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DK世界に行ったら100倍がんばる!  作者: 独瓈夢
ラストウオー
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11-25 オマゾンを救え①

 ゴゴゴゴゴ…


水をかき分け、巨大な黒い鋼鉄の船体が水流に逆らってオマゾン川の上流を目指して進んでいく。

魚たちや亀たちがおどろいて逃げていく。黒い鋼鉄の船は一隻ではない。

百隻近い数の海中船がオマゾンの水流を押しのけて進んでいく。



 魔軍の海中船艦隊だ。


 3か月前のゾオル攻略作戦では、魔軍は予想もしてなかった同盟国軍の新型飛行兵器とドワーフ軍の緊急展開部隊(戦車部隊)のために大敗を被ってしまった。

 魔軍は魔将兵55万以上を失い― そのうち、20万近くが捕虜になったことを魔軍は知らない― 戦車も4500台、飛行輸送戦艦2隻、飛行巡洋艦10隻、快速飛行戦闘船150隻以上が破壊されたのだ。


 その結果を見て、魔王ルゾードはゾオル攻略第二陣を送るのを中止し、『炎の地獄作戦』の見直しを命じたのだった。

 『炎の地獄作戦』は3段階で実施される計画で、第一段階で獣人族国の首都ゾオルを攻略。

これにはゴルゴーン軍団長の新設第六軍の120万の軍を二回に分けて飛行輸送部隊で送り込み、

奇襲速攻で獣人族国首都を占領する予定だったが、その緒戦で第六軍は半分近くの兵力を失ったのだ。

 それに魔軍の新兵器飛行輸送船には致命的な問題があることが判明したのだ。

飛行船を浮かばせるためには、船体内にある水素ガスを詰め込んだ浮揚用ガス袋と浮遊魔法陣を使うのだが、その水素ガス袋が銃撃などを受けると簡単に爆発するということがわかったのだ。


 『炎の地獄作戦』の第二段階は、獣人族国東部・東北部に籠っているバリゾディス軍団長の魔軍第五軍に、飛行輸送部隊で100万の援軍を送り込むことだった。

 ゴルゴーン軍団長の第六軍に、ゾオルを攻略させたあとで北上させ、第五軍を南部から攻めている獣人族軍をバリゾディス軍団長の第五軍と共同で包囲、壊滅させ。

  

 そして第三段階で、トロール国南部に展開しているザーディス軍団長の第四軍へ飛行輸送部隊を使って援軍100万を送りこみ、そして175万に増えた第四軍とボリゾディスの軍団長の第七軍100万を飛行輸送部隊で獣人族国東部の獣人族軍の背後に展開して、包囲殲滅する。

 これをもって獣人族国を完全に制圧し、獣人族国の豊かな資源と工業力を利用して次の段階‐鬼人国占領と人族連合占領に乗り出すという壮大な計画だったのだ。


 ほぼ三日間で50万以上の兵力を失ったことに、魔軍総司令部は色を失い、ゴルゴーン軍団長は呆然となった。

 しかし、ゴルゴーンは事態がさらに悪化することを予測し、二日目の早朝に、首都ゾオルから西に90キロのところに位置するアイラベルダ市占領を目指していた魔軍部隊5万人を飛行巡洋艦に載せて魔軍の占領下にあるトロール国南部に急遽移動させた。


 ナーガラジャ司令官の獣人族国軍は、この際、獣人族国の西南部国境あたりからトロール国の東南部にかけてを勢力圏内にしているオロブマム軍団長の魔軍第三軍を殲滅する決意で、同盟国軍の協力を要請したのだ。


 一番最初に獣人族国軍の協力要請に手を挙げたのは、トロール国のドゥダン・ダュダロス王だった。

トロール国では、前王であったオンドロワス・ダュダロスがまったく無能であり、悪臣たちにいいように利用されるだけの王に過ぎなかった。

 トロール国は魔軍に侵略され、それまで“ミィテラの世界最強の種族”という誇りに安寧として、長年、自分たちの領土に攻め入って来る者はいない、と安心しきっていたトロールたちは、軍とはほとんど名だけのものであり、軍事訓練もロクにやってなかった。


 そのため、魔軍が侵攻して来たとき、またたく間に圧倒され、全領土を失ってしまった。

王族は獣人族国へ亡命し、 獣人王ゼリアンスロゥプ大王のお情けによって食料を補給してもらい何とか生き延るという、実に情けない状況にあったのだ。

 それが、カイオたちの計画を聞いたトロールの若者たち‐主に王子たちや王族の子女であるが‐は、“誇りあるトロール族と偉大なるトロール国”の名を復活させるために、有志を集めて造反を起こし、改革を実施したのだった。


