第7話
「……」
「……」
時が止まったかのように、沈黙が続いた。
「……相当、困惑しているみたいだね……君も」
長い沈黙の末、白衣の男性はそう切り出した。
能力で俺の心を読んだらしい。
「……はい」
だって、あまりにも不可解だ。
なぜ、かの有名ヒーローと同じヒーロースーツを纏っているのか?
ヒーローは多数いるので、姿形が似ることはあるだろう。
同系統の能力を持つヒーローは、カラーリングやデザインが近かったりする。
でも、俺のこれは、似ているとかそういうレベルではないのだ。
俺が幼いころから憧れていたヒーローの姿だ。
新聞や雑誌、テレビやネットなどのメディアに登場した際には必ず食い入るように見て、目に焼き付けたヒーローの姿だ。
正直に言うと、ちょっと嬉しいけど……。
だけど、それ以上に畏れ多いと思った。
俺がこのスーツを着るなんて分不相応にも程がある。
そんな、ぐちゃぐちゃな感情を読み取ったのかもしれない。
白衣の男性は、あきらめたように首を振った。
「……これは、私の手に負える案件ではなさそうだ。まずは、上に報告しなければ……」
――――――――
数日後。
俺が、『変身』をしたあの日。
能力測定はそこで中止になった。
……そして、しばらくこの施設で過ごすことになった。
まぁ、なんというか、これは軟禁状態とでも言うのだろうか。
今は、俺の処遇が決まるまでただ待つことしかできない。
「どうなってるんだ、ほんと……」
しばらく、何をするでもなく時間を潰していた。
すると、ドアをノックする音がした。
(だ、誰だ?)
出るのが少し億劫だった。
ヴィラン認定されて、牢獄送りにされたらどうしよう……。
しかし、出ないわけにはいかない。
意を決してドアを開けると、そこには見知らぬ少女がいた。
学生服に身を包んでいて、俺とそう変わらない年齢に見える。
「……」
少女は、何も言わずにこちらを見つめている。
(え? 誰だ? ……というか、なんで何も喋らないんだ?)
「えー……っと、どちら様でしょうか?」
「……私は、――」
その言葉を遮るように、少女の後ろから、ひょっこりと現れた白衣の男性。
「ちょっと待ってくれ、私を置いていかないでくれないか」
(あ、面談の人だ……)
装いは、相変わらずの白衣。
「えーっと……、どういうことでしょうか?」
――――――――
「まずは一言、謝らせてほしい。すまなかったね、こんなことになってしまって」
白衣の男性は、そう言って俺に頭を下げた。
「いえ、……仕方ないと思います。俺も、不可解でしたから」
「まぁ、そうだろうね。君のような事例は初めてだったから、私もとても驚いたよ」
「そうなんですか……」
「ああ。……それで、私が来たのは君の処遇が決まったから、その報告をしに来たんだ」
俺の処遇。
いったいどうなるのか。
ずっと不安だった。
思わずごくりと生唾を飲み込む。
「単刀直入に言おう。君をヒーローと認定することは、現状では難しい。異常な点が多すぎる」
ヒーローとして、認められない……?
じゃあ、俺はいったい……。
「……」
「……だが、ヴィランと認定することもまたできない。これでも私は、国内では最高の読心スキルを持っているんだ。その私の目から見て、君からはヴィラン特有の精神汚染を感じることができない。……そこで、上は君を『特別監視対象』として様子を見るそうだ」
「特別、監視対象……?」
「ああ。とりあえず1年。監視付きで生活してもらう」
「1年、監視付き……」
「ああ。そうすれば、その間は君をヒーロー候補生として暫定的に認めるそうだ。そして、一年間、何をするのかと言えば、普通のヒーロー候補生と同じように生活してもらう。ヒーロー養成学校でね」
(ヒーロー候補生に、なれる……!)