2-26 剣豪たちと勝負!
野試合は、司令部のある洞窟から少し離れたところにある原っぱで行われることになった。
レオ一人に対して、ヤマト軍選りすぐりの猛者たち十数人が半円形に囲む。
ランと呼ばれた黒い髪の美少女はとみると、それらの猛者たちから20メートルほど離れた後方にいる。
さきほど、猛者たちがそれぞれ自己紹介したあと、彼女はスタスタと後ろの方へ下がっていったのだ。
レオが相手をすることになったのは
ミヤモト・ムササビ( 二刀流)
ヤギュウ・ジュウバコ( シンカゲ流)
ササキ・オオジロー( 物干竿流)
ソトムラ・ハンジロー(ジゲン流居合い)
アンエイ ( ホーゾイン槍術)
テラダ・ムネオリ ( テンシン一刀流)
チバ・シュウマイ( ホクシン一刀流)
ツクエ・リュウノスケ( コウゲン一刀流)
オオイシ・タネオ( オオイシシンカゲ流)
コンドー・ワサビ( テンネンリシン流)
オキタ・ゾウニ (テンネンリシン流)
という│錚々《そうそう》たる剣豪たちだ。
そして...
モリ・ラン (流派を名乗らず)
“ミィテラの世界のキャラたち、めっちゃ前世でオレが聞いたことのある歴史上の剣豪たちの名前にそっくりだな…”
誰かさんのサービス精神たっぷりの設定に心の中でニンマリするレオ。
しかし、腕試しの試合転じて真剣勝負となったのだ。
遊び半分で戦うわけにはいかない。DKXの世界と言えど、死んだしまったらジ・エンドなのだから。
ノブノブ将軍をはじめとする観客は50メートルほど離れたところで見物している。
将軍は日差しが当たらないように張った天幕の下に座っており、将軍の取り巻きの武将たちに混じってアイミのかわいい顔も見える。
視力100倍で彼女が心配そうな表情でレオの方を見ているのがわかる。アイミは心配症のエルフ少女なのだ。
“このサムライたちは、それぞれふつうの剣や槍などの武器を使うから、オレのフラガラッハの剣の敵ではないとして、注意しなければならないのは、あの後ろにいるランという娘だな。
一応、ふつうの剣を持っているが、何か違った攻撃をしてくる可能性が強い。
おそらく、先にこのサムライたちの攻撃にオレがどう対応するかを見てから、攻撃法を決めるのだろう...”
試合の審判を命じられたのはサル― 本名はハシバ・サルキチローというそうだ。
ちなみに肩書は方面軍司令官。彼のほかにも、先ほどのトクガワ・タヌヤスとか、カトウ・トラマサとかも方面軍司令官だそうだ。
「では、双方とも用意はいいか?」サルが聞く。
「おお。われらはいつはじめてもいいぞ、サル殿」
「オレもオーケーだよ」
しばしの沈黙のあと
「それでは始め!」
サルの号令が下されると同時に、ミヤモト・ムササビ、ササキ・オオジロー、そしてソトムラ・ハンジローが三方より瞬足で迫ってきた。
さすが名だたる剣士たちだけあって、素早い。
ミヤモトは大小の剣を抜刀して刀身を下げた形、ササキは刃渡り1メートルの愛刀“物干竿”を八双に構え、そしてハンジローは剣を脱かずに走り寄って来る。
もっとも足が速いミヤモトの剣の間合いに入る直前― 100倍動体視力をもってすれば簡単なことだ― に100倍の反応速度で後方に20メートルほどジャンプしながら、フラガラッハの剣を投げてミヤモト・ムササビの2本の剣とササキ・オオジローの物干竿をたたき斬り、着地と同時に秒速40メートルで左側から回り込み、3人の後ろを走り抜けながら手刀で彼らのアタマを払う。
見ていた者には、レオの姿が一瞬消えたように見えただろう。
人間の動体視力では、あまりに速く移動する物体を捉えきれないのだ。
100倍力でアタマを軽く払われた3人は、丸太でアタマを殴られたような衝撃を食らい、訳も分からないうちに昏倒する。
ソトムラ・ハンジローはさすがに居合の名人だけあって、それでも倒される寸前に刀を半分ほど鞘から抜いていた。
そのまま残ったヤツらの後ろへ今度は右側から回り込み、同じようにアタマを軽く払う。
残ったヤツらは「?」みたいな表情を見せられるヤツはマシな方で、大多数は何が起こったかわからないうちに気絶して転倒した。
この間、3秒とかかってない。
“あの黒髪の美少女は...?”