 カイオ、イザベル、アイミの助力もあって、第一王子ドゥダンと第二王子のドヮグマをリーダーとする改革グループは、悪臣どもを逮捕し、裁判にかけて全員監獄にぶちこみ、王子たちの父親であるオンドロワス・ダュダロス前王を退位させ、若者たちの考えに理解のある母親のドヮララ王后を後見人として協議制による新体制をスタートさせた。

 そして、第一王子、第二王子はそれぞれ宰相、副宰相となり、ほかの主だった王族の子女たちもそれぞれ要職につき、新生トロール国が誕生したのだった。


 新体制下で軍事力を強化したトロールたちは、母国を魔軍の手から取りもどすために、獣人族国のほぼ中央にある避難地―バステト― からほぼ1万キロの距離にある魔軍の占領下にあるトロール国の首都を目指して長征を開始した。

 バステトで祖国を魔軍の手からとりもどすべく軍事教練を重ねていたトロール軍は以前とは比べものにならないほど強く、これに獣人族国をはじめとする同盟国諸国が兵器、物資などをドコデモゲートで送って支援した。


 行く先々で魔軍部隊を破りながら進軍するトロール軍― 最初はわずか5万だった― には、それまで各地に散らばっていたトロールたちや魔軍に奴隷のように使われていたトロールたちが次々と解放されて加わり、進軍が進むにつれて兵力は増強され、3年後にはついには首都ガラガスを取りもどすことができたのだった。

 そのときに、トロールたちの強い要望もあり、長らく空位となっていた王の座に第一王子のドゥダンが就き、第二王子のドヮグマは副王になったのだった。


 その後もトロール軍は各地で魔軍を破り、さらに領土を取りもどして行ったのだった。

残すのは北方と南部と東部のオマゾン地域だったが、北方はただ魔軍の支配下にあるというだけで、ほぼ無人地域であるので奪回するのは問題はない。そこで、まず獣人族軍と協力して南方の魔軍第三軍を殲滅することにしたのだ。



 *  *  *



 2ヵ月前、人族連合は勇者王国軍の協力で連合国領から獣人族国のオムルガラ川上流に後退し防禦陣を『簪星作戦』(かんざしぼしさくせん)を実施し殲滅した。

 オガースラ軍団長の魔軍第一軍は、前回の人族連合軍の猛攻で130万の兵力はわずか70万にまで減っていたが、それでも堅固な防御線を構築していたことから残りを殲滅するのは難しいと誰もが考え、人族連合軍のオダ・ノブハシ総司令官も麾下の将軍たちもそう考えた。

 だが、勇者王国参謀部のとてつもない計画でもって、わずか一日で作戦は目的を達して完了してしまった。


 モモたち参謀部の考え出した戦術は奇抜というしかなかった。


 なんと、朝もやの腫れ上がったオムルカル湖に人族連合軍海軍の新造戦艦『やましろ』『いずみ』『おおすみ』の三隻をオムルカル湖に出現させたのだ。

 これは、リョースアールヴ(光のエルフ)の中でもっともゲート魔法にすぐれているフィンラによって、幅50メートル、高さ50メートルの巨大ゲートを作り出し、ナンバ湾にあった三隻が移動できるようにしたものだった。


 『やましろ』型戦艦は、全長200メートル、排水量12000トン、出力ディーゼルエンジン13万馬力、最大速度70キロ/時、航続距離1万4千キロ、乗員700名。

兵装は、20連装砲2基4門、30センチ4連奏飛翔弾発射装置4基、20ミリ連装機関銃4基8門、10ミリ連装機関銃10基20門、10ミリ単装機銃20門。

装甲:舷側:127ミリ、上部建造物および砲塔:25ミリという強力な戦艦だった。


 ドワーフ国が3年前に建造したミィテラの世界最初の蒸気機関動力搭載、最初の鋼鉄戦艦『ドワラン・ドンゴ・ロス14世号』は、全長の全長150メートルという大きな鋼鉄製の軍艦で、ドワーフの技術陣が苦労して開発した蒸気機関で両舷側に水車式の推進装置(外輪)のある最新鋭の戦艦だったのだ。

