2-05 長生きできなくなったエルフたち①
エルフ族は長寿ではありませんでした!?
その理由がエルフの美少女アイミによって明かされます。
「エ、エルフって、300年とか500年とか千年とか生きる長寿の種族じゃなかったのォ?!」
目の前の耳がピンとたった美少女エルフが百歳以上でなく、自分たちとあまり変わりないティーンだと知って驚きのあまり、口が開いたままのイザベルとカイオ。
あらためて、エルフのアイミに年を聞いて― 聞いたのはイザベルだった。
女性にお年を聞くのに男性から聞くのは失礼だが、女性からならあまり問題ないのはどこの世界でも同じようだ。
異世界で初めて出会ったエルフ少女。100歳はたぶん超えていると思ったのに、自分たちと変わらない年だと聞いて驚いたのだ。
ま、誰でも驚くよね、エルフが人間と同じくらいの年だと聞いたら。
カイオとイザベルがアイミとしばし話している間、レオはシーノと話していた。
(ところでシーノちゃん)
(はい?)
(オレの100倍能力のこと、どんなふうに二人に説明したの?)
(あー、あれですね。レオの身体にバッタの筋肉を移入したと言っておきました)
(バ、バッターァァァ? あの虫のバッターァ?)
(ほかにいないでしょ?野球のバッターなんてカンケイなしですし…)
(クっ、野球の知識もあるんだ...)
(それくらいは常識です!)
(守護天使の常識って何だよ!?)
(いちいち、うるさいわね!)
守護天使がキレた!?
(だ、だから、なんでオレがバッタと合体していることになっているんだよ?!)
(あの虫の跳躍力って人間の30倍近くあるから、説明にちょうどいいと思ったのよ)
(それって、岩ノ森 正太郎先生の『マスクライダー』みたいじゃん!)
(それはそうと、私が前にフィッシュベイの村で “100倍能力を開放するには、ある条件が必要”と言ったこと覚えていますか?)
(話をそらさないでよ!)
(そらしていません。今、説明するのにちょうどいいと思ったからお話しているんです!)
相変わらず一方的な守護天使さまだ。
(あ、覚えているよ。ということは、カワイイ女の子を救おうと思わないとその能力は現れないということなんだな?)
(エタナール様はそんなオカシナ能力は授けられません!)
(じゃあなんだよ?)
(それはミィテラの世界に来ることが条件だったんです)
(なるほど!だからテラでは音速の2倍のスピードで走れなかったんだな!)
(そんなスピード出したら、あなたは空気との摩擦で焼き切れてしまうか、音の壁でぴっしゃんこですよ!)
(ゲゲゲ!どっちもヤバいな... それにしてもバッタはないよな、せめてマスクライダーにしてくれればよかったのに...)
シーノは、“すでに確定事項ですから”みたいな顔をしてだまってしまったので、これ以上言ってもムダだ。まあ、何とか二人を納得できたようだから良しとしておこう。
「レオから聞いたと思うけど、ボクたちはテラという別の世界から、聖堂のゲートを通って来たんだけど、君たちはどこの誰? ここはどこ? そしてどうして君たちはここで襲われたの?」
カイオとイザベルは、ひとしきり驚いたあとアイミたちに詳しい状況を聞いてた。
アイミの話によれば…
もともとこの地帯は『エルフの聖域』と呼ばれ、エルフたちにとって特別な場所だったそうだ。
この地域の中心には“神聖なる山”と呼ばれるミトラカルナー山があり、その“神聖な山”からは神のおぼしめしで“慈素”という神秘的な放射能のようなものが発せられており、その慈素は新しい生命を誕生させ、また生きとし生けるものすべてに強い生命力をあたえるなど、その恩恵をミィテラの世界中におよぼしていたのだそうだ。
