11-34 人魚姫の恋②
セレシアはレオにチューをされていた。
イマジャーやナラジャーからは、遊び半分にチューをされたりしたことはあるが、男にチューをされるのは初めてだ。
はじめはおどろき、とても恥ずかしがったが、じきにチューを吸されるのが心地よくなって来た。
すると、レオがなんだかしきりに自分の胸をさわっているのに気がついた。
はじめは知らん顔をしてチューをされるのに夢中になっていたが‐もう、その時はかなりディープなチューになっていたが。
(レ、レオ王さま、そんなことをしては困ります。みんなが見ています...)
(え、誰が見ているって?)
セレシアは閉じていた目をそっと開けてみた。
左に見える、上座の座り心地のよさそうな寝椅子に座って上半身だけを水面から出しているゴリュテイル王とメリュジーネ王妃は、宣誓台にいるレオとセレシアを見てはいるが、その視線は固定されたままで二人は身動きもしない。
台の横にいる前エルフ女王だと紹介された司会のエスティーナさんも食い入るような目つきでセレシアたちを見ているが、それも視線が固定されている。
左側にいる招待客たちも、拍手の途中でストップしたり、大きく口を開けて何かを叫んでいるような姿のまま止まっている。
力をこめてレオの胸を押し、離れてあたりを見ると、すべてとまっているようだ。
(こ、これは?!)
(この世界の時間は、オレたち二人だけのために動いているんだよ!)
レオが言っている意味がまったくわからない。
「?... フギュッ!」
するとふたたびレオに強く抱きしめられチューをされた。
“ナニ、この状況?まるで周りの時間が止まっている感じ。こんなだと、レオさまは私に何でもできるじゃない?レオさまの力は強すぎて抗うこともできないし…”
さすがのセレシアもレオの力の前には赤子のように何もできない。
レオは遠慮なくセレシアのあちこちをさわっている!
そして、なんということか―
レオはセレシアの水色のビスチェタイプのトップを引き上げた?
「!」
あわててレオの手をのけようとするが、まったくかなわない。
あっという間に胸をはだけられてしまった。
(レ、レオさま、私たちまだ婚約したばかりです!)
(もう将来オレのオヨメさんになるんだから、婚前交渉っていうことでいいんじゃない?)
(ピュ――――――?)
密着しているレオの身体の下腹部の何かがセレシアに押しつけられている。
“こ、これって、まさか... いや、間違いないわ、これは人族のアレ…”
「ウーン...」
このままではあぶないと思ったセレシアは全力でレオの身体を押そうとするが、ビクともしない。
それどころか、白いサンゴ礁のビーズで作ったベルトが外され、ロングタイトスカート風の衣装がズリ降ろされた!
(レ、レオさま?!)
“こ、これからどうなるの? このままレオさまと夫婦のコトをするの?
人族とのコトって、どんな風にすればいいかも知らないのに…”
ザバーッ!
レオは真っ裸にしたセレシアを水の中からあげて宣誓台の上に横たえた。
(は、恥ずかしい!)
下半身はどうしようもないが、せめて胸だけでも隠そうとしたがムダだった。
レオの怪力の前にはセレシアは非力すぎた。
“ああ、イマジャー、ナラジャー、私は今日、ここでヴァー〇ンを失くします…”
観念したセレシアは、抵抗するのをやめた。
しても無意味だとわかったのだ。
それに婚約をしたレオとの婚前〇〇は、誰でも許してくれるだろう... と思った。
レオは“まな板の上の人魚姫”をゆっくり眺めた。
覚悟を決めたらしく、人魚姫はジタバタ抵抗することをやめた。
じーっとレオの目を、その深い藍色の瞳で見つめている。
「セレシア... 愛しているよ」
「ワシシモ アイシテイマス」
知能の高い人魚である姫は、かたことの言葉で一生懸命に覚えた愛のフレーズを言った。
レオは愛おしくなって、人魚姫に深ーいチューをした。
(レオさま、大好き... 私をたくさん、たくさん愛してください...)
(うん。オレはセレシアを大事にするよ...)
(うれしい!)
