11-36 ナユヤは誰の娘?
「パジェ...?」
ツピナンバが呆然として老女のいたところを見た。
そこにあるのは、老女がいつももっていた細長いカラパーバの木の枝だけだった。
「神を冒涜する言葉を言ったパジェーは生きたまま地獄に落とされました!」
ランが芝居っけたっぷりに厳かな口調で言う。
ザワザワザワ…
カインガー族の有力者である大酋長や酋長たちが動揺する。
(アイミさん、オーケーよ。大首長の家の中には誰もいないわ!)
ツピナンバの家の中をカメレオンスキルを使って見て来たミユが念話でアイミに伝える。
次の瞬間、アイミが手を軽くふると大酋長のバカでかい茅葺の家が轟々と燃えはじめた。
「!」
「!?」
「ゲッ!」
「XXX!」
「XXXXX!」
カインガー族の有力者である大酋長や酋長たちは大騒ぎだ。
アイミの火属性魔法、紅蓮のファイアープルームは5分もかからずに大酋長の家を焼き尽くしてしまった。
「神はすごく怒っています。まだ誰か神の力を疑うものはいますか?」
「「「「「「「「「「ヘヘ――――ッ!」」」」」」」」」」
カインガー族の有力者である大酋長や酋長たちは地面に頭をこすりつけた。
そのあとで、レオたちはほかの有尾族の酋長たちを訪問してまわったが、中でもカインガー族に攻めこまれ、部族戦争で負けたことでカインガー族の奴隷にされていたパタチョン族は、かなり悲惨なことになっていた。
カインガー族は奴隷になったパタチョン族の戦士たちの片耳を削ぎ、酋長ラオニの5人の息子たちを殺し、そのヨメたちをツピナンバやその息子たちの性ドレイにしたのだ。
そして、パタチョン族が反抗しないようにラオニ酋長とその妻たちと孫たちを人質としてブタ小屋に閉じこめていた。
ブタ小屋からオニ酋長とその家族や孫たちを解放したレオたちは、ランやオリヴィアたちが、ラオニ酋長の妻たちや孫たちに水を使わせて体を洗ってあげ、アイミが回復魔法をかけて全員を元気にした。
レオがほかの部族の酋長たちを訪問し終わったころ、ランから念話連絡があった。
(パタチョン族の酋長家族が身なりを整えたので、あらためてアイミ女王さまとレオ王さまにお礼をしたいと言っているわよ?)
レオたちはゲート魔法でパタチョン族の部落にもどった。
高床式のラオニ酋長の家に入ると、酋長の家族全員が下座に座り、全員頭を床につけていた。
彼らは全員、ランたちが用意した既製服を着ている。
たぶん、本来は裸同然で暮らしているのだろう。
そこをランたちが気を利かして、『ユウラブ』ブランドのアパレル製品をもって来て着せたようだ。
レオたちの座った上座の前には、彼らのとびっきりのご馳走や果樹酒がたくさん並べられていた。
とびっきりのご馳走といってもコウモリの丸焼きとか、バッタや大きなアリを炒ったものなどだ。
しかし、“郷に入っては郷に従え”だ。
レオは遠慮なく、それらのご馳走を食い、かなり強い果樹酒を飲み、ランやオリヴィアやミユにも勧めた。
当然、彼女たちはそんなモノは食べなれてないので躊躇していたが、
(オレの言うとおりにしたら、次のデートでは特別サービスをするよ!)
レオの“殺し言葉”に、ランやオリヴィアたちは競争するように食べ始めた。
ただ、アイミだけが「神様は人間の食べ物を食べません!」という都合のいい理由をつけて食べなかった?
ラオニ酋長たちは、それを見て多いに満足したようで、さらにご馳走をもって来るように言った。今度はセミの幼虫やトカゲの串焼きや川魚を焼いたものなどが運ばれてくる。
運んでくるのは酋長の孫娘たちで、みんな12、3歳くらいだが、その中に特別にレオの目にとまった少女がいた。
そのパタチョン族の少女は、面立ちがほかの同族の娘たちとは違い、耳も先端が少しとがっている。
ラオニ酋長が、なにか言いはじめたので、そちらに気をとられているうちに、その美少女はどこかへ消えてしまった。
「レオ、ラオニ酋長は、『今の孫が気に入ったかね?』と聞いているわよ?」
ランが通訳を通して聞いた酋長の言葉を伝える。
「ん?ああ、あの子は耳がとがっているし、顔立ちも少し違うなと思って...」
「あの子の名前はナユヤ、15歳でエルフの血がまじっているんですって!」
「えーっ?エルフとの混血―――っ?」
「それで、彼女の親エルフは誰なんだ?」
「XXXX、XXXXX!XXXXX」
「なんでも百年ほど前に、このあたりの調査に来たトンシという... あら、それって...?」
「間違いないよ、あのトンシー大先生だよ!」
「XXXX、XXXX XXXXXX!」
「トンシ師は酋長のひいおばあさんと熱烈な恋をして、子どもが生まれたけど、産後の肥立ちがわるくてひいおばあさんは亡くなってしまったんですって!」
「そうか... トンシー大先生が若かりし日のオマゾンでの大恋愛だったんだな...」
「それで、ラオニ酋長は、せっかくの機会だから、ナユヤを都会に連れて行ってほしいと言っているわ!」
「XXXX、XXXXXX!」
「な、なにを酋長さんは言ってニヤリと笑ったんだ?」
「レオの妾にしたらよかろうですって...」
「クッ... オレが美女好きってのがバレているな。とにかく、本人に聞かないとダメだと言っといてくれ!」
そう言うとレオは立ち上がり、先ほどの美少女と話すために外に出た。
昼下がりでいくぶん涼しくはなっているが、まだ暑い。川風が吹いて来て少し涼しさを感じる。
しばらく川の方に向かって歩くと、岸辺に繋がれている小舟の中に先ほどの少女がいるのが見えた。
ナユヤは小舟の中でスヤスヤと眠っているようだ。
ランたちが着せたカラフルなレオタードみたいなものを着ている。
呼吸をしている胸は小ぶりだ。これはトンシー大先生の血を引いている証拠だ。
エルフの女性は、アイミの例を見てもわかるように、あまり胸がないのだ。
レオがそばに近づくと、ナユヤはゆっくりと半身を起こした。
(やあ、ナユヤちゃん!)
