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DK世界に行ったら100倍がんばる!  作者: 独瓈夢
転生の章
42/526

2-23 夜叉娘の事情①

スピンオフ作品です。

 その女の子は夜叉族の娘と人族の男との間に生まれました。


父親のモリ・イチシンは、│ミッッデンランジア(中央大陸)に攻め入り、他の人族国を二十数年ですべて征服し、鬼人族国や獣人族国にまで攻め入ったヤマト国の猛将オダ・ノブナベ将軍の次男オダ・ノブサラ将軍に仕えていました。

 そのモリ・イチシンの父モリ・ウガイは、猛将ノブナベ将軍に若年のころより仕え、数々の武勲をたてた人でした。


 一方、鬼人種の一族である夜叉族は、“鬼神”と呼ばれるほど恐れられる一族ですが、少数種族であることもあって、ほかの鬼人たちが暮らす町から遠く離れた山奥で自給自活の生活を送り、細々と自分たちの伝統と習慣を守って暮らしていました。


 夜叉とふつうの鬼人との違いは、ツノにあります。

ふつうの鬼人のツノが太くまっすぐで、色も黄色っぽいものや灰色っぽい色や横縞があるなど多様なの比べて、夜叉族のツノは細くて白く、少しカーブしているのです。

 それと、体力的にはふつうの鬼人も夜叉もあまり変わりませんが、夜叉族はまれに特異な能力をもって生まれる者があるということです。



 その夜叉族にとっても猛将オダ・ノブナベ将軍による鬼人国侵略は他人事ではありませんでした。

なぜなら、鬼人族は一対一の戦闘なら人族の兵士をかるく凌駕するのですが、猛将ノブナベ将軍はその人族の弱点を「一人の鬼人や獣人に対しては必ず五人一組の兵士で戦うこと」という“力には数で勝つ”という戦法をあみ出し鬼人軍に負けなくなったからです。

 なにせ、鬼人の人口は少ないのですが、人族の女はどういうわけか、ボロボロと子を産むので人族の人口は鬼人族などより圧倒的に多いのです。ですから、このような戦法も可能だったのでしょう。


 このままでは、いくら人里離れた山奥に住んでいても、猛将ノブナベ将軍のヤマト軍によって鬼人国が占領されてしまえば夜叉族も安心して暮らせなくなる、と夜叉族は危惧し、若い者たち- その中には酋長の息子たちや孫たちもふくまれていました- は、鬼人族軍に加わってヤマト軍と戦うべく里を出て行きましたが、二度と帰って来ることはありませんでした。



 ノブナベ軍はますます鬼人の国の奥深く入って来て、このままでは残った夜叉たちも鬼人軍といっしょになって戦うか、それともどこかミッッデンランジアの果てにでも逃亡するか二つに一つ、という切羽詰まった状態になったときに、不思議なことにノブナベ軍の進行がピタッと止まったのです。

 そのうち、猛将ノブナベ将軍は死んだという噂が広がりはじめ、しばらくするとヤマト軍は鬼人の国から引き上げて行ってしまいました。



 それからまたしばらくすると、猛将ノブナベ将軍の息子ノブサラがヤマト軍の新しい将軍になったという噂が広まりました。

「また、ヤマト国軍がやって来る!」と誰もが戦慄し、頭を抱えたのですが...

なんと、新将軍オダ・ノブサラは、父ノブナベが征服していたミッッデンランジアの人族国の内、ヤマト国直轄領とした地域を除いた諸人族国と平和協定を結び自治権をあたえると同時に、人族連合を作りこれに参加させることで人族国間での紛争や戦争を未然に防ぐシステムを作るとともに、鬼人族および獣人族とも不可侵条約を結び、ミッッデンランジアに平和をもたらしたのです!

