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DK世界に行ったら100倍がんばる!  作者: 独瓈夢
転生の章
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2-43 魔将マレフィキウム

レオに倒された軍団長バメロスの後任として魔軍第六軍の軍団長に任命されたのは、魔将マレフィキウム。

魔王の信頼厚いマレフィキウム将軍は、どのような作戦でヤマト軍に向かうのか?

 80万の魔軍が轟々(ごうごう)と土埃を立てながら行軍している。


 魔軍軍団の中央部隊の中ほどにひときわ目を引く黒塗りの戦車(戦闘馬車)があった。

四頭のたくましい軍馬に引かれた戦車《戦闘馬車》の上に仁王立ちでいる巨漢。

 彼の名前はマレフィキウム。魔王より新しく第六軍軍団長に任命されたばかりの将軍だ。

遠くからもよく見える赤一色のプレートアーマーに赤のマントという派手ないでたちだ。


 魔将マレフィキウムは、ミッッデンランジア(ミッッデンランジア)でトロール国侵攻を担当した第一軍団の副団長だった高級魔族で、手ごわいと魔王が思っていたトロール国をわずか数年で第一軍団が攻略を達成できたのも、副団長であるマレフィキウムの力によるところが大きかったことを魔王はよく知っていた。


 だからこそ、そのマレフィキウムを第六軍の軍団長に新たに任命して- 前の軍団長アサグは対ドワーフ族攻略作戦支援の目的で新設された第七軍の軍団長として転任したので- 先日のヤマト軍の奇襲部隊の攻撃で、司令官と副司令官を失い、無様に潰走した第六軍団を立て直し、残ったヤマト軍を一掃するためにマレフィキウムを起用したのだ。




 十日前、マレフィキウムは魔王に呼ばれ、魔都にやって来た。

ミッッデンランジアで戦っていた彼のもとに、至急、魔都へ行って魔王に会うようにとの魔軍本部からの命令書が届いたのだ。


 歴戦の魔軍将マレフィキウムでも、正直言って魔王ルゾードは怖い。

マレフィキウムの父、ギレフィキウムは魔王ルゾードの幼なじみの一人であり、あの、魔族たちが『血の粛清』と呼ぶようになった、110年前の6月6日日にルゾードとともに決起し、魔軍の中の反対勢力や不満分子であった古参の魔将たちを、その家族と眷属を含めすべて粛清した一人でもあった。

 そのこともあって、父のギレフィキウムはルゾードの信頼厚い魔将であり、その後の魔王の世界戦略作戦『新秩序計画』の戦役においても数々の武功をたてたのだが、20年前にトロール族との戦いで受けた傷がもとで亡くなっていた。


『最後まで、立派に戦った我が同志ギレフィキウム』

ルゾード魔王から哀悼のメッセージが送られて来たとき、マレフィキウムは固く誓ったのだ。

“この魔王のもと、俺も父の子として恥じぬ戦いを見せねばならぬ!」と。


 それからは、命を惜しまずにミッッデンランジアで戦った。転戦して戦い、また転戦して戦った。

マレフィキウムの行くところ、トロール軍は潰走(かいそう)し、獣人族軍は戦意を失い後退につぐ後退を余儀なくされた。


 マレフィキウムは、ギレフィキウムの子と決して恥じぬ戦いと結果を見せることができたと自負していた。

トロール族は国土のほとんどを魔軍のために失い、獣人族も広大な領地を失った。

最近は獣人族軍がかなり押し返してきているが、トロール国をほぼ占領できた成果は大きい。

占領したトロール国をベースとして、魔王がさらに増援の軍勢を送ってくれれば獣人族国の占領も拍車がかかることだろう、とマレフィキウムは考えていた。


 そのマレフィキウムに魔王から、至急魔都カーマダトゥーへ来るようにという命令書が届いたのだ。

 魔王からの命令は絶対である。取るものも取りあえず、もっとも近い魔軍の軍港へ昼夜馬車を乗り継いで走り、さらにそこから魔軍の快速船に乗って、通常であれば40日以上かかる航路を30日でイーストランジアに着き、そこで彼の到着を待っていた馬車- 魔王が遣わせた馬車だ- に乗り、急ぎ魔王が待つパーピーヤス宮殿に参上した。


 魔宮殿に入り、到着を告げたところ、思いもかけず「魔王さまは欄玉の間でお会いになられます」と伝えられた。

マレフィキウム将軍は、それを聞いてしばし呆然としていた。

“魔王様が直々お会いくださる!”