体のあちこちをさわらながら、だんだん気持ちよくなっていた。
肩を大きく上下させて息を吸いながら、セレシアは思った。
“人族のさわり方って、イマジャーやナラジャーとは比べものにならないわ…”
そしてレオのパンツがもっこりとしているのを見て
“人魚族でないレオさまは、人魚である私とうまくできるのかしら?”と少し心配した。
......
......
しかし、それは杞憂に終わった。
レオはたっぷりとセレシアを気持ちよくさせてくれたが、最後までしなかったからだ。
ということで、セレシアが覚悟を決め、期待をしていた“夫婦のコト”は初体験することができなかった?
そのあとで、レオは丁寧にセレシアを洗ってくれ、服を着せてくれた。
すべてが元通りになったとき、“なぜ最後までされなかったのですか?”
と言いたげなセレシアの瞳を見てレオは言った。
「それはね...オレは人族だろう? そのオレのオヨメさんは、人族じゃなければ共同生活できなじゃん?」
(そ、そんなことおっしゃられても、私は人魚です... 私にどうすればいいとお思いなんですか?)
(回答は... 神様にお願いすることだね!)
セレシアは、ちょっとショックを受けたようすで、両親のいるところに泳いで行った。
司会役のエスティーナは、「それでは“愛の口づけ”を!」と告げたあとで、レオと人魚姫にさらに近寄って“特等席”で愛のシーンを見ようとしていたのだが―
なぜか、興味津々だった今日のクライマックスシーンは、いつの間にか終わってしまったようだった。
「?」
エスティーナは、レオに近づくとそっと聞いた。
「レオさま... もう、“愛の口づけ”は終わられたのですか?」
「はい。セレシアが恥ずかしがると思って、瞬速でしました」
エスティーナの身体があまり近すぎて、ビーチドレスの胸元から立ちのぼる元エルフ女王の匂いを嗅ぐことができた。その甘い香りとフェロモンがレオの脳を直撃し、セレシアと最後まで行かなかったため欲求不満になっていたのが、猛然と反応する。
(シーノ...)
(ええっ、ま、まさか、お兄ちゃん... 元女王様とするの?)
(し、しないよっ ただ、どんなきれいな身体が見たいだけ!)
しどろもどろになるレオ。
(お兄ちゃん... 見るだけじゃすまないでしょ?)
(... ちょっとお肌に触りたいだけだよ。エスティーナさまにダンナさんがいるってことくらい知っているよ)
(しょうがないな... でも、私はお兄ちゃんの守護天使。お兄ちゃんの望みをかなえてあげないとエタナール様に叱られちゃうわ)
百分の一秒でシーノとの念話は交わされた。
そして―
フリーズ・スクエアがシーノによって発動され、すべてが再びフリーズした。
セレシアも、ゴリュテイル王にもメリュジーネ王妃も、レオの奥さんたちも招待客たちも。
そしてエスティーナさえも!
レオはビーチドレスから伸びてるエスティーナの白い腕にふれた。
すべすべした若い女性のような肌だ。
エスティーナは、彼女の前にエルフの女王であったエフィジェンヌ女王が早期老衰で亡くなったあとにエルフ族を率いてエルフ国奪還の戦いを起こした女王だった。
だが、エルフたちは“神聖な山”ミトラカルナー山から遠く離れて暮らすようになったため、エフィジェンヌ女王やほかのエルフたちが長生きできなくなり、人族並みに百歳まで生きれずに亡くなる者が続出し、若いエルフも人族並みに年老いはじめ、わずか60歳であった新女王エスティーナも、人族の60歳の女性同様の初老のエルフになってしまっていたのだが、勇者グループと同盟国軍によってエルフ国が奪還されアルフヘルムにもどって住むようになってから、見る見る間にエルフたちは以前通りの“若さ”をとりもどすことができた。
そして、エスティーナ女王もまた、60歳の若いエルフの容姿にもどっていた。
エルフの60歳は、人族でいえば二十歳くらいの肉体年齢だ。なので、レオは二十歳ほどのエスティーナ前女王の腕にさわっていたのだ。
レオは、少し前屈みになっているエスティーナのひそやかな胸のふくらみをさわる。
エルフの女性はあまり胸がないのが特徴なのだ。
しかし、胸は胸だ。
ふっくらした胸は揉み心地がいい。
レオはビーチドレスの脇から、エスティーナの胸にふれた。
柔らかい胸の感触にレオは堪らずに数度揉む。
それから白いビーチドレスを脱がした。
オムルカル湖を照らす強い陽射しの下で
ピチピチの美しい60歳のエスティーナの身体が露わになった。
二人の子どもを産んでいるとは思えないほどの美しい体だった。
それに、すでに結婚をしているからだろう、
処女にはない人妻の色香を感じさせる身体だった。
レオはエスティーナの白い体に手を伸ばした...