 

 ノブサラ新将軍の戦を好まず、異種族との共存共栄を願うという考えには、ミッッデンランジアの多くの住民たちから驚きと称賛の声が出ました。

 諸国の王や有力者、市民などの中には、その考えに感銘してノブサラ将軍に贈り物をしたり、お礼の手紙を送ったりする者が多くいたとのことです。


 夜叉族の酋長クベーラもその一人でした。

クベーラの新将軍ノブサラに対する畏敬の念は、ノブサラが新将軍に就任後、ただちにそれまでの戦いで捕虜になっていた捕虜たちを解放し、その中にクベーラ酋長が戦いで死んだものとばかり思っていた息子たちや孫たちも、ほか夜叉族の若い者とともに生きて部落に帰って来たことでさらに高まりました。

 そこで、クベーラ酋長はノブサラ新将軍への感謝のしるしとして、自分の娘たちの中でもっとも見目麗しいラーヴァナを新将軍の“側室”として仕えさせるべく、ヤマト国直轄領の首都となったナンバ市のヤマト軍司令部まで連れて行ったのです。


 ラヴァーナは当時13歳でしたが、十日ほどの旅のあとでナンバ市に到着し、ナンバの町の中をクベーラ酋長に連れられて司令部まで向かう道筋では、道行き交う人たちがみんな立ち止まったり、ふり返って見るほどだったそうです。

 ふり返って見た男たちの中には、街灯の鉄柱にぶっつかってケガをしたり、溝に落ちたりするものが続出したそうです。どこまで本当の話か分かりませんが。


 ノブサラ新将軍は、せっかく夜叉族の酋長がきれいな娘を連れて会いに来たというので、気さくにクーベラ酋長を応接室に迎え面会しました。ノブサラにはそんな飾らない、人の良いところがあったのです。


「オダ・ノブサラ将軍さま。この度は、われわれの鬼人の国を攻めることを止め、われわれ鬼人の国に二度と攻め入らないとの約束をしてくださり、まことに有難うございます。

また、戦いで捕虜になっていたわたしの部落の若者たちを解放していただき、お礼の言葉もありません。

今日は、夜叉族を代表して将軍さまに、わたくしども一族のお礼の気持ちとして、わが一族でもっとも美しいラヴァーナを連れてまいりました。まだわずか13歳ですが、これこの通り、もう立派な体格をしておりますので、将軍様に側室として娶っていただければ、必ずや立派な子を産むことでしょう!」

とクーベラ酋長は何百回も練習した言葉をノブサラ新将軍に言いました。


 これに驚いたのはノブサラ新将軍。

「いや、クーベラ酋長殿とやら。わたしが鬼人族国や獣人族国と不可侵条約を結んだのは、これ以上、この世界に生きる者同士で戦って血を流してもしかたがない、それよりもお互いに仲良く暮らした方がいいと考えてやったことなので、なにもお礼をもらったりする理由もない。

それにその娘どのはまだ子どもではないか?もう少し親元において、年頃になったらよき夫を見つけてあげるがよい」

と言ったのですが


 クーベラ酋長は頑として受けつけず、ラヴァーナもよくよく父から言いつけられていたのでしょう- “夜叉族の、鬼人の国の未来はおまえ一人にかかっている。なんとしても新将軍のオヨメさんになるのだ”とか- 

 なので、ラヴァーナもわずか13歳という、まだ顔つきには幼さが残っているような少女でしたが、

「将軍さま、ぜひ、わたくしをおそばにおかせてください。父も母も、もう私には帰るところはないのだ、と言いましたので村には帰れません」と一生懸命にお願いしたそうです。


 事ここに至っては、ノブサラ新将軍も“いらぬから帰れ”というわけにもいきません。

しかたなくラヴァーナを引き取ることにしました。

 クーベラ酋長はそのあと、新将軍に「これでクーベラ酋長殿とは縁者になったのだから」とお酒をふるまわれ、またたくさんのお土産を従者をつけて持たせられ、意気揚々と部落へ帰って行ったのでした。



 ノブサラ新将軍にはすでに奥さんもいて、側室も何人もいましたし- 奥さんはヤマト国でお留守番。ミッッデンランジアでは側室が新将軍のお世話をしていました。

 なので、いまさら13歳の少女を、いくら美少女だからといってあらたな“未成年側室”にするほどのスケベ将軍ではありませんでしたので、侍女の一人として人族に慣れ、人族の習慣や言葉をおぼえさせるようにしました。