 仲間の魔将たちで魔王に会ったことがあるという者は、ほとんどがパーピーヤス宮殿の99本の大理石の支柱がある荘厳な「謁見の間」か「大広間」でお会いしたと言っていた。


「欄玉の間」でお会いしたなどという話を聞いたことがあるのは、『血の粛清』の時にルゾードに呼応して粛清に参加した魔王の幼なじみたち― 腹心の部下― で、『魔の血判状』に血印を記した者たちだけしかないと聞いている。

 もちろん、マレフィキウムの父もその一人であり、マレフィキウム自身、父から「欄玉の間」のすばらしさを聞いてはいる。



 案内の魔軍の将校に先導されて壮大な魔宮殿『パーピーヤス』の中を歩く。

何度か廊下を曲がり、中庭を過ぎ、長い廊下をわたり、魔王ルゾードが待つ部屋に到着した。

部屋の前には大きな扉があり、両脇に控えていた魔衛兵が扉を開く。


 この部屋が「欄玉の間(らんぎょくのま)」と呼ばれる魔王のお気に入りの部屋だ。

百平方メートルほどの部屋は、壮大な規模を誇るパーピーヤス宮殿の中ではごく小さい部屋と言えるだろう。

 しかし、マレフィキウム将軍は、魔王ルゾードがめったに他人をその部屋に入れないということを聞いていた。そして、その魔王お気に入りの部屋に入れるのは、魔王のお気に入りの客人か特別な部下だけだということも。


 魔王が特別な者しか招き入れないという欄玉の間で魔王に謁見するのだ。

歴戦の猛将マレフィキウムも緊張し、なぜか心臓が高鳴るのを感じた。


意を決して、ヘルムを左手に持ち、部屋の中へ入る。

「魔王様、マレフィキウム、ただいま着きました。」



 魔王ルゾードは「欄玉の間」の奥まったところにいた。 

距離にして十数メートルほどのところに王座があり、魔王はそこに座っていた。

魔王の眼光は鋭く、マレフィキウムを貫くようだった。

マレフィキウムはスッと体が冷え、背中に冷や汗が流れるのを感じた。


 魔王の年齢は140歳だと聞いたことがある。

元エルフ国の聖域だったアルフヘイム― 今は魔都カーマダトゥーと呼ばれているが― に住むようになってから歳は取らなくなったと言う。

 それにしても百歳を超えているとは思えないほどの覇気と想像を絶する力がその体から発散されているのが感じられる。


しばし、マレフィキウムを見たあとで、魔王は抑揚のない低い声で言った。

「ギレフィキウムの息子よ、よく来てくれた。立派になったのう!」

「はっ、魔王様もご剛建(ごうけん)のようで何よりです。」

「そちの働きはよく聞いておるぞ。さすが我が友 ギレフィキウムの息子!」

「はっ、ありがたきお言葉。恐悦至極(きょうえつしごく)にございます」

堅苦(かたぐる)しい挨拶は抜きだ。近くへ寄るがよい」


 そういうと、魔王は横を見て少しうなずいた。

マレフィキウムは気づかなかったが、側付きの者がいたらしく、玉座の前に豪華な椅子をもってきて置いた。

“この俺でさえ察知できなかったとは、相当な者だな...”

側付きの者が消えて行った方をわき目で見ながら思った。


 魔王はマレフィキウムを見て、椅子を手で示した。

彼は恐る恐る前へ歩きだした。魔王の姿を正面に見ながら、その周りの装飾をそれとなく観察する。

壁は一面にアクアマリンらしい透き通った水色の宝石が美しい模様で散りばめられていて、その周囲は白金の装飾で飾られていた。床にも一面にアクアマリンらしい青いタイルが張られている。

さすが魔王がお気に入りの部屋というだけあって、息をのむような美しさだ。


 魔王の前に来ると側付きの者が置いた豪華な椅子に座った。

魔王ルゾードとの距離は3メートルもない。魔王の息づかいが聞こえるようだ。


 彼が椅子に落ち着くのを見て

「マレフィキウム副軍団長、貴公をわざわざここに呼んだのは、ある問題を解決してほしいからだ。」

「問題の解決ですか?」

「うむ。このルゾードにも不可解な事が起きてな...」


 そういうと、魔王はふたたび、今度は先ほどとは反対側を見てうなづいた。

角から現れたのは、深紫のコスチュームを着て銀色のマントをはおった痩せた魔族だった。

その足さばきから、この者もただ者ではないとマレフィキウムは感じた。


「こちらは、貴公の父上・ギレフィキウム将軍と同じ『魔の血判状』の同志であった、先代ラヴォルジーニの息子だ。魔軍の総軍統括を担っている者だ」


ラヴォルジーニと言う男、どうやら魔王の腹心の一人のようだ。歳も魔王と同じくらいか。


「マレフィキウム殿、ラヴォルジーニです。あなたのお父上とは親しくしていただいておりました。」

「マレフィキウムです。初めまして」

「この者が、今、私が言った問題について説明する。」



 ラヴォルジーニが語ったところによると、今から11日ほど前、イーストランジアの南部でヤマト軍と対峙していた第六軍の司令部がヤマト軍の奇襲部隊の攻撃を受けた。

 そして軍団長バメロス、副司令官グゴスモが殺され、ヤマト軍の奇妙な新兵器、もしくは魔法によって司令部のあった町はいたるところが破壊され、魔軍将兵の多くが殺され、さらに魔軍の前線にも奇襲攻撃が加えられ、軍団長および副司令官を失ったこともあり、第六軍はパニックに陥って戦線を放棄し北へ逃げ出したという。


「だ、第六軍が総崩れで、軍団長も副司令官も殺された?!」

「前線、後方合わせて100万近い兵力が展開していたのだが、調査では2万人ほどが戦死か行方不明になっている」

「!」


さすがのマレフィキウムも、そんな事は聴いたことがない。

まさしく、前代未聞の事態だ。



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