 それまでの船舶の推進力は帆だったのだから、モクモクと真っ黒い煙を吐いて波を蹴立てて進む巨大な黒鉄の軍艦は誰もがビックリ仰天するようなものだったのだ。

 また、飛翔弾発射装置が、それまでの舷側固定式から回転式発射台に変わったのも大発明だと同盟国諸国の海軍関係者を大いに驚かせたものだった。



 しかし、それから3年。

船舶造船技術も軍船建造技術も格段の進化を遂げた。


 天才三人の少年‐ トム、ユーカワ、サムをはじめとするナンバラボの天才技術者たちは、レオのアイデアを次々に実現化して行き、飛行機とともにディーゼル・エンジンを発明し、ナンバ市の海軍造船ドックで建造された『やましろ』級戦艦は諸同盟国をふたたび驚かせた。

 ドワーフの兵器廠は早速ディーゼル・エンジンの製造権を取得して艦船用の新動力として製造をはじめるほどだった。


 人族連合軍の最新型戦艦が、まさかオムルカル湖に出現するとは、魔軍も想像してなかった。

オムルカル湖は、魔軍第五軍の残軍が立てこもっている防御陣地のちょうど背面にあり、周囲を険しい山で囲まれているので戦車なども使えないため、魔軍も安心しきっていて防御もほとんどなかったのだ。魔軍は同盟国軍は南方から来るとばかり想定して南側に強固な防衛線を張っていたのが裏目に出た。


 魔軍が堅固な防衛陣地に立てこもっているため、獣人族軍も攻めあぐねている、とすっかり油断していた魔軍将兵たちは、オムルカル湖に釣り糸を垂れて食料にする魚を釣っていた。

 そこに突如、朝もやが消えかかった湖に、灰色に船体を塗った巨大な戦艦が出現したのを見た魔軍兵士たちは、茫然としてしまった。


 なにか夢でも見ているのか、と目をこする兵士もいた。

しかし、夢でないということは戦艦が砲塔を旋回し、自分たちの方に向けて一斉に砲撃を開始し、飛翔弾が白い煙を吐いてこちらに向かって飛んで来るのを見てわかった。

 さらに、20センチ砲12門が轟音とともに砲口から火炎のまじった煙を吐き出し、陣地や兵舎の方に駆け出していた魔軍将兵を吹き飛ばした。


 戦艦『やましろ』『いずみ』『おおすみ』の三隻はオムルカル湖南岸沿いに築かれていた司令部や兵舎、食料や武器倉庫を20センチ砲と30センチ飛翔弾による猛攻撃で次々と吹き飛ばしていった。

 三隻の戦艦による猛攻撃は30分続き、主砲と飛翔弾が尽きた戦艦はふたたびゲートを通ってナンバ湾に帰って行った。

 すると今度は、戦術的ポイントにリョースアールヴ(光のエルフ)たちがドコデモゲートを10ヵ所に次々と設置し、そこから獣人族の精鋭軍5個師団と勇者王国軍のガネーシャ中佐のリザードマン精鋭部隊が突入したのだ。

 魔軍は完全に虚を衝かれ、司令部が吹き飛ばされたとき残存軍の指揮官たちも戦死したこともあり指揮系統が混乱に陥り、その日の夕方までに魔軍第五軍の残軍30万は制圧されてしまった。


              



挿絵(By みてみん)



 トロール軍と獣人族軍の魔軍第三軍に対する作戦は、オムルカル湖の魔軍残存兵力制圧の一か月後にはじまった。

 勇者王国軍が星座の名前にちなんだ作戦名をつけたのにならって『巨嘴鳥座(きょしちょうざ)作戦』と名付けられた作戦に獣人族軍は20個師団を投入、250万の兵力と千台の戦車・装甲車両のほか、火力不足分を2万台を超える飛翔弾発射装置を積んだ馬車や牛車で補い、圧倒的な火力と兵力でネイボース川右岸一帯に広がっている魔軍占領地域に6方面から総攻撃を開始した。

 トロール国を占領していたのは魔軍第三軍で軍団長はオロブマムだったが、120万いた兵力は、イーストランジア戦のおりに援軍として兵力を割いて送ったりしたので70万しか残ってない。

 それもここ3年間におけるトロール軍の母国解放の戦いで、すでに20万ほど失っている。

さらに第三軍の残こされた存兵力50万のうち、20万ほどはトロール軍にトロール国の中央地域の広大なエリアを奪還されたため連絡もとれず孤立した兵力となって各地に点在していた。


 これら1万とか2万とかいう小規模の魔軍部隊は横の連絡もとれないために共同作戦をとることもかなわず、遅かれ早かれトロール軍に制圧されるとの予想を魔軍総司令部は思っていた。