猛者どもを倒したところから30メートルほど離れたあたりで、ランのいた場所を見ると...
黒髪の美女は消えていた!
“えっ、この瞬時とも言える短時間の間にオレから見えない場所にまで移動した?!”
急ブレーキをかけて高速移動を止めた。
次の瞬間、ランはレオの真後ろに出現し、刀で背中から貫こうとした。
ギャリーンっ!
しかし、シーノの神業的反応速度とバリアーに弾かれた。
弾かれたランは、レオ目がけて突進した勢いの反動で5メートルほど後方に飛ばされて尻もちをつきそうになった。
しかし、それをコンマ0.001秒の動体速度で見たレオは高速移動し、黒髪の美女が尻もちをつかないように素早く後ろから受け止めた。
小柄でスリムな体形をしているようだが、やはり女の子だ、やわらかい体をしているし、両脇の下から彼女の両腕を封じることも兼ねて回したレオの両手にはたっぷりとふくよかな胸のふくらみを感じた。
「あ...!」
ランは小さな声をあげたが、抵抗するだけ無駄と観念したのか、そのままおとなしくなった。
「お、お、おっ???」
「おおおおお―――――っ!」
遠くから離れて観ていたノブノブ将軍と武将たちから驚きの声と響きが上がった。
試合開始から10秒も経ってない。
剣豪と称されるヤマト軍の猛者たちが一太刀もあたえることが出来なかったどころか、何が起こったのかもわからなかいうちに、全員倒されていた。
誰にも何が起こったのかまるっきりわからなかった。
「こ、こ、これは...???」
何が起こったかわからずにあわてるサル。
それを見て、椅子から立ち上がったノブノブ将軍の叱咤が飛ぶ。
「サル!何をボヤボヤしておる? レオ殿の勝ちであろうが?!」
それまではレオと呼び捨てにしていたノブノブ将軍が、レオ殿と呼んだ。
「あ、ははっ!なんだかよくわかりませんが、わが軍の者たちはすべて― あ、ラン様以外は― 倒れていますので、レオ殿の勝ちです」
サルも将軍に追従してレオ殿と呼ぶ。
レオは得意満面で気づかなかったが、天幕の下からアイミがジト目でランを抱いているレオを見ていた。
それからひと騒動だった。
ノブノブ将軍とその取り巻き武将たちは駆け寄って来て、口々に ―先ほどの洞窟の中での口ぶりとは正反対に― レオの強さを褒めたたえた。
武将たちは兵士や看護兵などを呼んで、倒れている者たちの介抱を命じていた。
ヤマト軍の中でも一目も二目もおかれていた猛者たちが全員レオに殺されたと思っていたが、猛者たちは全員アタマに大きなたんこぶを作って気絶しているだけとわかってホッと安堵していた。
彼らは魔軍との戦いで貴重な戦力なのだ。
「ワーハッハッハッ! 貴公がわが軍の猛者連中をひとり残さず倒すとは、これは愉快じゃ!」
ふたたびヤマト国の国軍司令部の地下洞窟にもどったノブノブ将軍とその取り巻きの武将たちとレオとアイミ。
「あ、どうも... いくら試合と言っても、オダ将軍配下の豪傑たちを気絶させてしまい、申し訳ありません」
「ワーハッハッハッ! 気にするな、気にするな! それにしても目にも止まらぬない速さで、あの強豪どもを倒してしまうとは誠にもって見事じゃ! これでレオ殿の強さを疑うものは誰もいないであろう。のう、ランよ?」
上機嫌でしゃべっていた将軍は、かたわらにおとなしく立っていた黒髪の美少女に話を振る。
「はい、お養父様。レオ様の強さは、勇猛をもって鳴るドワーフや 鬼人はおろか、いかなる魔族でも叶わないでしょう」
「そうじゃろう、そうじゃろう!」
「それがしも最初からレオ殿はズバ抜けた戦士だと思っておりました」
サルがノブノブ将軍に追従する。
それには一瞥もあたえず、将軍は言った。
「ワシは貴公が気に入った!貴公にはこのランをあたえる故、よく面倒を見てやってくれ。」
「えーっ?!」
ランさんをくれるって、どういうことですか――っ、ノブノブ将軍さま?
本当に娘さんをオレにくれていいんですか――?
あらら...
レオは剣豪たちとの試合に勝ったご褒美にランちゃんをノブノブ将軍からもらいました!
さて、ランちゃんは何と答えるか?