そして、その“神聖な山”の守護を古代より神に任せられていたエルフたちは、“神聖な山”の|影響が最も強いところに住んでいることもあって、エルフ種が本来持っている“長生き”という特性と“神聖な山”から放射される慈素を他のどの種族よりも浴びることにより、その結果としてほかの種族では得られない長寿をあたえられていた。それゆえ、エルフたちは数百年も長生きできていたのだそうだ。
それに目をつけたのが魔王だった。
魔王の寿命はせいぜい百年程度。人族の寿命とあまり変わりない。いくら巨大な力を持ち、巨大な魔族軍をしたがえていても、寿命が短いため世界征服という大目標を達成する前に寿命で死んでしまうため、魔王の“世界征服”という計画はいつも頓挫してしいた。
それに加えて魔王は世襲制と来ている。
魔王が死んだ場合、その意志を継ぐべき息子の魔王子は経験もなく、駆け引きなどもうまくないこともあって、戦局を誤って見たり、戦略を間違えたりすることも多く、それに加えて側近ともいえる魔臣や魔将軍たちを十分に把握できないどころか、ヘタをすれば反対にうまく丸め込まれたり、魔臣や魔将軍たち自身の私利私欲のための政略に、知らず知らずのうちに加担させられたりまでする始末だったそうだ。
まあ、こういうところはレオが前世で生きていた惑星の歴史とまったく変わりはない。
こういう状態がずーっと何百代も続いていたが、先代の魔王ルジームは歴代の魔王の中でも“賢魔王”と呼ばれるほど賢い魔王として君臨し、奇抜な戦略とすぐれた用兵術で数々の戦いに勝利し、人族、 獣人族、エルフ族、ドワーフ族、トロール族などの同盟国軍をかなりいいところまで後退させ、魔族の支配領域を増やしたが、結局、最後の詰めの時に持病が悪化して66歳で志半ばにして死んでしまった。
死を間際にした床で、魔王ルジームは息子の魔王子ルゾードを枕もとに呼び、この悪の連鎖ともいえる魔族のカルマを断ち切るには魔族が“長寿”を得るしかない、そのためにはエルフの守る神聖な山”と その領域を占領し、そこに魔族帝国を打ち立て長寿の術を得よ。そしてその後、世界を征服せよ、と遺言を残して亡くなったのだそうだ。
あとを継いだ若干16歳の魔王ルゾードは父・ルジームに似て賢かった。
いや、父ルジーム以上だったと言えよう。先代魔王の遺言を守り、いたずらに同盟軍に対して大掛かり戦争をしかけることなく魔軍の再編成計画を進めながら、魔族の宿願を達成するため魔軍を温存しながら戦力を増加させた。
そして同盟軍に彼の思惑を見破られないために、散発的に要所、要所で攻撃をしかけ、故意にまずい作戦を実行したり、増援部隊の派遣を遅らせたり、支援物質や食料の滞らせたり、減らしたりして魔軍の士気を下げるとともに、装備もいいかげんなものをあたえて戦で負けるように仕向けたのだった。
そのような悪条件では同盟軍相手に勝てるわけはなく、魔軍は連戦連敗の記録を塗り替えることになった。同盟国側も「今度の魔王は大したことはない、魔軍も腰抜けで烏合の衆だらけだ」と魔軍相手の戦いに連戦連勝を続けた同盟軍は思い上がってしまった。
もちろん、度重なる敗北は古参の魔将たちをして地団駄を踏んで悔しがらせ、古参の魔将たちからも、新魔王が十分な魔軍兵力と装備も食料もをあたえず、無謀で幼稚な作戦を立てるからだと批判する者まで出るようになった。
魔王ルゾードは、それらの批判に対しても何もせず、驕る古参の魔将たちは、「魔王は腰抜けだ」とまるで同盟国側の者たちのような陰口までたたくようになった。
そして魔王ルゾードが30歳になった日、それは起こった。
ルゾードと腹心の部下たちに率いられた部隊は、その日の明け方にこれらの批判をくり返し、いつ造反を起こしてもおかしくない十数人の古参の魔将たちを、その家族と眷属を含めすべて粛清したのだ。のちほど魔族たちが『6.6(6月6日)“血の粛清事件”』と呼ばれるようになった日である。




