表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
DK世界に行ったら100倍がんばる!  作者: 独瓈夢
転生の章
39/526

2-20 敵中突破


 シュババババババババババババババババババババ――――っ!


目にも止まらない速さで魔軍兵士を切り裂いて、敵部隊の外側の兵列を倒す。


ステルス魔法のため、敵はレオが見えないし、秒速40メートルという信じられないような高速で移動するレオは誰にも探知できない。


 シュババババババババババババババババババババ――――っ!


何が起こったかわからず、棒立ちになっている魔兵の隊列を砂塵のような突風が吹き抜けたようにしか感じないが、百人ほどで構成されていた魔軍部隊はすでに半数に減っていた。

フラガラッハの剣の切れ味はまったく変わらず、鎧であろうが盾であろうが魔兵であろうが、キュウリを刀で切るように切りまくる。100倍筋力のおかげで切ったときの衝撃もまったく感じない。



 5分後、魔軍部隊は殲滅され、道の上には赤い魔石が100個ほど散らばっていた。

最後に倒した十数人の魔軍兵士は、“敵に襲われているようだ”と悟った時点で全員切られていた。武器を構えるヒマさえなかった。


 最初のバトルを難なくクリアしたレオはふたたび走り出した。

背中のエルフ少女アイミも、心なしか身体が汗ばんでいるようだった。

 それもそうだろう、彼女はエルフ魔術師として、若年ながら幾たびか戦いを経験したことがあるが、今回のように百人という大勢の魔軍を相手に戦ったことはない。


 シーノが魔軍の部隊をキャッチし、レオが経験値を上げるために戦うことを決めた- シーノは反対しなかった。戦わずして勇者とは言えないからだ。

 シーノが防御バリアを発動させる。レオはアイミが背負うことになったフラガラッハの剣を抜き、魔軍の兵列に突進する。

 その瞬間、アイミは両目をしっかりつぶって何も見ないようにした。魔軍兵士がレオによって切り刻まれる様子を見たなら、アイミは自分が必ず叫びだすであろうということを知っていたからだ。


 もし、彼女が叫べば、敵に生存者がいた場合、レオとアイミの姿はステルス魔法で見えないが、女がいることが敵に知られてしまい、それは今後レオにとっても自分にとっても、これから果たす任務にデメリットになるかも知れないからだ。

もっとも、敵は一人も生き残らなかったのだから、彼女の心配は杞憂に終わったわけだが。


 魔軍部隊の100人の魔兵をものの5分とかからずに倒し終わったレオを見て、アイミはレオのすごさをマジマジと感じた。

 聖堂の森で魔軍の警備隊に襲われたのを救われたときは、レオはアイミとギブを取り囲んでいた魔兵7人を一瞬のうちに倒した。

 それはそれでスゴイことだったが、7人を倒すのと100人を倒すのは桁が違う。

“レオさま... 勇敢で信じられなうくらい強く、心優しい勇者さま...”

疾走するレオの肩につかまりながら、なぜか顔が赤くなるエルフ少女だった。


 レオはぐんぐん走り続けた。

かれこれもう10時間以上ぶっ通しで走っているが疲れはまったく感じない。

 アイミに疲労回復魔法を定期的にかけてもらっているためだ。

腹がへったら胸に装着しているバッグからトリゴのパンをとって走りながら食べ、喉が乾いたら水筒の水を飲む。


 食べながら、飲みながら、ただ、ただ走り続ける。

アイミも同じだ。背嚢にいれていたパンを齧り、水筒の水を飲んで喉の渇きを癒し、ただ、ただ、黙っておぶさっている。


 途中で水の補給とアイミを休ませるためと生理的必要性のために一度、時間にして30分ほど森の中の川のそばで休憩をとった。

 さすがにアイミは疲れた顔をしていたが、回復魔法を使っているので肉体的な疲れではない。たぶん、強行軍、魔軍との戦闘などのストレスによる精神的な疲れだろう。



 さらに数時間走った時、ふたたびシーノからアラートが告げられた。

(レオ、今度は300人以上の大部隊よ。前方5キロほどの距離。どうするの? 迂回して避ける?)

「いや、オレ早く強くなりたいし。もう一丁、殲滅作戦だ。アイミちゃん、バフお願い。シーノちゃんはバリアね。」

「承知しました...〈魔法の詠唱をはじめる〉......」

「オーケーよ!」


「よし、行くぜっ!」

「はい、ケガをしないようにがんばってください!」

「まかせとけっ!」



  二分とかからずに魔軍の部隊と遭遇した。

街道を行軍する魔軍部隊は整然と並んでいるため、レオのスパイラル戦法が遺憾なく発揮される。


 シュババババババババババババババババババババ――――っ!


 Uターンして、ふたたび


 シュババババババババババババババババババババ――――っ!


 またUターンして…


 シュババババババババババババババババババババ――――っ!