 そして、3年の月日が経ち、ラヴァーナが16歳になったとき、ヤマト本国にいる奥さんのもとに送ることにしたのです。ヤマト本国の方がラヴァーナによりよく教育できると考えたからでした。

 ノブサラ新将軍の奥さんハナヤは、16歳になってさらに美しくなったラヴァーナを、それはそれはもう可愛がって、ハナヤさまには娘がいなかったこともあり


「あなたには、立派なヤマトナデシコに育てます」と様々な事を習わせました。



 ヤマト国のオダ家には、 猛将ノブナベ将軍に若年のころより仕えた武将モリ・ウガイの息子モリ・イチシンがハナヤ夫人の従者として仕えていました。イチシンは当時18歳。父親似のイケメン男子でした。


 そして、ラヴァーナとイチシンは、最初に紹介されて目が合った瞬間から恋に落ちたのです。

ラヴァーナの美しさは、彼女を乗せた客船がナンバ港を出てヤマト海を渡っている時、彼女のあまりの美しさのために、行き交う船の乗客がラヴァーナが乗っている船を見ようと片方の│船端ふなばたに集まり過ぎたために危うく転覆しそうになった船が続出したとまで言い伝えられています。

どこまで本当の話か分かりませんが。


 それほの美女でしたから、男の子ならだれでも目がハート型になるのも当然です。

では、なぜ、ラヴァーナがイチシンに恋をしたかというと、その場にいて若い二人の胸にハートが生まれた瞬間を検証したハナヤ夫人の証言によると、イチシンのひくい声- なんでも女性のコツバンを震えさせるほどだとか- に魅了されたそうです。これももちろん、真偽のほどは定かではありません。



 とにかく、絶世の美人夜叉娘とイケメン男子は恋に落ちたのです。

ラヴァーナにはハナヤ夫人が習い事をおぼえさせようと、裁縫とか、料理とか、生け花とか茶道とかの先生をつけさせたのですが、裁縫の授業では


「早くイチシンさまにステキな洋服を塗ってあげたいわ」

と目をトロンとさせ、針で指を刺す始末。


料理の授業では「早くおいしい料理を習って、イチシンさまにおいしい料理を食べていただきたいわ」と目をトロンとさせ、お砂糖とお塩を間違える始末。


生け花の授業では、「早くきれいにお花を活けれるようになって、イチシンさまのお部屋に活けたいわ」と目をトロンとさせ、花をチョキンと切る始末。



 一方、イチシンの方も、ラヴァーナの事を一日中考えていたため、剣術の稽古ではボーっとして負けてばかり。

 ハナヤ夫人に用事をいいつかって外出すれば、ラヴァーナのことばかり考えるので用事を忘れてまた家にもどったり、たまの休日に同じ従者仲間とラーメン屋さんに入れば、ラーメンを注文するのに、


「親父さん、ラヴァーナをひとつお願いします!」


「???」


そんなラーメン売ってないよ、とラーメン屋のオヤジさんから言われて赤面したり、と2人とももう救いようのないほどの深い恋の病にかかってしまいました。



 それほどまでに愛し合っているのなら…

とハナヤ夫人は二人を結婚させることにしました。


 従者と鬼人族(夜叉)の娘の結婚ということで、当然、大きな宴などは催されませんでしたが、それでもノブサラ新将軍とイチシンの父親モリ・ウガイとクーベラ酋長と主だった郎党たちを乗せた船でミッッデンランジアから、結婚式に駆けつけてくれました。


 クーベラ酋長は、ノブサラ新将軍が自分の娘を側室にしてはくれなかったものの、娘が将来性のある青年と結婚することで大いに喜びました。

 そして、この身内だけのささやかな宴で、娘夫婦の仲人となってくれたノブサラ新将軍と明け方まで機嫌よく酒を酌み交わしたのでした。




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