2-03 エルフ少女との出逢い②
アイミと名乗ったエルフは青い目をしていて、白くて長い髪を後ろで束ねており、ベリーダンスのダンサーが着るようなヴィンテージカーキ色の下がダボッとしたズボンと長袖の上着を着ていた。
手にしているのはメイスのような柄モノだ。防具らしいものは胸当てしかつけていない。
ギブというオオカミ男、じゃない、オオカミ少年は、濃いグレーに迷彩模様の張った上下を着ていた。こちらは何の防具もつけていなかった。武器は手につけた長い鉄の爪がついた鉤爪だった。
エルフに狼男。
なぜかワクワクするレオだった。
そこにカイオが近づいて来た。
「やあ、初めまして。カイオです。」
「はじめまして。アイミと申します。助けていただいてありがとうございます。」
「ギブンテスと申します。アイミさまを助けてくださり、ありがとうございます。」
すぐあとからイザベルもやって来た。
カイオもイザベルもエルフとギブに驚いているが、レオが感じたほどのサプライズではないようだ。 彼らもおたがい自己紹介する。
「すみません、倒れている仲間の様子を見させてください。」
おたがいに紹介し終わると、アイミが申し訳なさそうな表情で言った。
「あ、そうだ。早く見てあげた方がいい。君の仲間の傷の手当を最優先すべきだ。」
アイミとギブはすばやく、近くに倒れている―あきらかに先ほど倒した魔物たちとは外見が違う― 者たちのところに駆け寄り、手首をにぎったり、様子を見たりしはじめた。
それぞれ甲冑などを装備した者が4人ほどあたりに倒れていた。
(あれっ、そういえば倒した魔物たちが見えない。まさか逃げ出した?)
レオが頭を捻って考えていると、アイミとギブが鎮痛な表情でもどって来た。
「だめでした。みんなもうこと切れています…」
ギブもそのふさふさした尻尾をだらんと落として落ち込んでいるようだ。
「くそっ、オレたちが来るのがもう少し早ければな…」
「いえ、私たちはエスティーナ女王様に命じられてエルフのかくれ里を出た時から、エルフ族のためにいつでも命を投げ出す覚悟をしていました。ですので、勇敢に戦って亡くなった彼らの死は決してムダではありません。ほかの種族の戦士の方々もそれは同じだと思います。」
「…」
何も言えない異世界の冒険者たちだった。
「それはそうと、結局、あれはなんだ、レオ?お前、カタパルトの石みたいに飛んでいったけど、どういうことだ?!」
「そうよ。もう、驚いたのなんのって… どういう超能力をあなたは使ったの?」
アイミとの話が一段落すると、カイオとイザベルからの質問攻めが始まった。
「えーっとだな… ちょっと説明が面倒だから、シーノちゃん、説明お願いね。」
シーノに丸投げするレオ。
(えーっ、しょうがないわね、レオ! 今、どうしてあなたたちがミィテラに来たかをアイミとギブに話しているのに…)
「いや、その続きはオレがするから、こちらをお願いするよ、シーノちゃん」
(しかたないわね…)
とつぶやきながらシーノはかイオ王子とイザベルに説明をはじめた。
(あれはね…)
(ふんふん…)
(あ、そうなの?)
(へェ! なーるほど。そういうわけなのか)
(これでなぜあんなスピードで飛んでいったかわかったわ)
どんな説明をしたか知らないが、どうやら二人をなっとくできたようだ。
一方、アイミとギブのところにもどって来たレオ。
「あ、どうもすみません。いろいろ入り組んだ話なので、彼らに説明するのはシーノが適役だと思ったので代わってもらいました。」
「いえ、こちらこそお取り込み中のところに ご説明をお願いして申し訳ありません」
「いえいえ。で、どこまでシーノはお話しました?」
「はい。カイオ様とレオ様が『謎の抜け穴』を発見され、イザベル様とともに調査のために入られたとことまでです」
「あのさー…」
「はい?」
「オレたちを呼ぶのに“様”なんてつけなくてもいいよ」
「あ、すみません。それでは何とお呼びすれば…」
「呼び捨てでいいよ」
「いえ、それでは命の恩人の皆さまに対する敬意が足りません」
「いやいや、あの場合だったら誰でも力を貸すでしょう?」
「魔物相手では、100人が100人とも逃げ出すのが普通です。魔物相手に戦いを挑めるのは、実戦の経験のある戦士か術士、またはよく戦闘訓練をされた者くらいです。それも魔物の数に対して優勢な数の場合だけです」
「えーっ、そんなに魔物って強いの?!」
「ですから、シーノさまがあなたたちを“勇者”と言ってたのは決して誇張ではないと思います」
絶句するレオだった。
(それほどオレたちは強いのか?!)
しばしアイミの言った“勇者”という呼称を心の中でくり返して、いく分高揚した気分味わっていたが、アイミとギブが黙ったまま(彼らはとても礼儀正しいので、他人が気分良く感じていると感じた時は、その気分に水を指すような無粋なことはしないのだ)なのに気がつき、現実にもどった。
「そうなのか… でも、様はいらないよ。“さん”でいいよ。それにアイミってエルフだから、たぶん100歳とか150歳くらいあるんだろ?」
「いえ、私は今年17歳になったばかりです。」
「ええーっ、それってエルフにしたら、生まれて間もない子どもなんじゃない?!」
「いえ、もう17歳も生きていますので、これでも十分“人生の酸いも甘いも噛み分けている”と自負しています」
「!…」
また絶句してしまったレオだった。
そこへシーノからレオの超能力についての説明を聞き終わったカイオとイザベルがやって来た。
「でも、もしよろしければ、戦士として勇敢に戦って死んだ彼らの亡骸を埋めるのを手伝っていただけませんか?」
みんながそろったところで、アイミからお願いがあった。
「もちろん!」
「もちろん、手伝うわ。でも、ちょっとその前に見せたいものがあるの。」
そう言ってイザベルは左手を開いて手に持っていたものを見せた。
ルビーの原石のような赤っぽい小粒の石が数個手の平に乗っていた。
「それは?」
「さっき魔物を倒したところに落ちていたから拾ってきたの。ただの色のついた石のようでもないから拾ったんだけど…」
「それは魔石です。魔物を倒すと魔物の体が消えたあとに残すんですよ。」
アイミが教えてくれる。
「えっ、そうなの?」