.........
.........
.........
人魚王一行の儀礼訪問は大成功で終わった。
婚約式まで行われるという予想以外のハプニングも起こったが、
人魚王と人魚王妃は大満足で帰って行った。
あとは結婚式の日取りを決めるだけとなった。
しかし、あの日以来セレシアは悩んでいた。
あの日、彼女は覚悟を決めていたのに、
レオ王は彼女と最後までしなかったのだ。
“人族の女性とじゃないとできない”
と言外に告げられたのだ。
思いあまったイマジャーとナラジャーに相談してみたが―
「あーっはっは!なに言っているの、お姫さま? そんなのレオ王がハネムーンまで“とっておく”っていうことじゃない?」
「尾びれがあろうが、足があろうが、人魚も人族もオトコの〇〇〇は同じくらいのサイズだし、何の問題もないはずよ!安心して結婚しなさい!」
とまったくとりあってくれない。
“いや、そんなのじゃないわ...
レオさまは、私に“オレの生活に適合しろ”っておっしゃったのよ。
でも、どうすればいいの? 尾びれを切り取って人族の女の足でも植えつけろって言うの?”
考えても考えても答えは見つからなかった。
思い余ってブージアお婆ちゃんの洞窟にも行ってみたが
「そりゃ“エタナール様に頼む”しかないのう...」
と言われただけだった。
勇者王国から水晶宮に使者が訪れ、結婚式の日取りのが決められた。
結婚式は、10月の吉日にとり行われることが決定した。なんでもセレシアといっしょに、有尾族の酋長の孫娘と人族の王女との結婚式も同時に行われるそうだ。
ゴリュテイル王とメリュジーネ王妃は、それを聞いて、
「さすが3百人の妻をもつレオン王、結婚式も数人と同時に行うとは豪傑じゃ。わーっはっはっは!」
「本当ですわね。もう300人も妻を娶っておられるレオ王さまらしい豪胆さですわ!ほーほっほ!」
と高笑いするのだった。
セレシアは久しぶりにオクタゴンパレスの温室にあるプールに来ていた。
今日はイマジャーもナラジャーも連れていない。
一人になって考えたかったのだ。
プールの底に沈んだまま、泳ぎ回る色鮮やかな熱帯魚をみていると、プールの中をのぞきこんでいる子どもがいた。
“あ、あの子はレオさまとアイミさまの子、アイちゃん…”
セレシアは水面に浮かびあがり、アイにあいさつをした。
(アイちゃん、こんにちわ!)
(こんばんは、セレシアさま)
(セレシアでいいわよ)
(いえ、ママからは年上には敬意をもって接することって言われています)
(そう。あなたのママはすごいエルフさんね...)
(セレシアさま、悩みをもっているのですか?)
(えっ? あ、うん、お年頃の悩みっていうやつよ)
(......)
アイが静かになった。
すると、セレシアの見ている前の空間が揺らいだように感じた。
(えっ、これは?)
(ママよ!)
直径3メートルほどのその揺らぎはまるで池に石を投げたかのように大きく揺らいだ、と思った次の瞬間に淡いオレンジ色の光を放ちはじめ、一瞬強く光ると、そこには立派な作りの書斎のような部屋が映り、アイミがそこからこちらに歩いて来た。
(ア、アイミさま?)
(セレシアさん、どうなされましたか?)
(えっ?)
(アイがセレシアさまが、とても悩んでいるからママ、手伝ってあげてって連絡をくれたのですよ)
(じゃあ、今まで...)
(はい。アルフヘイムの女王の部屋で仕事をしていました)
(どうもすみません。お仕事中だったのに...)
(いえいえ、今日はもう終わりでしたのよ... それで、悩みというのは、レオさまとの結婚のことですか?)
(え、どうしてそれを?)
