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*小説・エッセイ・散文・その他*

パレード

作者: a i o

 ビーチと併設された公園は、新しい年を迎えまだ日が浅いせいか、やはりいつもの週末に比べ人が少ないように感じた。だけれど、普段の週末はかなり人口密度が高いので、少ないと言っても賑わっていることには変わりない。

 白い砂浜には、バックパッカーがその大きなリュックを枕に寝転んでいる。幼い兄弟は競うようにドリルよろしく砂に穴を掘り続け、そこから少し離れた場所で母親らしき女性が笑みを湛えたまま、レジャーシートの上でのんびり寛ぎながらその様子を見ていた。シャボン玉が潮風に流され、舗装された砂浜沿いの道を軽快に走り抜ける人の前を横切る。ささやかな波が寄せては返し、パステルブルーの青空に低く広がった雲の隙間から、熱の薄い陽の光が海を照らしていた。

 ビーチの後ろ、舗道を挟んだ芝生には家族連れが遊具を囲むように集い、時折弾けるような笑い声が響き渡る。ウェーブのかかった長い髪の女の子は新体操のリボンをくるくると円を描くように回し、髪がふわりと舞い上がった。木陰のベンチでは自販機のアイスクリームで口周りをべとべとに汚した男の子に、父親が慌ててティッシュを差し出している。年若い恋人たちは海をバックに自分たちの姿を何度も写真に収め、見つめあった。老いた夫婦は、まるで定位置と言わんばかりに持参した折り畳み式の椅子を浜辺に向けて並べ座っていた。

 カラーフィルムのような午後。その一時はさながらパレードのように通り過ぎていく。まるで現実味のない穏やかさがそこにはあって、ぎゅっと胸が詰まる。日常と休息のあわい、これはやはりパレードなのだ。同じ隊列を組むことは二度とない一度きりの。記憶ではなく余韻としてしか残らないと、傾いていく光が語りかける。留められないもの。眺めるという行為は拙い伝言のようで、眩い景色の中、乾いた目を凝らす。そこにはもう何一つ欠けるものがなくて、私は無性に、それが寂しかった。





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