プロローグ
ある日を境に、限られた一部の人類は宇宙の彼方から電波を受信するようになった。
ピピピッと脳内に。
馬鹿げた話に聞こえるかもしれない。
しかし、これは事実だ。
体験者曰く、脳内にアナウンスが流れるらしい。
「○○さん、おめでとうございます」と。
ひと昔前に、脳内に電波を受信したなんて言ったら、ヤバい薬をやっている疑いをかけられたかもしれない。
でも、いまは違うのだ。
そんな絵空事を、人々は嫌でも認めざるを得なかった。
なぜなら、“電波”を受信したと主張する者が、実際に超能力に目覚め、それを使ってみせたのだから。
空を飛んだり、手のひらから炎を出したり、人の心を読んだり、トラックを持ち上げたり、……もうとにかく色々とめちゃくちゃな事を始めたのだから。
初めて目にした人はびっくり仰天しただろうけど、今じゃこれは世界中の常識になってしまった。
その“電波”を受信できる機会は、15歳の誕生日。
例外なく、だたその日だけだ。
だから、この世界において15歳の誕生日というものは、人生における最大の分岐点であるといっても過言ではない。
その日は“特別”な人間になることができる唯一のチャンスだから。
それは努力ではどうにもならない領域にある、文字通りの“特別”だ。
そんな、“特別”に憧れるのは、夢見がちな少年少女からすれば自然なことだろう。
そして今日も、15歳の誕生日を迎えた少年が“電波”を待ちわびていた。