(!)
(驚かなくてもいいよ。これは心で話すことができる念話というものだよ)
(念話...?)
ナユヤは初めての念話に戸惑っている。
(君にはエルフの血が流れているんだってね?)
(はい。私のひいおじいちゃんが、エルフのエライ人だったそうです)
(道理で美人なはずだ!)
(び、美人...?)
(うん。みんなナユヤのことを美人って言うだろう?)
(いいえ、私はパタチョン族の中ではブスと言われています)
(えーっ、ブス?)
“こんな美人をブスなんて、有尾族の男たちは目がないんじゃないか?”
(だから、カインガー族の男たちも私のことなど見向きもしなかったのです...)
“は~ん... 有尾人の美女観って、オレたちとは違うんだなァ…”
(レオ王さまも、私をブスだと思っているでしょう?)
うつむいていた少女は、そっと上目づかいにレオを見た。
ナユヤの目の色はやや青みがかっている。これもエルフの血のためだろう。
(いや、ナユヤはすごい美女だよ!)
(私をなぐさめようとして、心にもないことを言わないで...)
「フギュッ!?」
100倍速でレオはナユヤを抱きしめ、その愛らしい唇にチューをした。
有尾族の美少女は青い目を大きく見開き、おどろいてレオを見ている。
(オレは好きだな。美少女は!)
「フギュギュギュッ!(私はブスですし、未婚です!口づけをするのは結婚する相手とだけです!)」
(じゃあ、オレと結婚しようよ!)
「フギュッ?(えっ?)」
「オレはもうナユヤと結婚するつもりだよ?」
そう言いながら、レオはふっくらとしたナユヤの胸をさわっている。
「フニュフニュ...(わ、私のおっぱいを...)」
「結婚するんだからいいだろう?オレはナユヤのダンナさんになるんだよ?」
「フニュニュ... フニュニュニュ?(わ、私がレオ王さまのオヨメさんに?)」
「イヤかい?」
プハ―――ッ!
ナユヤは口を離すと、少しとろんとした目できっぱりと言った。
「ぜひ、オヨメさんにしてください!」
そう言うと、レオのひざの上に仰向けになって半身をあずけた。
レオはふたたびナユヤの愛らしい唇にチューをした。
片手でナユヤの上半身を少し持ち上げると、もう片手でレオタードのジッパーをスルスルと腰まで下ろし、レオタードを脱がした。
小麦色の健康そうな体が露わになる。
午後の陽に照らされたナユヤの体は、ムダ肉も余分な脂肪もない美しいものだった。
レオがじ――っとナユヤの体を鑑賞していると―
(ダ、ダンナさま... はずかしいです!)
顔を両手で覆ってナユヤが恥ずかしがる。
(ナユヤ、これから夫婦の契りを結ぶよ!)
(は、はい、ダンナさま)
(少し痛いかも知れないけど、ガマンできる?)
(オ、オヨメさんになるためなら、痛くてもガマンします!)
.........
.........
.........
ナユヤはレオと夫婦になった。
酋長の家の中にいた奥さんたちが、ヤシの木陰からレオとナユヤのセレモニーを見ていた。
ランもアイミもミユも上気した顔をしている。
(ダンナさま、私にもオヨメさんの天国を見せてください)
(ダンナさん、わたしも小舟の上でしてほしいわ!)
(ダンナさま、ここでは恥ずかしいし、神様と人族のラブシーンなんて有尾族には見せられませんから、ほかの場所に連れて行ってください!)
シーノに時間の流れを遅くしてもらってナユヤを木陰に運んだあとで、ランを小舟の上で天国に導き、ミユも同じく小舟の上で天国に行かせた。
そしてアイミはヒダ山脈の山奥のシンホダカの秘湯に連れて行って、恐れ多くも(?)神様を真っ裸にして天国へ導いたのだった。
アイミは今回のオマゾン攻略で大いに役立ってもらったので、その分、大目にサービスをしておいた。
ナユヤは、めでたくレオのオヨメさんになり‐まだ結婚式は挙げてないが‐オクタゴンパレスにいっしょに住むことになった。
ナユヤは有尾族だが、シッポのある奥さんはミユもいるし、モモも短いがシッポがあるのでまったく違和感も問題もない。
トンシー大先生は、若かりしころの恋の結実が、このような美少女のひ孫となって現れたのに大感激して、ナユヤの父親代わりになることを決意した。
* * *
そのころ、ナンバ市でもっとも交通が激しい中心街の交差点では大渋滞が発生していた。
御者たちが馬車の鈴をやかましく鳴らし、普及しはじめた自動車がクラクションをうるさく鳴らしている。
見ると、交差点の真ん中に、腰に古びた皮の腰巻をつけたシワクチャ婆さんが、腰が抜けたように座り込みガタガタふるえながら意味のわからない言葉を叫んでいた。
「XXXX、XXXXX、XXXXX、XXXXXX!XXXXX!」
(神様、おゆるしください。もう二度と神様を冒涜しませんから、アタシをこの地獄からお救いくだださい!)
老婆の名前はパジェ。
カインガー族の元シャーマンだった。




