2-18 バッタ能力の見せどころ?
DK世界で冒険をするにあたって、最大のネックだったレオの短命問題だが、
ミトラカルナー山のかけらを入手したことで一応解決できた。
もっとも、5キロもある重さの白いかけらをバッグにいれて担ぐことになったレオは文句を言ったが、守護天使シーノはあとで何とかすればいいと取り合わなかった。
「これで第一の目的は完遂ね!」
「おう。難しくなるのはこれからだな!」
「よかったですね、レオさま!」
「おめでとうございます、レオさん!」
「みんな、ありがとう!」
カイオ王子のプラン
(最優先課題はこれで一応解決ね。それじゃあ、ここからカイオ王子の立案通り、二つのグループに分かれた方がいいわね)
「やはりそうなるか...」
(ドワーフ族と人族による南北からの同時一斉攻撃というのは、たいへん優れた作戦だと思うわ。でも、この作戦を成功させるためには、やはりドワーフと人間の両国へ使者が赴き、両国軍を説得することが不可欠よ!)
「シーナちゃんからお褒めの言葉をいただけるなんてうれしいけど、難度の高い作戦なんだよね。立案したボクが言うんだから間違いないよ。」
「一国ずつ説得するというのは時間がかかり過ぎるからダメなんだろうな...」
(この作戦は時間が勝負なのよ。反攻はきっかり一か月後に開始ということでタイムテーブルを組みましょう)
「ええっ、一か月後って、ここからドワーフ国の国境というか、魔軍との前線まではおよそ600キロあるから、最低でも2週間以上かかる距離なんじゃないか? 南のヤマト軍の前線はさらに遠いから、そこにたどり着くまでには一ヵ月以上かかるよ?!」
「私も時間的に少々無理ではないかと思いますが、シーノさま?」
(みんな、よく頭にいれておいて。戦争状態にあるということは、平時では出来ないことでも出来ることがあるのよ。)
「?...」
「どういうこと?」
(つまり、ドワーフ国の場合、ドワーフ軍は地域によっては魔軍を押し返し、戦線を魔軍領土側に拡大しているところもあるということ。それはこの前、アイミから戦況を聞いたときに見たでしょう?)
「それはそうだけど時間の問題が...」
(だから、これからA班― ドワーフ国へ向かうグループを仮にそう呼ぶとして―は、そのドワーフ軍が魔軍占領区域に食い込んでいるエリアを目指し、その地点の魔軍部隊を粉砕し、その功績でもってドワーフ軍のお偉いさんを前線に呼び寄せ、そこで大反攻作戦について話して説得するのよ)
「シーノちゃん、職業変えて参謀天使になった方がいいんじゃない?」
(おだまりなさい、レオ!)
「へい」
「すごーい作戦ね、シーノちゃん。でも、A班って誰と誰が入るの?もしかしてB班― たぶん南へ行くミッションだと思うけど― は誰か一人だけ行かせるの?」
(A班は、カイオ、イザベル、それにギブ。B班はレオとアイミ)
「ええーっ、なに、その分け方?」
「3人と2人だったら、目も当てられない戦力じゃないかな?」
「僕はアイミさまと別れるんですか...」
それぞれ汗をドバーっと出したり、目をドングリのように丸くしたり、涙目になったりして反応する。
(イザベルの武器ガンデーヴァの弓は、雷神インドラの子、アルジュナが使った伝説の神弓よ。
アルジュナはそれで森を焼き払い、多くの敵を殺したと言われているのよ。さすがにあなたには、まだそこまで使いこなすレベルにはないけれど、レベルが上がるにしたがってガンデーヴァの攻撃力はさらに大きくなることは間違いないわ。
それに加えて、あなたには火属性の攻撃魔法能力が潜在しているようだから、今回の魔軍との戦いで思う存分ためしてみることを勧めるわ)
「ええええーっ、この弓、そんな怖い弓なの?それに火属性の魔法ォォ?」
(カイオ、あなたの ゲイ・ボルグの槍は、伝説の英雄クーフーリンの武器で、ただ1メートルとか2メートル伸びるだけでなく、投げれば無数に枝分かれして降り注いで刺さり、突けば無数の槍の穂となって敵を刺すのよ。
ゲイ・ボルグの槍は普通の防具なら問題なく貫通するし、ゲイ・ボルグの槍でつけた傷は直らず、刺された相手は必ず一撃で致命傷を負うというスゴイものなのよ。
そして、カイオもイザベルと同様に潜在魔法能力をもっているみたいだし。カイオの場合は土属魔法だから、土弾やストーンウォールなどが使えるかも知れないわ)
「おおおおーっ、これそんなスゴイ宝具なのか?」
「シーナちゃん、オレのフラガラッハの剣は鞘から自動的に抜いたりしまったできる以外に、どんな力があるのかな... 切れ味はスゴイということはこの間の戦闘でわかったけれど...」
レオもカイオ王子やイザベルの武器のすごさと魔法能力を聞いて、ワクワクして守護天使に訊く。
(レオの持っているフラガラッハの剣は、「回答者」「報復者」という意味を持つ伝説の剣よ。
フラガラッハの剣の一撃は鎧で止めることは不可能と言われているの。
フラガラッハの剣は、抜こうと思うだけでひとりでに鞘から抜け、使用する者の手におさまり、敵に向かって投げれば、剣自らが敵を倒し、使用する者の手元にもどって来るのよ。
この剣もレオのレベルアップによってさらに強力になり、新たな能力を発揮するはずよ。そして、あなたが待ち望んでいる魔法は、習得レベルになった時に判明するはず)
「そうか、自動鞘出し入れ機能のほかにも、そんなスゴイ力があるんだな!これからがさらに楽しみな剣と魔法ということか」
(武器、武具ともあなたたちには十分すぎる能力をもっているわ。なのでよほどヘマな戦術を使わない限り魔族相手の戦いでは少しも引けは取らないはずよ!)