 敵は誰がどこから攻撃しているかわからないうちに、半数が切り倒された。

右往左往している魔軍兵士の中には、恐怖のあまりパニックに陥って、ボウガンを味方である魔軍兵士に向かって撃ったり、魔軍同士で切り合いを始める者まで出る始末。

 恐怖の突風が通り過ぎたとき、街道上には300個以上の魔石が散らばっていた。手間はかかるが最初のバトルの時同様、出来るだけ拾い集める。この魔石は冒険の貴重なご褒美なのだ。



「ふ~うゥ...」


背中でアイミが気が抜けたみたいな息を吐く。

17歳のエルフ少女にとって、やはりバトルは過酷な経験だった。


幸か不幸か、魔族は切られても人間のように血は出さないので、おぞましさこそあまり感じないが、やはり戦いはいつでも残酷なものなのだ。



 500個以上の魔石をサックに入れたら5キログラム以上になった!

すでに5キログラムの神の山の石を持っているので、合わせて10キロの余分重量を持っていることになる。100倍力のおかげで、レオ自身は100グラムほどの重さにしか感じないが、さすがに500個以上の魔石は小石を持って走っていてはかさばって邪魔になるので、アイミの背嚢に入れてもらう。



 イーストランジアの南で魔軍と対峙している人族の国名はヤマト国というそうだ。

アイミがエルフの隠れ里を出発する前に知り得た情報では、ヤマト国の軍最高司令官はオダ・ノブノブとかいう名前の将軍だとか。

 噂によると、そのオダ・ノブノブ将軍は信頼していた部下に裏切られて、危うく魔軍に殺されるところだった― 開戦時の情報混乱で、オダ・ノブノブ将軍は戦死したという情報も同盟軍側に流れていたらしい― が、危機一髪逃げのびることができ、軍を立て直し魔軍の侵攻に対してゲリラ戦などをしかけて抵抗してるという。

しかし、首都エドはその裏切者のせいであえなく陥落したのだという。




 さらに数時間走り続けたところで、はるかな高度から前方の地域を偵察してきたシーノは、的確な魔軍の情報をレオとアイミにもたらした。

(レオ、この先20キロ地点から魔軍の前線が始まっているわ。魔軍は大部隊単位で数キロずつ離れて防衛ラインを築いていて、ヤマト国抵抗戦線への攻撃も連携をとってやっているわ)


「シーノちゃん、お願いがあるんだが...」

(なーに? 何か考えているの?)

「この際、この方面の魔軍の総司令部を殲滅しようと思っているんだけど...」


(ふむふむ... 敵のボスを倒して魔軍に動揺をあたえようというわけ?)

「魔族はヤマト国を攻撃するにあたって、ヤマトの最高司令官オダ将軍を殺そうとしたわけだろう?同じ戦法でお返しをしてやろうと思ったんだ」

(そうすれば、ヤマト軍とも交渉しやすくなるのはたしかね!)

「だろ?」

(うーん... でも、魔族は人間なんかと違ってボスがやられたからといって動揺するかどうか判らないけどね...)


「動揺するようなことをやってみたら?」

(どうするつもり?)

「ボスを倒して、その頭を竹ヤリの先に刺して、抵抗すればこうなると見せしめる!」

(あまり効果ないと思うわ)

「わ、私もそんな残酷な方法はあまり好きではありません。」


 アイミからもネガティブなコメントが出た。



「そうか... いい案だと思ったけど、魔族は人間じゃないけど、残酷な殺し方はしないでくださいということか...」

「あ、すいません。別にレオさまの戦い方に口を挟むつもりかなかったんですけど...」

「おう、別に構わないよ。オレたち仲間だし、仲間の意見は尊重しないとな。」

「あ、ありがとうございます。」

(まあ、相手が人間ではない魔族とわかっても、あまり残酷な戦い方はするべきではないでしょうね)

「そうだな。では別の方法を考えよう...」



 魔軍の前線が近いというので、レオたちは街道から外れ森の中を減速―といっても秒速30メートルを半分に落としただけだが― してさらに敵の前線に近づいていた。



 そこは町が一望できる標高の低い山の上だった。

先ほど森から抜けたレオたちはステルス魔法で身を隠しながら、ずーっと麓に広がる町を観察している。すでに夜のとばりは落ち、あたりは暗くなっている。


 しかしレオの100倍視力をもってすれば数キロの距離や暗さに関係なくよく見える。

魔軍の前線に近いその町にはすでに人族の姿は見えず、魔軍の兵士たちだけが行き交っている。時折、魔軍部隊らしい集団も町から出て行ったり入って来たりしている。


「さて、ではそろそろ準備にかかりますか...」




しばらくして、レオは魔軍兵士3人を前にしていた。

先ほどいた山にほど近い森の中だ。兵士たちはさるぐつわをかまされ、ロープでギリギリに縛り上げられている。アイミとシーノはステルス魔法で隠れて森の中から見ている。


「オレはオダ・ノブノブ将軍配下の暗殺部隊の者だ。今からオレが聞くことに対して素直に本当のことを話したら命だけは助けてやろう」


そういうレオの顔は古い木の皮を剥いで作った即席仮面で覆われている。

目のところだけに穴をあけたもので、顔と仮面の間にすき間があまりないので声までくぐもった恐ろしいトーンになっている。

この魔軍兵士たちは、さっき町はずれにいたのをさらって来たのだ。


 魔軍兵士は全部で6人ほどいたが、半分はその場で切り捨て、残った3人を手加減して殴って気絶させ、ロープで縛って両手に下げて来たのだ。

この手加減というのが100倍力のレオにはかなり難しく、3人の兵士たちはいずれも体のどこかの骨が折れたり、腕があらぬ方向に曲がったりしてた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