ。
神の山ミトラカルナーから持ってきた石の塊を渡されたジンゴロは、その真珠色のような淡い輝きを放つ神の石の塊を渡された時、そのまま黙ってしばらく神の石を見続けていた。
「おう... これは何というモノか知らないが、見ただけで神々しさを感じさせる... それにしてもこんなモノは見たことがないな...」と感嘆の声をあげた。
「それで、この塊で何を作って欲しいんですか、お客さん?」
「ペンダントはもう持っているから、ブレスレットをお願いします。」
レオはしばらく考えたあとで言った。
「承知しました!」
ジンゴロはレオから渡された5キログラムほどある神の石から必要と思われる量を切り取ると、レオの注文にしたがって金切りノコで切ったり、ハンマーで叩いたりして形を整えていく。
「ほーう... これは鉛みたいに工作しやすいな...」
ハンマーで叩きながらジンゴロはつぶやいた。
20分ほどすると、ブレスレットが完成した。手にはめて留め金をかける。
はめた手をふってみる。だいじょうぶ、全然邪魔にはならない。
レオの感想が気になるのか、ジンゴロはずーっとレオを見ている。
「あ、これとてもいいです!ありがとうございます!」
「おう、そうか。それはよかった!」
みんなは周りでそれを見ていた。
「いいですね、レオさま。私も欲しいくらいです。」
アイミがうらやましそうな顔をして言う。
「アイミちゃん、欲しかったらペンダントでもリングでも作ってもらったらいいよ。シーノもみんな作っていいって言ってたから。」
「えっ、本当ですか? わーい、うれしーい!」
「で、何を作ってもらう?女の子だからリングとか?」
「私はレオさまとそっくり同じブレスレットがいいです!」
「えっ、そう?じゃあ、それで。すみません、ジンゴロさん、この子にも同じものをお願いします。サイズはこの子の腕に合わせて!」
「おうよ!」
さっそく、アイミの手首をはかってブレスレットのサイズを決め作りはじめる。
「ほかの人はどうするの?カイオ、イザベル、ランちゃん、モモちゃんは?」
「ボクもブレスレットでいいいよ!」
「わ、わたしも!是非!」
「レオ様と同じでいいです。」
「私もレオさんと同じもの!」
ジンゴロさんにとって忙しい夜となったのだった。
出発前のレオの準備確認に対して、みんなが元気よく返事をする。
「オーケー!」
「いいわ!」
「はい、レオさま」
「だいじょうぶです」
「はい!」
「よーし、じゃあ、アールに乗るのは...」
とレオが言いかけた時、彼が最後まで言うのを待たずにランが言った。
「私とモモちゃんがレオさんといっしょに乗ります!」
そして、モモと2人でさっさとアールに上ってしまった。
あまりの素早さに、アイミは「!」、カイオもギブも「!」「!」と驚く。
アイミにとっては、かなりショックだったらしく呆然としている。
ミトラカルナー山の石で作ったブレスレット