「そうか。ではあとはどうやって移動速度を速くするかだな。今回の作戦はスピードが勝敗を決するようだからな。」
「馬でもどこかで手に入れるか...」
「それもいいけど、馬は速そうに見えてもせいぜい一日に40キロくらいしか走れないわ。」
「そうなんだ。伝令とかは30キロ程度走らせて、新しい馬と交換して走り続けるから速いけど、ボクたちはそんな代わりの馬なんて用意できそうもないし...」
馬のことをよく知っているカイオ王子もイザベルも考えこんでしまった。
「あのー カイオさん...」
それまでだまって話を聞いていたギブが話しかけた。
「ん?どうしたギブ?どこかで馬でも手に入るところでも知っているのか?」
「いえ、そうじゃなくて、実はこの聖域には銀狼が住む森があるのです。」
「銀狼?灰色オオカミじゃないのか?」
「いえ、銀狼はオオカミ族の中でも人狼族と同じような希少種で、一時は絶滅さえ危ぶまれていたのですけど、エルフ女王さまとエルフさんたちのおかげで、聖域の森に棲息保護区を設けていただき、その地でひっそりと暮らしているんです。」
「それで、その銀狼たちに手伝っておらって牧場から馬を...」
「いえ、彼らに協力をお願いして、カイオさんたちを乗せて走ってもらうのです。」
「えっ、その銀狼たちって馬みたいに大きいの?」
「体長は馬くらいありますし、力が強いので人くらいだったら乗せて走るることができます。馬じゃないのでふだんは人を乗せませんが。ちなみに僕でもオオカミ化したらアイミさんを乗せることができるんですよ。」
「そ、そんなデッカイ狼がいるんだ!」
「で、ギブ君はその銀狼さんたちを探して、ボクたちをドワーフ国まで乗せて行ってくれとお願いするわけ?」
「はい。銀狼は時速40~60キロで1日中走れますので、ドワーフ軍との境界まで15時間もあれば到着できるはずです」
「そうよね、オオカミって馬と違って持久力あるから長時間走れるのよね!」
「よーし。じゃあ、その交渉は同じオオカミ族であるギブ君にお願いしよう。」
「はい。では早速出かけます。」
「オーケー!よろしく頼むよ!」
ギブは見る間にオオカミの姿に変身すると森の中に消えてしまった。
「で、レオとアイミさんも銀狼さんに乗せてもらって人族国へ行くの?」
それが当然だと思われたので、イザベルが確認するためにシーノに聞く。
(それは必要ないわ)
「?... じゃあ、どんな方法で行くの?」
「オレも銀狼さんに乗って行った方がいいと思うんだけど?」
(いいえ、レオとアイミちゃんのB班は自分たちだけで行くのよ)
「えっ、それじゃあ時間的に間に合わ...」
(レオがアイミちゃんを担いで行くのよ!)
「ええええーっ??? オレがアイミさんを担ぐゥゥ?!」
「えーっ、私はレオさまに担がれて行くんですかぁ?」
レオがズッコケそうにおどろき、アイミもかわいい目を見開く。
「いくら何でも、さすがにそれは...?」
「レオはよろこんでいるみたいだけど!」
カイオ王子が心配し、イザベルがニヤっとレオとアイミを見て笑う。
「シーノちゃん、そ、それにはどんな利点が...?」
(みんな、レオはバッタの100倍力を持っているということを忘れてはいけませんよ)
「バ、バッタみたいに100メートル飛べるから、アイミを担いで人族国までピョンピョン飛んでいけ、っていうのかい?」
(飛ばなくてもいいんです。ただ走るだけ)
「走るーゥ?」
(レオ、ほら覚えている?フィッシュベイの浜辺であなたが音速のスピードで走れるんじゃないかって考えて試したこと?)
「あー、覚えているよ...」
(さすがに音速では走れないけど、時速100キロくらいなら支障なく走れるはずよ)
「...!」
「音速とかって、何の話かわからないけど、1時間に100キロも走れるのなら、人族との境界までは計算上は1日で着けることになるわ!」
(そう。それにレオの力なら、アイミさんの体重など少し大きめのトリゴのパンほどの重さしか感じないはずよ)
「そ、それに私はトリゴのパンよりやわらかですし... あらっ、私なにを言っているのかしら」
アイミが“私は骨ごつごつの痩せぎすじゃないし重くもありませんよ”と言おうとして、まったくカンケイのない言葉を口にしてあわてる。
「ほほ――ゥ... アイミちゃんは抱き心地がいいんだ。ボクが100人力だったら、レオと任務を代わってあげてもいいんだけどね?」
カイオがニヤリと笑ってウインクしながら言う。
「いえ、そうじゃなくて、私は骨ごつ...」
(という理由で、B班はレオとアイミさんということにしたのです。みなさん、おわかりいただけましたか?)
アイミが言い間違え、それをカイオにからかわれて真っ赤になったことなんかにまったく無視して、シーノはみんなの疑問を晴らし、“決定事項”とした。