(ふふふ。年頃のあなたが、もう幸福になることが決まっている結婚式を前に悩むことって...
その身体のことなのでしょう?)
(はい... 私は人魚として生まれたのですから、一生人魚で過ごすつもりでおりましたけど、
レオさまが、自分は人族だから...)
(生活を人族に合わせてほしい、とおっしゃたのでしょう?)
(は、はい...)
(まったく、あの人は... 無理難題を押しつけておいてアドバイスの一つもあげないなんて...)
(いえ、アドバイスはいただきました。“神頼み”をしなさいって)
(あら、じゃあ解決法は教えてあげたのね?)
(?)
(さあ、私といっしょにいらっしゃい。今から改心殿に行きましょう!)
アイミはランを呼んで、ふたたびゲートを開けてアルフヘイムに最近建てられた改心殿に着いた。
エルフ国ではすでに夜なので改心殿も閉まっていたが、警備のエルフ衛兵たちはエルフ女王が話すとすぐに扉を開けてくれた。
警備兵たちは、突然、人魚を連れたアイミが現われたので驚いているが、エルフ女王のすることに口は挟まない。
ランの念動力でセレシアを浮かべて移動し、長い通路を渡り‐通路の壁も天井も意味不明な模様(魔法陣)が描かれている‐改心殿の本殿に到着した。
本殿は千人は入れる広さだ。
ずーっと前の祭壇間近まで行くと、ランはセレシアを長椅子に置いた。
(さあ、エタナール様にお祈りを捧げましょう!)
(はい!)
改心殿の通路を通っていたときから、セレシアは体がムズムズするのを感じていた。
本殿は高い天井と美しい装飾がほどこされた壁で作られていたが、ここではさらにビッシリと意味不明な模様(魔法陣)が一面に描きこまれている。
本殿に入り、お祈りをしはじめると、セレシアの体が熱をもったように熱くなって来た。
ランが急いで外に出て行き、すぐに水を入れたバケツとバスタオルを数枚もって来て、バスタオルをぬらすとセレシアを包んでくれた。
セレシアの身体を包んでいるバスタオルから湯気が立ちはじめた。
ランはセレシアの体温が上がり過ぎないように、しょっちゅうタオルを水で濡らして包んでくれる。
セレシアは体が高熱を発しながらも、お祈りをやめなかった。
30分ほど経ったとき、セレシアは気を失ってしまった。
人魚姫の身体が小刻みに震えている。
ガタガタガタ... ガタガタガタ... 長椅子が揺れるほどのふるえだ。
そして、ビクン、ビクンとセレシアの体が大きく揺れて収まった。
「ランさん、タオルを替えてあげてください」
「オーケー!」
ランが3枚のタオルを取ると、なんとその下からは真っ白い女性の裸体があらわれた!?
「!... セレシアちゃんが女になっちゃった!?」
そこに横たわっている美しいボディラインをもつ身体は、たしかに人族の若い女性そのものだった。
おっぱいはやはり圧倒的に美しく形がいい。腰へのラインはヴィーナスの像のようなカーブを描いている。下半身を覆っていたウロコ状の模様はすっかり消えてしまい、すらっとした二本の長い足があり、ちゃんと水色の茂みまで生えている。どこをどう見ても、人族の女性そのものだ。
アイミもランも、人魚姫と同じ女性でありながら、人魚姫の美しさにおどろいていた。
スヤスヤと安らかに眠っているかのようなセレシアを見ながらアイミが言う。
「この子は純粋なのね... ふつう、魔族だったらほぼ10時間くらいかかるのよ」
「へえ、そうなの?」
「気持ちが純粋で、祈りが強いほど変化に必要な時間は短くなるし、結果もさらによくなるのよ」
「じゃあ、私が“人魚にしてください”って祈ったら、人魚になっちゃうのかしら?」
「えっ?ランさん、あなた今の、その美しい身体に不満でもあるの?」
「いえいえ、まったく文句はありませんことよ、エルフ女王さま!」
ランがおどけて言う。
「ランさん、すまないけどさっきの衛兵に、私たちはこの本殿から勇者王国へゲートで帰りますって伝えてくれない?」
「そうね。タオルに包んだ裸の婚約者を連れて歩くわけにはいかないものね!」