 魔軍総司令部はトロール国における形勢を逆転させるため、老齢のオロブマムに代わって今は亡き勇将ガリボディスの息子ボリゾディス‐残忍さで有名な‐を送りこんだ。

 だが、新任の軍団長が実際に動かせる兵力は、トロール国西部のオマゾン流域にまで後退させられた30万だけであった。


 一方、トロール国南東部と接する獣人族国西部に戦線を維持しているのは元魔大陸防衛軍司令官であったザーディスの指揮する第四軍の75万だった。

これにゾオル攻略部隊(第六軍)の残存兵5万がゴルゴーン軍団長とともに加わったことで80万に増えていた。



 一方、トロール軍は首都ガラガスの南方を中心として、兵力8万で4方面より魔軍への攻撃を開始した。

 この地域はオリンコ川とチング川流域を除き、山脈のある地域で戦車部隊の投入は不可能だが‐トロール人は身長が3メートル以上もある。なのでトロール兵のサイズに合わせた車内スペースのバカでかい戦車など作るというのもナンセンスの極みなのだ。

 しかし、力の強いトロール兵は150ミリ5連装の携帯式飛翔弾発射装置をドワーフ兵器廠に作ってもらった。

 それを担いで山を越え、魔軍陣地を攻撃できる距離まで来ると発射装置を地上に置いて照準をし、榴弾を搭載した150ミリ飛翔弾の一斉攻撃をして魔軍陣地や防御線を次々に突破して行くという戦術をとり、魔軍を震え上がらせた。


 そして突撃時には、重機関銃である10ミリ機関銃を軽々と片手でもち、魔軍兵士をなぎ倒していくのだ。そのうち、魔軍兵士はトロール軍が攻撃してくるというだけで逃げ出すか降伏するようになり、またたく間に魔軍戦線は後退することになってしまった。

 


挿絵(By みてみん)



 四ヶ月後、トロール国の魔軍はわずかにネイボース川右岸からオリンコ川にかけての地域とトロール国中央西部にある広大なオマゾン流域の二か所に追い詰められてしまったのだった。

 ネイボース川右岸からオリンコ川にかけての地域での作戦には、ヤマト軍、ドワーフ軍、人族連合軍も協力参加した。

 ヤマト軍、ドワーフ軍はドコデモゲートを利用して、それぞれ5個師団ずつを投入。

人族連合軍は護衛艦隊に守られた大輸送船団で、15師団を投入した。



 魔軍総司令部は、水素ガスを使った飛行船は引火爆発しやすいという致命的欠陥があるのを多大な犠牲を払うことで知ったあと、飛行船を使った作戦は当分の間保留されることが決定された。

 飛行船を使うには、同盟軍の新型飛行兵器に対処できるモノを作るか、水素ガスに代わるものを見つけなければならない。


 その代わり、以前から造兵廠が開発を進めて来た海中船を本格的採用することにした。

海中船とは読んで字のごとく、海の中を潜ったまま航行できる船だ。

この新兵器の採用にあたっては、アサグ参謀長とベイアリア総軍統括長が魔王に強く推薦した。


「これなら同盟国の偵察隊にも発見されないし、飛行兵器の攻撃を受けることもありません!」


 魔王の承認を受けて、魔大陸の海軍ドックはすべての船舶の建造を中止、または延期して急遽、海中船の増産に取り組んだ。

 建造中の軍船の中には、上部構造物をとっぱらって船体各部に隔壁をつけ、上部を鋼板で覆い、船体外殻を補強して改造海中船となった船も少なくなかった。


 


 *  *  *



 ゴゴゴゴゴ…


 オマゾン川の濁った水の中を上流目指して進む魔軍の海中船艦隊。

その旗艦にはグヴァシル将軍とボウデイッカ参謀が乗っていた。 

 グヴァシル将軍は、ボリゾディス軍団長の第三軍に増援のために送られる予定だった新設

第五軍の副官で、今作戦の司令官に選ばれていた。


 同じころ、別の海中船艦隊がデーリング将軍とともに、ハイバデイッカ参謀を旗艦に乗せて魔海峡を渡ってザーディス軍団長の第四軍が最後の抵抗を続けているネイボース川右岸からオリンコ川にかけてのデルタ地域の沿岸を目指して進んでいた。


 いずれの艦隊も5万人の増援軍を乗せて、魔軍総司令部必死の起死回生の作戦実施のためにほぼ光の差さなない水中を突き進んでいた。




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